【アート通信ー26:アートで街を活性化「ヴォワイヤージュ・ア・ナント」】
建築関係の建物に施された、LILIAN BOURGEAT による「Mètre à Ruban」(2013)常設 |
「ヴォイヤージュ・ア・ナント」は直訳すると「ナントへの旅」。国内有数の工業都市だっとナントが、主力産業の低迷からその主軸をアートに移行し見事成功に導いたメイン企画がこの「ヴォイヤージュ・ア・ナント」です。
「アートで街を活性化!」、これは簡単なようでなかなか成功せず、また継続も難しい事業です。そんな中で成功しているこの「ヴォイヤージュ・ア・ナント」とは、どのようなイベントなのでしょうか?
今から15年以上前に始まったこのイベントは、2012年からは毎年開催になっています。大きな特徴は、街路に引かれた緑のラインがすべて導いてくれる事!この緑のラインについていけば公共スペースに出品されているアート作品のみならず、歴史遺産から観光名所まで12kmをぐるっと一周出来ます。要所要所に地図付き解説看板があるので地図を持ち歩く必要はありません。身軽に散歩感覚で楽しめます!
この緑のラインについて行けば方向音痴でも迷う事はない! |
看板には緑のラインが引かれている場所の全体図と現在地、作品もしくは歴史遺産の説明が載っている |
更に緑のラインが導いてくれるのは彫刻などのアートに限らず、建築、デザイン、庭、にまで及びます。またその多くが恒久設置となり、街の財産となり利用されています。
Mercæur公園にあるKINYA MARUYAMAによる遊具を兼ねた「AIRE DE JEUX」(2014)常設。子供にとても人気がある! |
音:ROLF JOLIUS、建築:Mannyによる「AIR」( 2007, 2009 ,2011)常設。建物の周りに廻らされた金属から、鳥の鳴き声など自然界の静かなざわめきが聞こえてくる |
植物園の中にある、絵本作家Claude Pontiによる「巨人のためのベンチ」(2013,2014,2015)常設 |
LAURENT PERBOSによる「PING-PONG PARK」(2016)常設。こんな斜めの台で卓球が出来るのか?と思ったが、若者達はゲームを楽しんでいた |
会期中に開催される様々な催しも魅力ですが、会期後も住民はアップデートされた新鮮な街を楽しめます。また緑のラインは消されずそのまま残されます。もともとアートイベントによる観光客増加を狙った企画でしたが、このラインは歴史遺産や観光名所なども繋いでいるのが強みで、会期後の観光にも活用されます。
地面にラインを引く、という単純な発想がこのイベントを大きく成功へと導きました。そしてまた、そのラインに現代アートだけではなくこの街の歴史を築いてきた遺構や建物までを絡める事で、ごちゃまぜの複雑な面白さが生まれ、長い歴史の中での現在というものも見えてきます。これがこの企画の隠れたポイントだと私は思います。
COLLECTIF FICHTREによる「CANADIENNE」(2014) 常設。カフェとして使用されており、椅子が可愛い! |
2018年6月30~2018年8月26日です。ヴォワヤージュ・ア・ナント
ナントの観光に関しては下記をご参照ください。