投稿

【アート通信ー28:「セゾン現代美術館」】

イメージ
28回目のアート通信は、軽井沢にある「セゾン現代美術館」のご案内です。 現在、軽井沢には「軽井沢現代美術館」「軽井沢千住博美術館」「脇田美術館」「田崎美術館」「Karuizawa New Art Musium」など、名前を挙げるときりがないぐらいたくさんの美術館があります。有名な避暑地とは言え、その土地面積に対しての数の多さはずばぬけています。 そんな中、「セゾン現代美術館」は、軽井沢で一番初め、1981年にオープンした美術館です(旧名「高輪美術館」)。それ以来ずっとここから現代美術の普及に勤めてきました。7500坪もの庭園には小川が流れ、自然に溶け合うように彫刻が設置されています。 彫刻の素材・形などは様々ですが、中にはこんな作品も!一見ただの橋に見えますが、若林奮氏の「鉄橋」という名前の作品です(橋としての機能も兼ね備えています)。 初夏は新緑、秋は紅葉と季節ごと違う表情をみせる庭を散歩しながら、ひとつひとつ、作品を見つけていくのは楽しいものです。 そんな森に埋もれるように存在する美術館の建物は、自然の景観を壊さないように低く計画されています。日本を代表する建築家である菊竹清訓氏(1928-2011)の設計です。 庭のみの入場は無料ですが折角ここまで来たら展示も観ていきたいですね。 フランシス 真悟「Bound for Eternity(red)」2008 <レイヤーズ・オブ・ネイチャー>展より コレクションのレベルは高く、デュシャン、マン・レイ、ミロ、ウォーホル、リキテンスタインなど、立体から平面まで美術に詳しくない人でも「どこかで目にした!」と気付くような作品が多く収蔵されています。企画展も年に2回のペースで同時開催です。 内容にもよりますが、鑑賞時間は常設展・企画展合わせて1時間~あれば充分でしょう。 また、併設のカフェ「ヤマアラシ」ではテラス席がお奨めです。ブランチやランチの用意もあり、地元の無農薬素材を使ったオリジナルメニューも充実しています。 ここにもさりげなくアートが展示されています。見つけられるかな? 開館した当時から、まだあまり知られていないアートをどんどん紹介してきた美術館。開館からだいぶ時は経ちましたが、その豊かな自然...

【アート通信-27:ボルドー・ワイン博物館「シテ・デュ・ヴァン」】

イメージ
27回目のアート通信は、フランス南西部の街ボルドーから、ガロンヌ河沿岸に建つワイン博物館「シテ・デュ・ヴァン」のご紹介です。 「シテ・デュ・ヴァン」建物全景 オープンは2016年なのでわりと最近です。 かつては世界貿易の中心だったガロンヌ河の沿岸再開発の一環として建設されました。市長が主導するかたちで予算の80%を公的資金、残り20%を個人・企業が負担し、オープニングには大統領も出席しました。この事から国としても街としてもかなり力を入れていたと想像できます。また、ワインに特化した博物館としては世界最大だそうです。 「シテ・デュ・ヴァン」展示スペースへの階段 歴史・産地・栽培法、文化・宗教との関連性など、あらゆる角度からワインを捉え、掘り下げています。日本語の音声ガイドもあるので安心です。解説は多すぎず少なすぎずちょうどいいボリュームですが、全体を観るのに最低2時間は欲しいところ。そんな中で私が「おもしろいな」と感じたのは、もっと詳しい説明・資料が欲しい、と思ったら音声ガイドのボタンをポチッと押すと後日、自分のアドレスに資料が送られてくるというシステムです。知りたい人にはどこまでも付き合ってくれるのが嬉しい! 「シテ・デュ・ヴァン」内部の展示空間 また、展示室の天井の形がワインの輸送に使われていた船底を連想させるなど、仕掛けは細部にまで及びます。解説の内容は濃いですが、ゲーム的な要素も多く、特に学んでいるという感じはありません。それなのに最後は「よく分かった!」という満足感を得られるので、博物館として理想的な仕組みでしょう。 ガロンヌ河上から見た「シテ・デュ・ヴァン」 注目は斬新なこの建物! パリの建築事務所XTUによる設計で、114の応募作品から選ばれました。 河の上から見るとぽっかり河に浮かんでいるように見えるこの形、どこかで見たような?そう、ワインを美味しく飲むために使うガラス容器、デキャンタの形です。 「シテ・デュ・ヴァン」搭状部分 キラキラ輝くねじれるよなラインは、グラスの中で渦巻くワインを表現したとも、ごつごつしたブドウの株がどっしり根付いている様子を表現したとも言われています。 「シテ・デュ・ヴァン」搭状内部 立ち上がる搭状部分...

