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【アート通信ー81:「天王洲アートフェスティバル2022」】

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 81回目のアート通信は、東京都品川区の天王洲アイルからです。 天王洲アイル、 第二水辺広場(ボードウォーク)付近 天王洲アイルは、江戸時代に東京湾に築かれた第4台場を埋め立てた約20平方メートルの島です。1980年以前は倉庫や物流センターが立ち並ぶ地域でしたが、1990年代より再開発が進み、2000年以降はオフィスビル、高層マンションの建設が相次ぎました。 2010年代からは芸術文化の発信地と位置付けられ、さまざまなイベントが開催されています。『 天王洲アートフェスティバル』 は、2019年より毎年開催されており、運河沿いの建物や公共施設での壁絵や、桟橋空間での立体作品などのストリートアートを、街を歩きながら楽しめるイベントです。 ARYZ「"The Shamisen" Shinagawa2019」(2019) 例えば、こちらは遠くからも目に入る巨大壁画で、浮世絵を題材にした作品です。 DIEGO「東京/天王洲」(2019) 他にも、通りを歩いていくと様々なところでアートに出会います。 吉野もも「巡り循る」(2020) こちらは、旧品川清掃作業所で、現在はパラスポーツやアート活動に利用されている品川区の施設「アイルしながわ」です。シャッターには、吉野氏によるアートが。そしてこのシャッターが開くと・・・。 吉野もも「巡り循る」(2020) このようになります。 写真では分かりにくいですが、内部の壁やシャッターにも様々なアーティストがアートを施しており、かなり賑やか! 今年の『天王洲アートフェスティバル2022 』 は10月10日から12月31日まで開催。今年新たに加えられた作品は12点で、前回までの展示も含めると24点。期間後も継続して展示される作品もあるので、会期後も楽しめますよ。 松下徹「Sleeping City」(2020)より アートは、最寄り駅、東京モノレール天王洲アイル駅の構内から既に始まっています!上の写真は松下氏による壁絵で、日常の様々なモチーフが改札から外に出る通路に描かれています。 江藤雄造「金魚が泳ぐホテル」(2022) また、駅隣接のホテル、『第一ホテル東京シーフォート 』 では、 床に 金魚が! これは今年参加の 漆芸家、 江藤氏による試みで、この金魚は今後も増殖していく予定だとか。 Lucas Dupuy「Looki

【アート通信ー80:「クルックフィールズ」】

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第80回目のアート通信は、千葉県木更津市にオープンした「クルックフィールズ」からです。 ここは自然・食・アートをテーマにしている複合施設で宿泊もできます。 千葉県木更津市 「クルックフィールズ」の敷地ー1 30ヘクタールにも及ぶすり鉢状の敷地では、太陽光発電、排水の浄化、ゴミの堆肥化など、サスティナブルな世界が展開しています。 と言うと堅苦しですが、ここは、安全な自然のもと、動物と触れ合い、美味しいものを食べ、アートとも仲良くなれる楽しいところですよ! では、その楽しさを少しずつご紹介していきましょう。 :農業 ブラウンスイス牛の牛舎、良いお顔! ここでは、有機農業、養鶏、酪農も行われています。そして作られたものは、出荷されると共に、こちらの施設でも使用されています。 また来場者向けに収穫体験や、放牧しているブラウンスイス牛の見学、小ヤギ、子ヒツジとの触れ合いタイムなどもあります。 :食べる 藤原徹平さん設計によるダイニング(レストラン) 施設内の食の施設には、レストラン「ダイニング」、ベーカリー「ランカ」、野趣溢れる食を提供する「 シャルキュトリー」、ソフトクリームなどミルクそのもののおいしさを表現した「ミルクスタンド」、シフォンケーキの「シフォン」があります。 同じく藤原徹平さん設計による「シャルキュトリー」 そして「ダイニング」で使われるのは、ここで育てられた野菜、ハーブ、卵です。牛乳やチーズもここの牛さんから! 「 シャルキュトリー」では、 木更津の野生動物にここで採れた野菜・ハーブを混ぜたソーセージなどが販売されています。また、猪バーガー、鹿肉のスープなどもあり、それは細胞に生命のエネルギーがジュワッと沁みていくような美味しさです! シフォンハウスでは、左官職人、久住有生氏による壁面も注目! こちらのシフォン型の建物、 シフォンハウスも藤原徹平さんによる設計ですが、 久住有生氏による美しい壁面にも注目です。写真は内壁ですが、外壁はまるでクリームを塗ったかのような質感! クルックフィールズで採れる卵、牛乳を使用したシフォンケーキの他、プリンやフィナンシェも人気です。 テーブルや椅子はいろんなところに置かれており、自由に利用できる :遊ぶ 長〜い滑り台! こんな大きなブランコ、大人だって乗ってみたい! 敷地内には地形を生かした滑り台などの遊び場、巨大な竹のブラ

【アート通信ー79:「静嘉堂@丸の内」】

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 79回目のアート通信は、10月1日に東京・丸の内にオープンした「静嘉堂@丸の内」からです。 入り口は「丸の内MY PLAZA」の1階 世田谷区の静嘉堂文庫美術館の展示スペースが東京・丸の内に移転し、名称も新たに「静嘉堂@丸の内」となりました。現在、「響きあう名宝ー曜変・琳派のかがやきー」展が12月18日まで開催されています。場所は重要文化財でもある明治生命館の1階です。 また、世田谷の静嘉堂文庫美術館は、ここでの展示は無くなりますが、作品・書籍の保管管理、研究閲覧の場にとして今後も機能していくとの事。 国宝『倭漢朗詠抄 大田切』(11世紀) 静嘉堂文庫美術館のコレクションは、東洋古美術中心に絵画、彫刻、工芸、刀剣など国宝7点、重要文化財84点を含む6500点の作品と、約20万冊の古典書からなります。そのすべては、三菱第二代社長、岩崎彌之助氏(1851-1908)とその息子で三菱第四代社長、岩崎小彌太氏(1879-1945)によって集められたもの! 世界に3点しか現存しない国宝『曜変天目』(12〜13世紀) オープニングとなる今回の展示は、国宝7点、重要文化財10点を含むという贅沢なラインナップ。また、国宝などの指定のない作品にも素晴らしいものが多いので、充実した解説と共に、落ち着いた環境でゆっくり楽しめるでしょう。 当時の姿を残している「静嘉堂@丸の内」 ロビー、ホワイエ それに加え、岡田信一郎氏(1883-1932)設計による建物、明治生命館(1934年竣工)も見応えがあります。国の重要文化財である建物と展示を同時に楽しめるのは嬉しいいですね。 建物の見どころは自然光が入るホワイエだけでなく、そこを囲む様に設けられた展示室も。例えば、 第2展示室にあるかつてのエレベーター 第3展示室から第4展示室に向かうアーチ型の入り口 様々なオリジナルグッズが揃っているミュージアムショップもお忘れなく!中でもプレス発表会で人気だったのがこちら。 『曜変天目』5800円?! 国宝の『曜変天目』を5800円で買えるの?!と一瞬、驚いてしまう程良く出来ています。手にとって味わって欲しい、という思いから生まれたそうで、5800円を高いと思うか安いと思うかはその人次第。 床の間に飾る?それとも使う? 玄関に置いて鍵入れにしたら?と誰かが言っていました。それもありかも。 あるいはジュエリ

【アート通信ー78:「原美術館ARC」】

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78回目のアート通信は、「原美術館ARC」からです。JR上越線の渋川駅から、伊香保温泉行きバスで15分のところにあります。 こちらは「ハラ ミュージアム アーク」が2021年に名称を改め、「原美術館ARC」となりました。 「ハラ ミュージアム アーク」は、もともと「原美術館」の所蔵庫も兼ねた別館でした。2021年に「原美術館」が建物老朽化により閉館し、その所蔵品を可能な限り継承し、名称も改に再オープンしたのが「原美術館ARC」です。 豊かな自然の中に突如現れる展示室 酪農場で見かけるサイロをの様な三角屋根の建物。設計は磯崎新氏 (1931-)です。 低層の建物は長閑な景色に馴染んでいるようでもあり、黒い色調のシャープなデザインは、それを拒否しているようでもあります。 敷地内にはカフェもある 一部の屋外作品は隣の「グリーン牧場」内に設置 アンディ・ウォホール(1928-1987)、ジャン=ミシェル・オトニエル(1964-)、宮脇愛子(1929-2014)などによるの屋外作品も20点あるので、作品鑑賞しながらの散歩、または敷地内のカフェでまったり過ごすのもお薦めです。 草間彌生「ミラーボール(かぼちゃ)」1991/1992 、 美術館リーフレットより 館内は撮影禁止なので写真での個々の作品紹介は出来ませんが、草間弥生(1929-)、奈良美智(1959-)、森村泰正(1951-)、芋束(1975-)といった有名どころの常設展示もあり、必見です! 鈴木康弘「日本列島のベンチ」2014/2021 展示室を結ぶ通路に設置されたこちらの作品は、 鈴木康弘(1979-)による「日本列島のベンチ」です。渋川市が日本のヘソである事と、この作品設置場所が美術館の中心である事も兼ね合わせているユニークな作品です。 觀海庵(かんかいあん)への通路から望む景色 また、2008年に新しく増設された特別展示室「 觀海庵(かんかいあん) 」へ向かう、まるで自然を切り取った様な美しい景色は、高級温泉旅館からのそれのようで癒されます。 被曝柿の木2世 2005年5月14日植樹 そしてこちらの木は、1945年8月に長崎で被曝しながら奇跡的に生き残った柿の木の種子から生まれた「被曝柿の木2世」。 『時の蘇生』柿の木プロジェクトによるもので、現代美術家も宮島達夫氏の呼びかけもあり、現在は23カ国250ヶ所以上

【アート通信ー77:「みんなの椅子」】

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 77回目のアート通信は、9月5日(月)より武蔵野美術大学美術館で後期の展示が始まる「みんなの椅子」展からです。 美術館は武蔵野美術大学の敷地内 時代は16世紀から。世界で製作されたその時代を代表する約250脚が展示されています。その展示だけでも一見の価値ありなのですが、この展覧会の素晴らしいところは、ほとんど全ての椅子に座れるところです。一部座れない椅子もありますが、世界中から集められた有名デザイナーの椅子に座れる機会はなかなかありませんよ! 展示の仕方も素敵 また、一部の椅子は販売もされているので、購入希望の方はリンクサイトからの購入も可能です。日本人のデザイナー倉俣史朗氏(1934-1991)、梅田正徳氏(1941-)の椅子は別室を設けて展示しています。 体験には用意されたビニール手袋をはめる 使った事はなくても、教科書で、画集で、あるいは映画で見かけた、という椅子もあり、そんな椅子に座る時はちょっとドキドキします。この機会にお気に入りの椅子を見つけてみては? 「バンビーニ」 ちなみに私のお気に入りは、こちらの椅子。マルコ・ザヌーゾ、リチャード・サッパーによる「バンビーニ」。子供用なのにとても座り心地が良く可愛い!製造年が1964年頃、というのにも驚きます。 会場内にも解説がありますが、事前に美術館HPで予習、もしくはHP内のムービー「テラダセンセイのISU is More」を観てから訪問するのも、より理解が深まるのでお薦めです! 展示は10月2日(日)まで 「みんなの椅子 ムサビのデザインⅦ」

【アート通信−76:「ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで」】

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 76回目のアート通信は、東京都現代美術館で開催中の「 ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで」からです。 「ジャン・プルーヴェ展」ポスター部分 ジャン・プルーヴェ(1901-1984) は、20世紀の建築や工業デザインに大きな影響を与えた金属工芸家、家具デザイナーで、機能的で革新的なプレファブ住宅を考案した人です。 彼はフランス東部のアール・ヌーヴォーの街、ナンシーで、エミール・ガレ(1846-1904)と共に仕事をし、国立工芸学校の校長も務めた芸術家の父と音楽家の母の元で育ちました。そんな環境で育ったプルーヴェが、デザインの道に進むのはごく自然なことだったのでしょう。 しかし、彼が評価されるのはデザインの素晴らしさだけではありません。それがどんなところだったのか、早速、観ていきましょう! 《「プレジダンス」デスクNo.201》(1955頃),《「ディレクシオン」回転式オフィスチェアNo.353応用型 (1951), メッスの学校で使用していた《本棚》( 1936) 会場はまず、彼がデザイン・製作した家具の展示から始まります。 「 家具の構造を設計することは大きな建築物と同じくらい難しく、高い技術を必要とする 」 は彼の言葉です。 《組み立て式ウッドチェア CB 22》(1947) そして続く椅子の展示では、 「 家具をつくることと家を建てることに違いはない。実際、それらの材料、構造計算、スケッチはとても似通っている 」 と言っており、会場中央に展示してある解体可能な椅子のパーツからもそれが分かります。 ずらっと並んだ歴代の椅子の展示は圧巻ですよ! 《「カフェテリア」チェア No.300》(1950頃) プルーヴェは椅子を後ろに少し倒して座るのが好きで、後脚を丈夫にし傾けやすくした「スタンダードチェア」が誕生しました。その中でも「カフェテリア」は、バラバラに解体して輸出しやすくなっています。 マクセヴィルの工場の建物パーツ 金属工芸家時代から階段の手すりやドアなど建築に付随するものをデザイン製作していたプルーヴェですが、第2次世界大戦後は迅速な住宅供給の必要性が高まり、ナンシー郊外 マクセヴィル の工場で特に建築パーツの製作に力を注ぎます。 「 建設は・・・、素材の原理によるものだ。だから正確に図面を引き、材料の物理的な性質を知らなければならない。私は自分でつくっ