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【アート通信ー124:「怖い本」展】

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 124回目のアート通信は東京都・文京区の 東洋文庫ミュージアム にて開催中の 「怖い本」展 からです。 「怖い本」展 入り口付近 〈東洋文庫ミュージアム〉は 図書館 と ミュージアム から成り、2011年に開館しました。 「怖い本」展は、日本の妖怪を中心に、 世界の視点からみた〈怖い〉 本が53点展示されている、暑い夏にぴったりの企画です。 企画展の開催場所は2階のモリソン書庫の裏側、早速みていきましょう。 富川房信『石川村五右衛門物語』(1776) 例えば、こちらは江戸時代に書かれた本 『石川村五右衛門物語』 。 安土桃山時代に実在したと言われる大盗賊、石川五右衛門が捕まり、京都の河原で釜茹での刑にされる場面が描かれています。 所謂〈五右衛門風呂〉の由来となる場面で、〈怖い〉というより、その描き方からか、なんか愛らしい印象を受けます。 桃山人 撰,  竹原春泉 画『絵本百物語』(1841) こちらは、40種以上の妖怪が描かれた妖怪図鑑のような怪談本 『絵本百物語』で、 浮世絵師  竹原春泉により、それぞれの妖怪が鮮やかな色で生き生きと描かれています。 *『絵本百物語』の 百物語 は、人々が夜に集まって100種の怪談を順に語り100番目の話を終えると妖怪が現れるとされた江戸時代に流行した遊びからの命名。 ラフカディオ・ハーン(小泉八雲) 『怪談』(1914) 〈怪談〉 と言えばこの人、 小泉八雲 。明治時代、妻が語った〈耳なし芳一〉〈雪女〉などの怪談を英語で海外にも紹介した人。去年放映されたNHKの朝ドラ「「ばけばけ」で彼の事を詳しく知った人も多いのでは? 『アラビアンナイト』(9世紀ごろ, 刊行年不明) そして100 の物語、と言えばこちら、西アジアから北アフリカのおとぎ話 『アラビアンナイト』 。 9世紀にバクダードでその原型が生まれました。 物語のはじまりは、 ・・・妻の浮気を知り女性を信じられなくなった王は、毎日新しい妻を娶ってはその妻を殺します。シェヘラザードはその悪行を知っていましたが、妻に立候補し、「この話の続きはまた明日」と繰り返し、命懸けで毎夜、王に面白い話を語り続け生き延びます。 *アラブ世界では、日本で言う妖怪の様な不思議な力をもった存在を〈ジン〉と呼んでいます。 『地獄風刺絵(鯰絵)』(1855) こちらは 鯰絵...

【アート通信ー123:「ロン・ミュエク」展】

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 113回目のアート通信は、現在、東京・六本木の 森美術館 で開催中の 「ロン・ミュエク」展 からです。 会場入り口付近 ロン・ミュエク(1958-) は、オーストラリア出身の作家で、元々は撮影用の人形や道具を作る模型職人でしたが、画家の義母の誘いで自身の作品を作るようになりました。 とても大きな人物像を作る作家として知られていますが、今回の展覧会では小さい作品や、日本初公開の作品も出品されています。 『イン・ベッド』(2005) 展示風景 鑑賞者との対比で、寝ている人物像の大きさが分かるでしょうか。 日常のありふれた風景が目の前にとてつもないサイズで現れると、一瞬戸惑うと同時に基準が分からなくなり、いきなり違う世界に飛ばされた錯覚にも陥ります。 『イン・ベッド』(2005) 部分 作品の人物は、困っている様な、人生に疲れている様な憂いを帯びた表情をしており、どこかで出会った事があるような不思議な親近感を感じますが、視線はこちらを向いている様で合いません。 『エンジェル』(1997) こちらは日本初公開の初期作品。この展覧会の目玉の一つで、彼が注目されるきっかけになった作品でもあります。 『エンジェル』(1997) 彼はこの作品を、18世紀のイタリア画家、ジョバンニ・バッティスタ・ティエポロの『ヴィーナスと時間の寓意』(1754-175 )から着想を得て制作しました。 しかし、ジョバンニの作品では、時間を表す象徴として翼を持つ老人サトゥルヌスが描かれていますが、このエンジェルはより現実的。ちょっとお腹が弛んでつまらなそうにしているおじさん風。 本物かと見紛う程の脚のすね毛や肌の質感にも注目です! 『枝を持つ女』(2009) 『枝を持つ女』の制作風景 写真 今回の展覧会のもう一つの見所は、写真家であり、映画監督でもある、ゴーティエ・ドゥブロンド氏撮影による、ロン・ミュエクのスタジオでの制作風景の写真と映像作品の公開です。 『枝を持つ女』をスタジオで撮影した写真もあり、ま た違った印象を受けるので こちらもお見逃しなく! 『マス』(2016-2017) 圧巻は突然、部屋一杯に現れる巨大な頭蓋骨たち 『マス』 。こちらも日本初公開です。 “マス(Mass) " という言葉には、山のように積み重なるもの、集団、教会ミサなど様々な意味がありますが、 鑑賞者は 100...

