【アート通信ー92:「大巻伸嗣 真空のゆらぎ」展】

 92回目のアート通信は、現在、六本木の国立新美術館にて開催中の「大巻伸嗣 真空のゆらぎ」展からです。

大巻伸嗣氏(1971-)は、そのキャリアを彫刻からスタートさせましたが、現在は、《存在とは何か?》をテーマにした空間をはじめ、ダンサーとのコラボレーション、舞台美術なども手掛けています。

「Gravity and Grace」(2023)

会場に入るとまず、巨大な空間とそこに鎮座し光を放つ不思議な壺に目を奪われるでしょう。

「Gravity and Grace」(2023)

紙のように軽やかに見えるこの壺は、実はステンレスで出来ており、そこには植物・鳥・人などが繊細に刻まれています。そしてそれらは壺の中から放たれる強い光で浮き彫りになり、影絵にもなっています。

「Gravity and Grace」(2023) 部分

よく見ると、巨大な葉っぱや花などが絡む、植物ジャングルの中を歩く人の列も見えますよ。

「Gravity and Grace」(2023)

会場では、床・壁・天井に映し出され刻々と変わっていく景色と、自分がそこに存在し何かに包まれている感じも、是非味わって下さい。

大巻氏は、この作品では、《エネルギーに過度に依存した今日の社会を批評し、原子力が生み出した未曾有の人災、核分裂反応の爆発的なエネルギー》も意識しているそうですが、

「Gravity and Graceーmoment2023」

私はむしろ次の部屋に展示されている、こちらの作品からそれを感じました。こちらは、印画紙の上に直接ものを置き焼き付けるフォトグラムの手法を用いています。みなさんはどのように感じられるでしょうか。

記録映像の上映とドローイングの展示

《存在とは何か?》を追求するにあたって、氏は《空間との境界線となる身体の動き》に注目し、早くからダンサーとのコラボレーションに取り組み、その舞台美術も手掛けています。

続く部屋では、氏が今まで手掛けてきた舞台美術などを紹介しています。

Rain」(2023)の記録映像

ゆったり椅子に座って、過去に上演されたRain(2023)Futuristic Space(2019)freeplus × HEBE×大巻伸嗣」(2019)の記録映像を鑑賞出来るのは、かなりのお得感!そしてこれを観ると、《空間との境界線となる身体の動き》とは、がよく分かります。

「Liminal Air SpaceーTime;真空のゆらぎ」(2023)

次の部屋では、先程の舞台美術にも使われていた手法を、実際に体感する事が出来ます。薄いポリエステルの布の膨らみや、ゆらめきが得体の知れない存在を感じさせたり、この布自体も変化して形(彫刻)となっていくエンドレスの動きは、いつまで観ていても飽きることはありません。


「大巻伸嗣 真空のゆらぎ」展 入り口付近

最後に、「大巻伸嗣 真空のゆらぎ」展は、なんと無料です!

既に色々な方がインスタなどに上げていますが、やはり現場に居合わせたからこそ感じられるものがあるので、タイミングが合えば是非、会場に足を運んでみて下さい。

国立新美術館にて12月25日まで開催。

「大巻伸嗣 真空のゆらぎ」

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