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【アート通信ー122:「GREY ART MUSEUM 2026」

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 122回目のアート通信は、現在、東京・西麻布の WALL_alternative にて開催中の 「GREY ART MUSEUM 2026 -五感で感じる伝統と革新- 」 からです。 会場の様子 こちらは昨年に続き、シューズメーカー・ ニューバランス による期間限定で開催する 無料のアートイベント 。 GREYとはグレー。ランニングシューズを製造してきたニューバランスは、未舗装の道、アスファルト、そして街に馴染む色として当時珍しかったグレーを採用した事を誇りに思っており、その歴史をとても大事にしています。 会場の様子 今年のテーマは-伝統と革新-。5名のアーティストがそれぞれ、グレーを基盤に伝統を象徴する製品「574」と、革新を象徴する製品「ABZORB 2000」からインスピレーションを得たオリジナル作品を発表。五感で来場者に感じてもらう趣向です。 國本怜「KAZE # 4ーLooped Helix」(2026) 國本怜 (くにもとれい)氏の音を奏でる立体作品は、ニューバランスの伝統を象徴する 製品「574」を意識し、 574枚の鉄のプレートを使用。 緩やかに動きながら姿を変えるそのシルエットは、なんとシューズの靴紐をイメージしているとか。 東城信之介「Unnamed」(2026)より 雪国で育った 東城信之介 (とうじょうしんのすけ)氏は、雪というと白をイメージするかも知れないが、そこで生活してきた自分には灰色、グレーだと言い、 金属などを重ねた 平面作品を出品。 会期中にワークショップも開催。 和泉侃「Synesthetic Grey」(2026)より 和泉侃(いずみかん) 氏は、「574」から3点、「ABZORB 2000」から3点と、それぞれのシューズのパーツを分解し、そこから連想して作り上げたオリジナルの香りを展示。 和泉侃「Synesthetic Grey」(2026)より 香りは各自、容器を開けて体験出来ます。 そして手前に置かれた半球状の容器には、それぞれの3つの香りがミックスされており、言わば、「574」と「ABZORB 2000」を象徴する香りとなっています。 和泉侃「Synesthetic Grey」(2026)より 更に、来場者は用意されている紙の指定箇所にそれぞれの香りを付けて持ち帰れます。香りで感じるニューバランス、新しい発想...

【アート通信ー121:「ジョルジュ・ルオー アトリエの記憶」】

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 121回目のアート通信は、現在、東京都・新橋の パナソニック汐留美術館 にて開催中の 「ジョルジュ・ルオー アトリエの記憶」 展からです。 パンフレットより パナソニック汐留美術館 は、電気設備など生活に関わる多くの事を手がける会社、パナソニックが社会貢献の一環として2003年に開館した美術館です。フランスの画家、 ジョルジュ・ルオー (1871-1958)の270点もの作品を所蔵している事でも知られています。 今回の展覧会では、膨大なコレクションより、初期から晩年までの約60点の作品がテーマに沿って展示されており、そこから彼の人柄までが推し量れます。 ジョルジュ・ルオー 「マドレーヌ」(1956) ジョルジュ・ルオー ( 1871-1958) は、1871年にパリの下町ベルヴィルで生まれました。父親は家具職人で、自身は14歳の時にステンドグラス職人に弟子入りします。彼が描く黒い輪郭線は、この経験によるものと言われています。 その後、美術の学校に入り、そこで学んだ ギュスターヴ・モロー (1826-1898)から大きな影響を受けました。ちなみに日本でも有名な アンリ・マティス (1869-1954)は同じクラスで、その後も行動を共にします。また、 ポール・セザンヌ (1839-1906)の作品には深い感銘を受け、影響も受けました。 再現された最後のアトリエの様子 展示作品以外にも、画商ヴォラールとの関係、ビデオで紹介される修復作業から見える真実、お孫さんが語るルオーの姿なども注目ポイントです。 そしてやはり一番の見どころは、パリのジョルジュ・ルオー 財団より借用した筆・パレットなどで再現された彼のアトリエでしょう。 実は彼はイーゼルにキャンバスを立て掛けず、テーブルの上にキャンバスを置き、平置きで絵を描いていました。その様子が良く分かり、ルオーとの距離感もぐっと縮まリますよ! パナソニック美術館にて6月21日まで開催中 パナソニック美術館