【アート通信ー121:「ジョルジュ・ルオー アトリエの記憶」】

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 121回目のアート通信は、現在、東京都・新橋の パナソニック汐留美術館 にて開催中の 「ジョルジュ・ルオー アトリエの記憶」 展からです。 パンフレットより パナソニック汐留美術館 は、電気設備など生活に関わる多くの事を手がける会社、パナソニックが社会貢献の一環として2003年に開館した美術館です。フランスの画家、 ジョルジュ・ルオー (1871-1958)の270点もの作品を所蔵している事でも知られています。 今回の展覧会では、膨大なコレクションより、初期から晩年までの約60点の作品がテーマに沿って展示されており、そこから彼の人柄までが推し量れます。 ジョルジュ・ルオー 「マドレーヌ」(1956) ジョルジュ・ルオー ( 1871-1958) は、1871年にパリの下町ベルヴィルで生まれました。父親は家具職人で、自身は14歳の時にステンドグラス職人に弟子入りします。彼が描く黒い輪郭線は、この経験によるものと言われています。 その後、美術の学校に入り、そこで学んだ ギュスターヴ・モロー (1826-1898)から大きな影響を受けました。ちなみに日本でも有名な アンリ・マティス (1869-1954)は同じクラスで、その後も行動を共にします。また、 ポール・セザンヌ (1839-1906)の作品には深い感銘を受け、影響も受けました。 再現された最後のアトリエの様子 展示作品以外にも、画商ヴォラールとの関係、ビデオで紹介される修復作業から見える真実、お孫さんが語るルオーの姿なども注目ポイントです。 そしてやはり一番の見どころは、パリのジョルジュ・ルオー 財団より借用した筆・パレットなどで再現された彼のアトリエでしょう。 実は彼はイーゼルにキャンバスを立て掛けず、テーブルの上にキャンバスを置き、平置きで絵を描いていました。その様子が良く分かり、ルオーとの距離感もぐっと縮まリますよ! パナソニック美術館にて6月21日まで開催中 パナソニック美術館

【アート通信ー119 : 「ミッション ∞ インフィニティ| 宇宙 + 量子 + 芸術」展】

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 119回目のアート通信は、現在、 東京都現代美術館 にて開催中の 「ミッション ∞ インフィニティ| 宇宙 + 量子 + 芸術」 からです。 *全て許可を得て撮影しています。 永原康史「The Art of Entanglement」(2026) かつてアートは、絵画・彫刻・工芸、と分類していましたが、その枠に収まらないアートが出現してきたので、平面・立体、とざっくり分類するようになりました。 しかし近年は、それを超える 映像 や 光 を用いたアートも日常的に眼にする様になり、今回は、それらを宇宙+量子+芸術というサブタイトルで括っています。 アートは既に地球に収まりきらず宇宙に向かっている?そして量子とは?! 文部科学省「一家に1枚 量子と量子技術」 持ち帰り用のシートあり 量子とは : 物質は分子、さらにもっと小さい原子から出来ています。そしてその原子は原子核とその周りの電子から出来ており、その極小の世界では不思議な力学が生まれます。その不思議なエネルギーの最小単位を 量子と呼びます。 身近なところでは、 それは LED、医療用MRI、 量子コンピューター、暗号システムなどで利用されています。 もう付いていけない!と思う人も大丈夫。難しく考えず、まずは楽しむ事から始めましょう! 逢坂卓郎「生成と消滅 2025 」(2025) 例えば 逢坂卓郎氏のこちらの作品は、超新星の爆破で生じる、宇宙線が検出されると緑のLEDが消えます。そしてその後またゆっくりと灯ります。 緩やかな点滅を眺めていると、宇宙のどこかと、あるいは誰かと交信しているような不思議な気分になれます。 アンリアレイジ「ANREALAGE PLANET 2022-23AW COLLECTION『PLANET』」(2022) テクノロジーを駆使した洋服作りをするブランド、『ANREALAGE』の2022年秋冬コレクションのテーマは「PLANET」。 この映像は、JAXA 相模原キャンパスの「宇宙探査実験棟」で撮影され、パリコレクションのデジダルプラットフォームよりショーとして配信されました。 会場で鑑賞する10分間の映像はとても神秘的で美しく、自分も宇宙のどこかに居るような錯覚すら覚えます。 アンリアレイジ「ANREALAGE PLANET 2022-23AW COLLECTION『PLANET』...

