【アート通信ー5:「目黒総合庁舎」】

今回のご紹介は目黒総合庁舎(元千代田生命保険相互会社の本社ビル)です。
村野藤吾(1891~1984)の設計で1966年に完成しました。


2000年の千代田生命保険相互会社の経営破綻により売却され、2003年から目黒区総合庁舎として使用しています。
役所として使用するにあたり手を加えたカ所もありますが、丹念に贅沢に作られたこの建物は見所満載で、一見の価値がある思います。

螺旋階段
この建物の中で一番有名ではないでしょうか。
南口玄関からホールを抜けた奥にあり、千代田生命の大事なお客様を迎える目的で作られました。

階段の裏側の景色も美しい螺旋階段

エントランスホール
こちらも当時、千代田生命の要人を迎え入れる空間として作られました。
日本におけるガラス工芸の草分けとも言える岩田籐七のガラス作品(「フラウスト・ワルキンデスの幻想」)や作野旦平のガラスモザイクが建物に組み込まれ、床も壁も大理石という贅沢なつくりです。
現在は、南口玄関として庁舎を訪れた全ての人の目を楽しませています。

岩田籐七によるガラスの袖壁はエントランスホールと受付の間にある
袖壁のアップ

作野旦平によるガラスモザイクの天窓は春夏秋冬を表現

*エントランスホールとその奥の美しい螺旋階段は、建物有効利用のユニークな試みとして役所が休みの日に結婚式や写真撮影に使用されています。

茶室
千代田生命時代は社員のクラブ活動などに使用されていたそうです。
ビルに囲まれた庭(茶庭)とは思えない静かな侘びの世界が展開されています。

茶庭から茶室を見る


4畳半の落ち着いた茶室


躙口より茶庭を見る

和室
茶室の傍にはそれぞれ趣が異なる和室が3室(「しじゅうからの間」「しいの間」「はぎの間」)があり、こちらも社員のクラブ活動などに使用されていたそうです。
「しじゅうからの間」
私は障子の組子がル・コルビジェの〈ラ・トゥーレット〉の窓枠に似ていると思いましたが、関係ある関係ない諸説あるようです。

34畳ある「はぎの間」には水屋も付いており、茶室としての利用も可能
*現在、茶室・和室は予約で茶会や会合などに利用出来ます(条件アリ)。
また和室「しじゅうからの間」は、休憩室として常時開放されています。

本館と別館を結ぶ渡り廊下
1階部分からはガラスを通して池を望め、観光地へ足を延ばしたかのようなゆったりした癒しの空間です。

それに対し、2階部分は未来的な空間に感じました。
オリジナルでは別館との連結部は電車の連結部分の様になっていたそうですが、現在は雨漏りの為変更されています。


渡り廊下を外部より見る

屋上庭園 
悪天候でなければ16時30分まで開放されている屋上庭園もあります。


村野さんも千代田生命の為に設計した建物が、後に役所として使われるとは想像していなかったでしょう。
手を加えながらこうして長く大切に使ってもらえるという事は、建物にとってはもちろん建設に関わったすべての人にとっても幸せな事だと感じました。
開庁時間でしたら誰でも建物に入って鑑賞をする事が出来ますが、毎年開催される「目黒区総合庁舎建築ガイドツアー」は熱意ある建築家による詳しく丁寧な解説でお勧めです。
(目黒区立美術館でインフォメーションされます)

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