【アート通信ー120:「久保田一竹美術館」】

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 120回目のアート通信は、山梨県の河口湖近くにある 「久保田一竹美術館」 からです。 インドの古城に使われていた扉を使用した正門 「久保田一竹美術館」は、染色家・ 久保田一竹 ( くぼた いっちく 1917-2003)   氏 の作品が常設展示されている美術館で、1994年に開館しました。 自然と一体となった庭園を通りながら建物に向かいます。訪れた時はオフシーズンなので少し寂しかったですが、春は新緑、秋は紅葉で相当 美しい事でしょう。 久保田一竹氏の作品、パンフレットより 『辻が花』とは、絞り染めをした後に絵を描き足したり、箔を施したり、さらに刺繍を加えたりする手の込んだ技法で、室町時代に流行りました。しかし、江戸時代になると簡単に染められる『友禅染め』に取って代わられ、衰退し、消滅した技法です。 その幻の技法を、復活させようと試みた人達がいます。その中の一人、 久保田一竹氏は、古来の手法から 『一竹辻が花』 と呼ばれる 独自の世界を生み出し、世界的に有名になりました。 〈新館〉の外観 〈新館〉は全て琉球石灰石で出来ており、ガウディの建築を彷彿させます。 ここにはミュージアムショップや、カフェが入っており、カフェでは、 天気が良ければ氏も愛した 富士山が望めます。 〈本館〉 作品が展示してある〈本館〉は、〈新館〉とは全く違うデザイン。一千年を超すヒバの木を16本使い、日本古来の建て方と西洋のログハウスの建て方を融合させています。 本館の屋根部分、パンフレットより 年に数回展示替えがあります。 館内は残念ながら撮影禁止。素晴らしい作品の数々をここでリアルにご紹介出来ないのは残念で、パンフレットの写真を載せます。 久保田一竹氏の作品、パンフレットより 久保田一竹氏は、『友禅染め』をしていた20歳の時、『辻が花染め』に出会いました。それはほんの小裂でしたが、その美しさに心を奪われた氏は、敗戦とシベリア抑留を経験した後、急死に一生を得たと、その後の人生を『辻が花』の研究に捧げます。 重厚で力強い作品の世界観は壮大で、シベリア抑留の経験をも彷彿させます。そしてそれは、着物の域を超え、四季折々の自然から果ては宇宙へまでと広がっています。 茶房「一竹庵」より庭を眺める 展示室の奥には茶房「一竹庵」があります。ここでは庭を眺めながら休憩が出来るだけで...

【アート通信ー119 : 「ミッション ∞ インフィニティ| 宇宙 + 量子 + 芸術」展】

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 119回目のアート通信は、現在、 東京都現代美術館 にて開催中の 「ミッション ∞ インフィニティ| 宇宙 + 量子 + 芸術」 からです。 *全て許可を得て撮影しています。 永原康史「The Art of Entanglement」(2026) かつてアートは、絵画・彫刻・工芸、と分類していましたが、その枠に収まらないアートが出現してきたので、平面・立体、とざっくり分類するようになりました。 しかし近年は、それを超える 映像 や 光 を用いたアートも日常的に眼にする様になり、今回は、それらを宇宙+量子+芸術というサブタイトルで括っています。 アートは既に地球に収まりきらず宇宙に向かっている?そして量子とは?! 文部科学省「一家に1枚 量子と量子技術」 持ち帰り用のシートあり 量子とは : 物質は分子、さらにもっと小さい原子から出来ています。そしてその原子は原子核とその周りの電子から出来ており、その極小の世界では不思議な力学が生まれます。その不思議なエネルギーの最小単位を 量子と呼びます。 身近なところでは、 それは LED、医療用MRI、 量子コンピューター、暗号システムなどで利用されています。 もう付いていけない!と思う人も大丈夫。難しく考えず、まずは楽しむ事から始めましょう! 逢坂卓郎「生成と消滅 2025 」(2025) 例えば 逢坂卓郎氏のこちらの作品は、超新星の爆破で生じる、宇宙線が検出されると緑のLEDが消えます。そしてその後またゆっくりと灯ります。 緩やかな点滅を眺めていると、宇宙のどこかと、あるいは誰かと交信しているような不思議な気分になれます。 アンリアレイジ「ANREALAGE PLANET 2022-23AW COLLECTION『PLANET』」(2022) テクノロジーを駆使した洋服作りをするブランド、『ANREALAGE』の2022年秋冬コレクションのテーマは「PLANET」。 この映像は、JAXA 相模原キャンパスの「宇宙探査実験棟」で撮影され、パリコレクションのデジダルプラットフォームよりショーとして配信されました。 会場で鑑賞する10分間の映像はとても神秘的で美しく、自分も宇宙のどこかに居るような錯覚すら覚えます。 アンリアレイジ「ANREALAGE PLANET 2022-23AW COLLECTION『PLANET』...