【アート通信ー26:アートで街を活性化「ヴォワイヤージュ・ア・ナント」】

イメージ
26回目のアート通信は、フランスの南西部ナントという街で毎年開催されているアートイベント 「ヴォワヤージュ・ア・ナント」 についてです。 建築関係の建物に施された、 LILIAN BOURGEAT による 「Mètre à Ruban」 (2013)常設 「ヴォイヤージュ・ア・ナント」は直訳すると「ナントへの旅」。国内有数の工業都市だっとナントが、主力産業の低迷からその主軸をアートに移行し見事成功に導いたメイン企画がこの「ヴォイヤージュ・ア・ナント」です。 「アートで街を活性化!」、これは簡単なようでなかなか成功せず、また継続も難しい事業です。そんな中で成功しているこの「ヴォイヤージュ・ア・ナント」とは、どのようなイベントなのでしょうか? 今から15年以上前に始まったこのイベントは、2012年からは毎年開催になっています。大きな特徴は、街路に引かれた緑のラインがすべて導いてくれる事!この緑のラインについていけば公共スペースに出品されているアート作品のみならず、歴史遺産から観光名所まで12kmをぐるっと一周出来ます。要所要所に地図付き解説看板があるので地図を持ち歩く必要はありません。身軽に散歩感覚で楽しめます! この緑のラインについて行けば方向音痴でも迷う事はない! 看板には緑のラインが引かれている場所の全体図と現在地、作品もしくは歴史遺産の説明が載っている 更に緑のラインが導いてくれるのは彫刻などのアートに限らず、建築、デザイン、庭、にまで及びます。またその多くが恒久設置となり、街の財産となり利用されています。 Mercæur公園にある KINYA MARUYAMA による遊具を兼ねた 「AIRE DE JEUX」 (2014)常設。子供にとても人気がある! 音: ROLF JOLIUS 、建築: Manny による 「AIR」 ( 2007, 2009 ,2011)常設。建物の周りに廻らされた金属から、鳥の鳴き声など自然界の静かなざわめきが聞こえてくる 植物園の中にある、絵本作家 Claude Ponti による 「巨人のためのベンチ」 (2013,2014,2015)常設 LAURENT PERBOS による 「PING-PONG PARK」 (2016)常設。こ...

【アート通信ー25:ベルリン・集合住宅「ジードルング・ブリッツ」】

イメージ
25回目のアート通信では、ドイツ・ベルリンの郊外ブリッツにある世界遺産の集合住宅、「ジードルング・ブリッツ」(1925-1931)をご紹介します。「ジードルング・ブリッツ」とは、ブリッツにある集合住宅、という意味で1931年にドイツ人建築家ブルーノ・タウト(1880-1938)の指揮のもとに建てられました。 田園地帯だったところを開発した「ジードルング・ブリッツ」。この手前の池も以前からあったそう。 「ジードルング・ブリッツ」の大きな特徴は、中心となる建物が自然の地形を生かして東に向かって馬蹄形に建てられている事!馬蹄形は幸運を引き寄せる形と言われており、それを意識したとも、丸く作る事で住民が皆、朝日を浴びられるようにしたとも言われています。 テラスの壁は曇りの日でも青空を感じられるように、と青色に塗られている 37.1ヘクタールの敷地には、その馬蹄形の住宅棟を中心に何棟もの集合住宅棟が放射状に建てられています。トータルで約1960戸あります。どの住宅にも庭があり、庭では畑を作ったり、子供の遊び場を作ったり、と思い思いにそれを利用しています。 庭は2階3階の人も使用できるように平等に区切られている ではなぜ、このような住宅が建てられたのでしょうか?20世紀初めの首都ベルリンでは人口が集中し、住宅供給が追い付かなくなりました。中にはひどい住宅もあったそうです。その劣悪な環境を改善する為、政府が主導し沢山の労働者向け集合住宅が建てられました。1920年頃の事です。 なんとそのほとんどが当時の代表的な建築家によって建てられ、現在ベルリンではこちらをはじめ6つの集合住宅が世界遺産に認定されています! 各戸の窓、扉は整然と同じに配置されており、外観はシンプル。車の駐車の仕方も整然(?) ここでタウトが強く心配ったのは労働者の為の住宅、<平等>だそうです。それはちょうど道路を挟んだ向かいに建っている別の建築家が建てた集合住宅と比較しても分かります。 「ジードルング・ブリッツ」の道路を挟んだ向かいの集合住宅。デザインも色も少しずつ違う。 「ジードルング・ブリッツ」にずっと住まれている方のお宅を見せて頂きました。手を加えたり、好みのインテリアを施したり、と丁寧に住まわれていてとても...

