【アート通信ー22:パブリックアート(六本木ヒルズ)】

六本木ヒルズ、と言って思い浮かべるものはなんでしょう?ニョキっとそびえ建つビル、展望台、オフィス、あるいは映画館?

実は、六本木ヒルズには〈66プラザ〉〈毛利庭園〉〈けやき坂通り〉〈さくら坂〉を中心に、たくさんの世界的アーティストによる屋外彫刻があります。そこで今回は、美術館ではなく六本木ヒルズの屋外にパブリックアートとして設置している屋外彫刻をご紹介します。


「ママン」 ルイーズ・ブルジョワ

まずはこちら、〈66プラザ〉に設置されている蜘蛛。六本木ヒルズの紹介映像でも良く見かけます。

この作品を作ったブルジョワ氏は、大嫌いな"蚊"を食べてくれる"蜘蛛"が好きでした。そしてその忍耐強い蜘蛛に、暴君の父に耐える母の姿を重ね「ママン」というタイトルを付けました。また、蜘蛛がお腹に抱えいる大理石の卵は、彼女の歪んだ少女時代の記憶から生まれた幸せな家族・愛への憧れの表現でもあります。

「薔薇」 イザ・ゲンツケン

そしてその側に設置されているのがこちらのイザ・ゲンツケン氏による「薔薇」です。まるでこの作品の為に造られた様な空間、〈ハリウッドビューティープラザ〉に設置されています。

個人的にはニューヨークのMOMA美術館で観た同じ作者の「薔薇」の方が印象深く感じています。設置の仕方の問題でしょう。

MOMA美術館の展示室から見た「薔薇」

MOMA美術館屋外から見た「薔薇」。周囲に何もなく作品が際立ている

パブリックアートではその設置の仕方がとても重要になってきます。そこで、ここからは六本木ヒルズでの『残念な例』と『良く感じられる例』に分けてご案内します。

例えば、〈けやき坂通り〉には9つのベンチの機能を兼ねたアートが設置されていますが、これらすべてはガードレールの柵寄りに設置されていて『残念な例』です。

「愛だけを…」 内田繁

例えば、内田繁氏による真っ赤な美しい流線型の作品。座ることも出来る素敵な作品なのに、ガードレールの柵が邪魔です。また、通りを背にしてここに座り、何を観たら良いのでしょう?

「この大きな~」 日比野克彦  通りを挟んで観ると、収集され忘れたゴミ袋の様に見えてしまう

個々の作品が良いだけに残念です。なぜ柵に寄せず建物と歩道の間のスペースに設置しなかったのか疑問です。そうすれば座って、ゆっくり道行く人や行き交う車を眺められ、作品も喜んだ事でしょう。

「静寂の島」 エットーレ・ソットサス

そこをいくと、〈レジデンスD〉と〈ゲートタワー〉の間に設置されているこちらの作品は実に良く考えられています。ガードレールの柵から離れているのである程度の空間は確保されています。塀か、石を積み上げた彫刻かと思い通り過ぎてしまう人もいますが、裏に回ってみてください。

「静寂の島」 エットーレ・ソットサス

囲われた空間に大理石のソファーのような椅子が設置されています。都会のど真ん中で突如、切り離し、剥き出しにされたプライベート、といった感じですが、囲われているのでなぜか落ち着きます。

一方、〈さくら坂〉には良い感じで作品が設置されています。例えば〈さくら坂公園〉に設置されているこちらの作品は、44体のロボットで構成されています。

「ロボロボロボ」 チェ・ジョンファ

もし、普通の公園にこの塔だけが立っていたら、唐突で違和感を覚えますが、こちらの公園はブロックの〝ビゴ”で作ったようなカラフルで楽しい公園なので、公園の雰囲気にとても合っています。そして〝ここから始まるよ〜!” というランドマーク的な役割も果たしているようです。*夜間にはロボットの眼や胸の辺りが光ります。

さくら坂公園(ロボロボ園)のカラフルな滑り台

チェ・ジョンファン氏の作品には十和田市現代美術館でも出会えます。こちらの作品に見覚えがある方も多いのでは?

「フラワー・ホース」 チェ・ジョンファ 十和田市現代美術館蔵

「モトクロス」 ジョンアナ・グラウンダー

こちらの作品は、道路から離れた歩道上の空間に設置されています。ただのベンチのようにも見えますが、観る角度や方向によって見え方が変わります。坂下から見上げるように見るとスピード感があり、タイトルが「モトクロス」なのに頷けますよ!

「繁留気球」 パトリシア・ウエキオラ 

〈レジデンスD〉の前に設置されているこちらの作品、気球の上の部分には側から伸びてきた木の枝が絡まっています。今は季節が悪いので作品が剥き出しになっていますが、春になったら芽吹いてきた美しい緑が気球を多い、夏にはベンチに座っている人に心地よい木陰をつくるでしょう。

ベンチから空を見上げる

ベンチに座り真ん中の穴から空を見上げると見慣れている景色とは違う景色を覗けます。

個人的には、この様なタイプの作品、生活に無理なく馴染み、愛されながら活用され、自然とも融合していける作品が好きです。

六本木ヒルズには屋外彫刻が全部で22あり、インフォメーションで貰える"六本木ヒルズタウンガイド"にはすべての位置が記されています。まだちょっと寒いですが、天気のいい日を選びマップ片手に散策してみてはいかがでしょうか。

`六本木ヒルズタウンガイド` ショップ情報の他、全体像も把握できる



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