【アート通信ー109:「ミロ展」】

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 109回目のアート通信は、現在、東京都美術館にて開催中の「ミロ展」からです。 *写真は全て、東京都美術館の内覧会にて許可を得て撮影しています。 「ミロ展」入口付近 太陽や月などを象徴的な姿で描いた絵で知られる 世界の巨匠、 ジュアン・ミロ ( 1893-1983)。 この展覧会では、彼の 絵画・陶芸・彫刻に渡る100点近い作品が紹介されています。 では早速、鑑賞のポイントとなる作品や逸話を、年代順にご紹介していきましょう。 『ヤシの木のある家』( 1918) 国立ソフィア王妃芸術センター 蔵 まずはこちらの作品。よく知られるミロの作品とはだいぶ様子が違いますね。初期の作品で、休養中の モンロッチで描かれました。 ジュアン・ミロは、 幼い頃より絵を描く事が好きでした。しかし 会計の仕事に就いた後 うつ病などになり、 両親の別荘があるモンロッチで休養したのです。その休養中、仕事を辞めて 好きな絵画に打ち込む事を決意しました。 バルセロナから140キロの美しい自然が残る村、モンロッチ。ここは、その後も迷いが生じる度に訪れ、アトリエも設ける、彼にとって大事な土地となります。 『自画像』( 1919) パリ・国立ピカソ美術館 蔵 そしてこちらの 「自画像」。 なんとあのピカソがずっと手元に置いていた作品です。 ミロは27歳の時、展覧会でパリを訪れ、同郷の大先輩ピカソを訪問します。ピカソはミロの才能をいち早く見抜き、届けられたこの作品を大事にしました。 やがてパリにアトリエを構えたミロは、ピカソの家族と家族ぐるみで交流するようになりますが、実は、ピカソの実家とミロの実家は500メートルほどしか離れておらず、母親同士が友達、という縁もあったのでした(!) 『絵画=詩  ( おお!あの人やっちゃったのね ) 』 ( 1925) 東京国立近代美術館 蔵 パリ時代のミロは、 当時湧き上がっていた新しい芸術の波に圧倒されながらも、シュルレアリスムの作家と交流をもち、様々な事に挑戦し、力をつけていきます。 この作品はその頃の作品で、絵画上に言葉 『oh!un de ces /messieurs qui a fait / tout ca  ( おお!あの人やっちゃったのね )  』が書かれています 。“やっちゃった”とは、何をやってしまったのか?晩年、...

【アート通信ー92:「大巻伸嗣 真空のゆらぎ」展】

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 92回目のアート通信は、現在、六本木の 国立新美術館 にて開催中の 「大巻伸嗣 真空のゆらぎ」展 からです。 大巻伸嗣氏(1971-)は、そのキャリアを彫刻からスタートさせましたが、現在は、 《存在とは何か?》 をテーマにした空間をはじめ、ダンサーとのコラボレーション、舞台美術なども手掛けています。 「Gravity and Grace」(2023) 会場に入るとまず、巨大な空間とそこに鎮座し光を放つ不思議な壺に目を奪われるでしょう。 「Gravity and Grace」(2023) 紙のように軽やかに見えるこの壺は、実はステンレスで出来ており、そこには植物・鳥・人などが繊細に刻まれています。そしてそれらは壺の中から放たれる強い光で浮き彫りになり、影絵にもなっています。 「Gravity and Grace」(2023) 部分 よく見ると、巨大な葉っぱや花などが絡む、植物ジャングルの中を歩く人の列も見えますよ。 「Gravity and Grace」(2023) 会場では、床・壁・天井に映し出され刻々と変わっていく景色と、自分がそこに存在し何かに包まれている感じも、是非味わって下さい。 大巻氏は、この作品では、《エネルギーに過度に依存した今日の社会を批評し、原子力が生み出した未曾有の人災、核分裂反応の爆発的なエネルギー》も意識しているそうですが、 「Gravity and Graceーmoment2023」 私はむしろ次の部屋に展示されている、こちらの作品からそれを感じました。こちらは、印画紙の上に直接ものを置き焼き付けるフォトグラムの手法を用いています。みなさんはどのように感じられるでしょうか。 記録映像の上映とドローイングの展示 《存在とは何か?》を追求するにあたって、氏は《空間との境界線となる身体の動き》に注目し、早くからダンサーとのコラボレーションに取り組み、その舞台美術も手掛けています。 続く部屋では、氏が今まで手掛けてきた舞台美術などを紹介しています。 「 Rain 」(2023)の記録映像 ゆったり椅子に座って、過去に上演された 「 Rain 」 (2023) 「 Futuristic Space 」 (2019) 「 freeplus × HEBE× 大巻伸嗣」 (2019)の記録映像を鑑賞出来るのは、かなりのお得感!そしてこれを観ると、...