【アート通信ー24:「ドイツ連邦議会国会議事堂」】

イメージ
24回目のアート通信は、ドイツの首都ベルリンにある「 ドイツ連邦議会国会議事堂」 です。1999年に修復された建物で、コンセプトや残された外壁部分との合わせ方が面白く、エコに配慮した建物でもあります。 ドイツ連邦議会国会議事堂正面 1894年にパウル・ヴァロット(1841-1912)の案でネオ・ゴシック様式で建てられました。しかしヒトラーが首相となった年の火災、第二次世界大戦などでほとんどが崩れてしまいました。現在の建物はイギリス人の建築家ノーマン・フォスター(1935-)の案により1999年に修復されたものです。それにより、外壁と元々あった屋上ドームの形状は残しながら、まったく新しい国会議事堂へと生まれ変わりました。 屋上・ドーム部分のアップ 屋上・ドーム部分を見学するには予約が必要です。建物の外でセキュリティーチェックを受けた後、巨大エレベーターで屋上に向います。屋上に着いたらガラスドームの側面に沿ってゆるやかなスロープを登りましょう。一方通行なので、ゆっくり歩きながら 外の景色 を楽しめますよ。 ガラスドーム内部 ドームはガラス張りでなので とても明るいです。更に真ん中にある逆円錐型のミラーコーンの反射により、明るさはマックス! コーン には自分の姿が映ったり、周りの景色が映りこんだりもしています。 そしてこのミラーコーンは単なるオブジェではありません。 雨水を集めたり、熱を循環させるシステムも備えているんです! 斬新なデザインの日よけ べろんと垂れている舌の様なものは日よけです。なんと、コンピューター制御で太陽を追いかけているそう。そしてドームをかたどる硝子の角度も太陽の動きに合わせて変わるとか。エコへの配慮バッチリのハイテク建築です。 ドーム上部 登り切って上を見上げれば抜けるような青空。自然空間と繋がっている開放感と未来への期待のようなものを感じます。 ドーム下部 下を見下ろすとこんな感じ。人が小さく見えますね。下部のガラス部分は自然光を階下に届けるばかりでなく、その下にある議事堂を透かして見られるようになっています。そしてこれにより議会の透明性も表現しているそう。 屋上からドームを見る 下りのスロープを伝って降りてきたら外へ出ましょ...

