【アート通信-27:ボルドー・ワイン博物館「シテ・デュ・ヴァン」】

27回目のアート通信は、フランス南西部の街ボルドーから、ガロンヌ河沿岸に建つワイン博物館「シテ・デュ・ヴァン」のご紹介です。

「シテ・デュ・ヴァン」建物全景

オープンは2016年なのでわりと最近です。
かつては世界貿易の中心だったガロンヌ河の沿岸再開発の一環として建設されました。市長が主導するかたちで予算の80%を公的資金、残り20%を個人・企業が負担し、オープニングには大統領も出席しました。この事から国としても街としてもかなり力を入れていたと想像できます。また、ワインに特化した博物館としては世界最大だそうです。

「シテ・デュ・ヴァン」展示スペースへの階段

歴史・産地・栽培法、文化・宗教との関連性など、あらゆる角度からワインを捉え、掘り下げています。日本語の音声ガイドもあるので安心です。解説は多すぎず少なすぎずちょうどいいボリュームですが、全体を観るのに最低2時間は欲しいところ。そんな中で私が「おもしろいな」と感じたのは、もっと詳しい説明・資料が欲しい、と思ったら音声ガイドのボタンをポチッと押すと後日、自分のアドレスに資料が送られてくるというシステムです。知りたい人にはどこまでも付き合ってくれるのが嬉しい!

「シテ・デュ・ヴァン」内部の展示空間

また、展示室の天井の形がワインの輸送に使われていた船底を連想させるなど、仕掛けは細部にまで及びます。解説の内容は濃いですが、ゲーム的な要素も多く、特に学んでいるという感じはありません。それなのに最後は「よく分かった!」という満足感を得られるので、博物館として理想的な仕組みでしょう。

ガロンヌ河上から見た「シテ・デュ・ヴァン」

注目は斬新なこの建物!
パリの建築事務所XTUによる設計で、114の応募作品から選ばれました。
河の上から見るとぽっかり河に浮かんでいるように見えるこの形、どこかで見たような?そう、ワインを美味しく飲むために使うガラス容器、デキャンタの形です。

「シテ・デュ・ヴァン」搭状部分

キラキラ輝くねじれるよなラインは、グラスの中で渦巻くワインを表現したとも、ごつごつしたブドウの株がどっしり根付いている様子を表現したとも言われています。

「シテ・デュ・ヴァン」搭状内部

立ち上がる搭状部分はドーナツ状で内側は中庭になっています。そして内部も外部も曲線が多いこの建物、実は館内の食品廃棄物などから得られる再生エネルギーで電力の70%を補うエコ建築なんです。

庭側から見た「シテ・デュ・ヴァン」

ところで、この建物、後ろに回るとカタツムリに見えませんか?個人的には、ワイン作りに必要な「自然」や、この土地にもとからある「環境」を意識した遊び心ではないかと思うのですが、どうなのでしょう?

こちらへは、ボルドーの中心部よりトラムで15分ぐらいで行けます。しかしボルドーはガロンヌ河と共に発展してきた街。その意味でもガロンヌ河を運行している船の利用がお奨めです!小型船定期便ナヴェットで敷地内まで行けます。
詳しくは
船で行く!フランス・ボルドーのワイン博物館「シテ・デュ・ヴァン」
をご参照ください。















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