【アート通信ー25:ベルリン・集合住宅「ジードルング・ブリッツ」】

25回目のアート通信では、ドイツ・ベルリンの郊外ブリッツにある世界遺産の集合住宅、「ジードルング・ブリッツ」(1925-1931)をご紹介します。「ジードルング・ブリッツ」とは、ブリッツにある集合住宅、という意味で1931年にドイツ人建築家ブルーノ・タウト(1880-1938)の指揮のもとに建てられました。

田園地帯だったところを開発した「ジードルング・ブリッツ」。この手前の池も以前からあったそう。

「ジードルング・ブリッツ」の大きな特徴は、中心となる建物が自然の地形を生かして東に向かって馬蹄形に建てられている事!馬蹄形は幸運を引き寄せる形と言われており、それを意識したとも、丸く作る事で住民が皆、朝日を浴びられるようにしたとも言われています。
テラスの壁は曇りの日でも青空を感じられるように、と青色に塗られている

37.1ヘクタールの敷地には、その馬蹄形の住宅棟を中心に何棟もの集合住宅棟が放射状に建てられています。トータルで約1960戸あります。どの住宅にも庭があり、庭では畑を作ったり、子供の遊び場を作ったり、と思い思いにそれを利用しています。

庭は2階3階の人も使用できるように平等に区切られている

ではなぜ、このような住宅が建てられたのでしょうか?20世紀初めの首都ベルリンでは人口が集中し、住宅供給が追い付かなくなりました。中にはひどい住宅もあったそうです。その劣悪な環境を改善する為、政府が主導し沢山の労働者向け集合住宅が建てられました。1920年頃の事です。

なんとそのほとんどが当時の代表的な建築家によって建てられ、現在ベルリンではこちらをはじめ6つの集合住宅が世界遺産に認定されています!


各戸の窓、扉は整然と同じに配置されており、外観はシンプル。車の駐車の仕方も整然(?)

ここでタウトが強く心配ったのは労働者の為の住宅、<平等>だそうです。それはちょうど道路を挟んだ向かいに建っている別の建築家が建てた集合住宅と比較しても分かります。

「ジードルング・ブリッツ」の道路を挟んだ向かいの集合住宅。デザインも色も少しずつ違う。

「ジードルング・ブリッツ」にずっと住まれている方のお宅を見せて頂きました。手を加えたり、好みのインテリアを施したり、と丁寧に住まわれていてとてもそんな長い年月が経っているようには感じられません。丁寧に作られたものは丁寧に扱われる、そんな印象を受けました。

窓周りの演出がかわいい!


共同階段もモダン!

ところで、今回見学していてどこかで見た景色だな~と懐かしさを覚えました。それもそのはず、日本の高度経済成長期に建てられた集合住宅は、こちらをはじめこの時代のベルリンの集合住宅をだいぶ参考にしたそうです。

世界遺産に認定されたベルリン6つの集合住宅

*実はブルーノ・タウトは日本とも縁がある!
彼は日本に住んでいた事があり、熱海にある「旧日向邸」の地下室はタウトの作品です。こちらに興味がある方は下記を参考にして下さい。
【アート通信ー4:旧日向邸ブルーノ・タウト「熱海の家」】


このブログの人気の投稿

【建築巡礼ー5:アールトによるルイ・カレ邸】

【建築巡礼ー10:シャトー・ラ・コストChâteau-La-Coste】