【アート通信ー23:「植田正治写真美術館」】

イメージ
23回目のアート通信は、鳥取県のとても素敵な美術館「植田正治写真美術館」のご案内です。 美術館外観 こちらは世界的に有名な写真家、植田正治氏 (1913-2000)の作品を半永久的に保存・展示する目的でつくられた町立の美術館です。 鳥取県西伯郡伯耆町(ほうきちょう)にあります。正式名称は 「伯耆町立写真美術館」で、1995年に開館しました。伯耆町は植田氏の故郷なのです。 植田正治氏は、世界的に有名な写真家になっても故郷を愛し、生涯この地を離れる事はありませんでした。また、 被写体を映画のワンシーンのように配置したモダンでシュールな表現方法は、海外の人にも「Ueda-cho」と呼ばれ絶賛されてきました。 植田氏の作品は、写真展などでご覧になった方もいらっしゃると思いますが、東京都写真美術館の屋外壁面でも確認できます。 東京都写真美術館入口近くの屋外平面に設置されている植田正治氏の「砂丘シリーズ」の作品 「植田正治写真美術館」魅力は建物にもあります。作品をより良く見せる為だけでなく、周囲の環境を壊さない為の様々な工夫が施されています。やはり鳥取出身で世界的にも有名な建築家、高松伸氏(1948-)によるものです。 館内資料室 そして館内には楽しい撮影スポットも! その1つがここ。 2階の撮影可能スポット ガラスに植田氏の作品で用登場するハットが描かれています。そして傍らにはやはり氏の作品によく登場するステッキと傘が置かれ、自由にポーズをとって写真を撮れます。 もう1つはここ! 1階屋外の撮影スポット 出入口の屋外壁面です。壁面に氏の「砂丘シリーズ」の作品がセットされているので、その前で自由にポーズをとればたちまち「Ueda-cho」の作品に?! 「砂丘シリーズ」とは、氏が勝手知った鳥取砂丘を自分の庭のようにスタジオのように使いこなして、名作を生み出してきた 鳥取砂丘を舞台に制作した作品シリーズの事です。 鳥取の名勝「鳥取砂丘」 そして、鑑賞後に鳥取の名勝「鳥取砂丘」に足を運ばしてみてはいかがでしょう?ああこの辺りで、この角度で撮ったのかな?と想像できていつもの観光とは違った楽しみとなるでしょう。そしてここで、巨匠の作品に負けない作品作りに挑戦してみるのも良いかもしれま...

【アート通信ー22:パブリックアート(六本木ヒルズ)】

イメージ
六本木ヒルズ、と言って思い浮かべるものはなんでしょう?ニョキっとそびえ建つビル、展望台、オフィス、あるいは映画館? 実は、六本木ヒルズには〈66プラザ〉〈毛利庭園〉〈けやき坂通り〉〈さくら坂〉を中心に、たくさんの世界的アーティストによる 屋外彫刻があります。 そこで今回は、美術館ではなく六本木ヒルズの屋外にパブリックアートとして設置している屋外彫刻をご紹介します。 「ママン」 ルイーズ・ブルジョワ まずはこちら、〈66プラザ〉に設置されている蜘蛛。六本木ヒルズの紹介映像でも良く見かけます。 この作品を作ったブルジョワ氏は、大嫌いな"蚊"を食べてくれる"蜘蛛"が好きでした。そしてその忍耐強い蜘蛛に、暴君の父に耐える母の姿を重ね「ママン」というタイトルを付けました。また、蜘蛛がお腹に抱えいる大理石の卵は、彼女の歪んだ少女時代の記憶から生まれた幸せな家族・愛への憧れの表現でもあります。 「薔薇」 イザ・ゲンツケン そしてその側に設置されているのがこちらのイザ・ゲンツケン氏による「薔薇」です。 まるでこの作品の為に造られた様な空間、〈ハリウッドビューティープラザ〉に設置されています。 個人的にはニューヨークのMOMA美術館で観た同じ作者の「薔薇」の方が印象深く感じています。設置の仕方の問題でしょう。 MOMA美術館の展示室から見た「薔薇」 MOMA美術館屋外から見た「薔薇」。 周囲に何もなく作品が際立ている パブリックアートではその設置の仕方がとても重要になってきます。そこで、ここからは六本木ヒルズでの『残念な例』と『良く感じられる例』に分けてご案内します。 例えば、〈けやき坂通り〉には9つのベンチの機能を兼ねたアートが設置されていますが、これらすべてはガードレールの柵寄りに設置されていて『残念な例』です。 「愛だけを…」 内田繁 例えば、内田繁氏による真っ赤な美しい流線型の作品。座ることも出来る素敵な作品なのに、ガードレールの柵が邪魔です。また、通りを背にしてここに座り、何を観たら良いのでしょう? 「この大きな~」  日比野克彦    通りを挟んで観ると、収集され忘れたゴミ袋の様に見えてしまう 個々の作品が良いだ...