【アート通信ー118:「岡本太郎記念館」】

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118回目のアート通信は、東京・青山にある 「岡本太郎記念館」 からです。 作品と共に立つ実物大マネキンの太郎氏 「岡本太郎記念館」は 岡本太郎 (1911-1996) が1954年より亡くなるまでアトリエ兼住居として使用した場所です。旧館の設計は、ル・コルビュジエに師事し、1937年のパリ万博で日本館建設にも携わった坂倉準三氏(1901-1969)で、2人はパリ留学時代から交流がありました。 記念館での展示の様子 岡本太郎は、現在の 東京藝術大学中退 後、フランスに渡り10年間 ソルボンヌ大学で哲学や民俗学 を学び、戦争の影響で、帰国を余儀なくされた後は、中国戦に出征し 捕虜生活も経験 。 戦後はテレビ出演での彼の言葉、 『芸術は爆発だ!』 が有名になりました。 作品は、絵画に留まらず、例えば1970年の万博時に制作された巨大彫刻 「太陽の塔」 、渋谷駅マークシティの陶壁 「明日の神話」 (1968-69) 、椅子のデザイン、寺の梵鐘など多岐に渡っています。 詳しくは、 【アート通信ー34 :「川崎市岡本太郎美術館」】 【アート通信ー115:「太陽の塔」】 に書いていますので、ここではこの記念館の紹介に留めます。 アトリエはそのまま残され、リアルにその様子が分かる 記念館では作品展示も行っていますが、他の美術館と大きく異なる点は、ここが氏の 棲家 であり アトリエ であり、それがそのまま残されていると言う点でしょう。 このように、岡本太郎氏の息吹をそのまま感じられる場所が残されていると言う事は貴重です。 一方、期間ごとに異なるテーマでの展示もあるので何回訪れても新鮮に感じますよ! 記念館の入り口とミュージアムショップ 入り口脇のミュージアムショップは、ミニチュア彫刻なども購入出来る人気のスポット。 氏の彫刻が無造作に置かれている庭 また、特筆すべきは、 庭も当時のまま残されている 、と言う事です。 都心とは思えない豊な緑に覆われた庭は、氏のお気に入りの場でもありました。 自身の墓石にも使用したお気に入りの彫刻作品「午後の日」(1967) そんな庭も自由に散策できます。 また、隣接のカフェ「a Piece of Cake」は、記念館への入場と関係なく利用出来ます。 ここでの私のお薦めはウイスキー! 飲み干すと、グラスの底に太郎氏がデザインした顔が現れる! このグラ...

【アート通信ー117:「マリーナ・タバサム・アーキテクツ(MTA)展」】

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 117回目のアート通信は、現在、東京・六本木の TOTOギャラリー・間 で開催されている 「マリーナ・タバサム・アーキテクツ(MTA)展」 からです。 「マリーナ・タバサム・アーキテクツ(MTA)展」ポスター マリーナ・タバサム (1968-)氏は、バングラデシュ出身の建築家で、自然災害や貧困などの問題にも向き合いながらバングラデシュを拠点に活動しています。 展示会場の様子 展示は、バングラデシュがどのような国なのかが分かる様に工夫されており、国土の大部分が川に囲まれたデルタ地帯で、繰り返す洪水で移動を余儀なくされる人達がいる事が分かります。国土の1/3が水没する事もあるとか! 写真での『クディ・バリ』の説明 こういった状況下、マリーナ・タバサム氏たちは現地の人たちと対話やワークショプを繰り返し、小さな可動式住宅 『クディ・バリ』 (現地語で、「小さな家」の意味)を提案しました。 展示会場のテラスで組み立てられた『クディ・バリ』 『クディ・バリ』は高床式で、バングラデシュにある伝統的な住居からヒントを得ており、スチールのジョイント以外は全て現地で調達し自分たちでの組み立てが可能です。 実際、これまで500戸以上建てられました! 『クディ・バリ』上階に上る梯子 『クディ・バリ』上階の様子 通常は内部には入れませんが、ギャラリーツアーの日は可能なので、HPで確認の上、日時を合わせて行くのがお勧めです! 『サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン』 (2025) 模型 同じ仮設、という観点では、イギリス・ロンドンのケンジントン・ガーデンに2025年夏に建てられたパビリオンの模型も展示されています。 *ケンジントン・ガーデンでは、2000年より毎年夏に、選出された建築家が期間限定の休憩スペースを建てます。初回はザハ・ハディド氏、日本からもこれまで伊東豊雄氏、SANAA、藤本壮介氏、石上純也氏が担当。 『バイト・ウル・ロゥフ・モスク』 (2012) 模型 一方、彼女達が手掛けているのは、仮設住宅だけではありません。ダッカを中心とした都市で恒久的な建物も手掛けています。 恒久的な建物は、仮設とは真逆のようですが、現地の土でレンガを作るなど、その土地の素材、優れた技術を尊重するところは同じです。 『バイト・ウル・ロゥフ・モスク』の写真での説明 また、彼女は 〈光は設計の中...