【コルビジェ巡礼ー6:ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸】

ラ・ロッシュ邸(Maison La Roche 1923~1925)
コルビジェが従兄弟のピエール・ジャンