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【建築巡礼ー7:コープ・ヒンメルブラウによるコンフリュアンス博物館】

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コンフリュアンス博物館 musée des Confluences、 オーストリアの設計事務所 コープ・ヒンメルブラウ Coop Himmelb(l)au の設計で、リヨンのローヌ川とソーヌ川が合流する地域コンフリュアンスに2014年にオープンしました。 *コープ・ヒンメルブラウ Coop Himmelb(l)au:ヴォルフ・プリックス Wolf Prix、ヘルムート・シュヴィツィンスキー Helmut Swiczinsky、マイケル・ホルツァー Michael Holzer(1971年に脱退)によって1968年にウィーンに設立された建築設計事務所。 コンフリュアンス博物館 musée des Confluences外観 コンペで選ばれたこの個性的な建物は、エントランス付近の〈クリスタル〉と呼ばれるガラスの空間、奥の空中に伸びる〈雲〉と呼ばれる空間、そして宙に浮いた様に見えるこの建物の支える〈台座〉から成り立っています。 コンフリュアンス博物館 musée des Confluences の、" confluence "とは合流の意味で、 その名が示す通り文明の 合流 、アートと科学の 合流 を、古くから交通の要所であったここリヨンの2つの川の 合流 地点で提示していこうというコンセプトに基づいています。 基盤となるコレクションは1879年に開館したリヨン ギメ美術館のもので、化石やディノザウルスの骨格標本、仮面など200万点以上からなり、人間の現在までの進化発展を知る事が出来ます。 エントランスに入るとまずこの円錐形のオブジェの様な構造体が迎えてくれます。 上部は開口しているので、雨が降るとこの円錐形を伝って雨が流れてくるはず この構造体を囲む様にある階段、エスカレーター、スロープなどで上階に上がれます。 ちょっと不思議な感じです。 ガラスを通して見える外部の景色と、宇宙船内の様な内部の景色の対比がこの地区の未来を象徴しているようです。 最上階に進むと大きく視界が開ける展望スペースがあります。   この景色からここが半島の先端部分に建てられている事を実感できる 周辺はまだまだ開発が進みそう また、屋上には今リヨンで積極的に取り組んでいるエコ

【建築巡礼ー6:VITRA CAMPUS・・・有名建築家の作品展示場?】

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VITRA CAMPUS は、 世界的な 家具メーカである、ヴィトラ Vitra社の自社施設で ドイツのヴァイル・アム・ライン Weil am Rhein にあります。  ヘルツォーク&ド・ムーロン Herzog&de Meuron によるショップ Vitra Haus(2010) 内部 将来有望と思われる建築家(近年は既に世界的建築家も含む)にそれぞれの施設を依頼して使用しています。 「ここは有名建築家の作品展示場?」 私の口をついて思わず出てきてしまった言葉です。 工場建屋を建築家に依頼する例は、ペーター・ベーレンス Peter Behrens によるAEGのタービン工場(1910年)などより多々あると思いますが、全ての施設を建築家に委ねている所は世界的にも珍しいのではないでしょうか?   広大な敷地には工場・アトリエの他、イベント用の建物、美術館、ショップなどが点在しています。 そのうち、 フランク・ゲーリー(Frank Gehry)のヴィトラデザイン美術館 Vitra Desaign Museum(1989) とショップへは誰でも自由に入る事が出来、工場やイベント用の建物へは見学ツアーで中に入る事が出来ます。 工場・アトリエ建屋は ニコラス・グリムシャ NicholasGrimshaw 、 フランク・ゲーリー Frank Gehry 、 アルヴァロ・シザ Álvaro Siza 、 サナア SANAA という錚々たるメンバーにより設計されています 。 個人的にはこの建物が一番「工場」らしくて好き。ニコラス・グリムシャウ Nicholas Grimshaw による工場建屋factory building(1981,1983)   お尻の方だけですが、アルヴァロ・シザ Álvaro Siza による工場建屋 factory building(1994) 左側のサナア SANAA による工場建屋factory building (2012)は、右側のニコラス・グリムシャウ の工場と橋で繋がっている レースのカーテンの様に見えるサナア SANAA の工場建屋上部   下部はスカートのすその様 日本の建築家では 安藤忠雄 もセミナーハウスをConference Pa

【建築巡礼ー5:アールトによるルイ・カレ邸】

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屋根の傾斜はなだらかな土地の傾斜に沿っている フィンランドの著名な建築家でありデザイナーであるアルヴァ・アールト(Alvar Aalto:1898-1976)による建築です。 フランス人画商:ルイ・カレ(Louis Carrē:1897-1977)の晩年の家で、自然の中でアートと過ごす自宅兼ギャラリーです。 1959年に完成し(細部まで完成したのは1963年)、パリから西に40㎞、ベルサイユの先にあります。 *こちらはフランスで唯一見る事が出来るアールトの建築です。 デザインされた頑丈な門 雑木林の小道 門を入り、広大な敷地を歩いて行くと建物にたどり着きます。 玄関入口付近 木材の使用や大きく厚い窓ガラス、そして光の入れ方などから北欧の建築家の手によるものだと感じる事が出来ます。 ポーチの柱、こんなところにも木材を使用。 木材を使用したリビング外観 大きな厚い窓があるリビング リビングの暖炉周辺は自然素材の使い方がとても素敵 やわらかな光を取り込む玄関ホールの明かり窓 カレは仕事柄たくさんのアーティストや建築家と付き合いがありました。 そんな中で知り合いではなかったアールトに設計を依頼したのは、自然と共に過ごすというテーマやアートとの向き合い方に、彼と自分との共通点を見出したからだそうです。 こちらのリビングの為にデザインされたマット プライベート空間と、公的空間を分ける圧迫感のない扉 計画は3年もの年月をかけてじっくり進められ、完成後は当初の予定通り顧客、デュシャンやミロといったアーティスト、小説家、著名人などを招待してコレクションを堪能しながら交流を深めたそうです。 ギャラリストとして、まさに理想的な生活です。 庭には各居室からアクセス可 パーティーにも利用された庭 そしてカレの死後も夫人は亡くなるまで住み続け、ピカソなどの大事な美術品を手放してもここの土地・家は手放しませんでした。 とても強い思い入れがあったのでしょう。 現在はフランスのアールト財団が修復を続けながら公開・管理をしており、撮影やレセプションへの貸し出し、展覧会の開催などにも対応しています。 庭との関係(自然との関係)、部屋の取り方、家具・照

【アート通信ー5:「目黒総合庁舎」】

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今回のご紹介は 目黒総合庁舎 (元千代田生命保険相互会社の本社ビル)です。 村野藤吾(1891~1984)の設計で1966年に完成しました。 2000年の千代田生命保険相互会社の経営破綻により売却され、2003年から目黒区総合庁舎として使用しています。 役所として使用するにあたり手を加えたカ所もありますが、丹念に贅沢に作られたこの建物は見所満載で、 一見の価値がある思います。 螺旋階段 この建物の中で一番有名ではないでしょうか。 南口玄関からホールを抜けた奥にあり、千代田生命の大事なお客様を迎える目的で作られました。 階段の裏側の景色も美しい螺旋階段 エントランスホール こちらも当時、千代田生命の要人を迎え入れる空間として作られました。 日本におけるガラス工芸の草分けとも言える 岩田籐七のガラス作品(「フラウスト・ワルキンデスの幻想」)や作野旦平のガラスモザイクが建物に組み込まれ、床も壁も大理石という贅沢なつくりです。 現在は、南口玄関として庁舎を訪れた全ての人の目を楽しませています。 岩田籐七によるガラスの袖壁はエントランスホールと受付の間にある 袖壁のアップ 作野旦平によるガラスモザイクの天窓は春夏秋冬を表現 *エントランスホールとその奥の美しい螺旋階段は、 建物有効利用のユニークな試みとして 役所が休みの日に 結婚式や写真撮影に使用 されています。 茶室 千代田生命時代は社員のクラブ活動などに使用されていたそうです。 ビルに囲まれた庭(茶庭)とは思えない静かな侘びの世界が展開されています。 茶庭から茶室を見る 4畳半の落ち着いた茶室 躙口より茶庭を見る 和室 茶室の傍にはそれぞれ趣が異なる和室が3室(「しじゅうからの間」「しいの間」「はぎの間」)があり、こちらも社員のクラブ活動などに使用されていたそうです。 「しじゅうからの間」 私は障子の組子がル・コルビジェの〈ラ・トゥーレット〉の窓枠に似ていると思いましたが、関係ある関係ない諸説あるようです。 34畳ある「はぎの間」には水屋も付いており、茶室としての利用も可能 *現在、 茶室・和室は予約で茶会や会合などに利用出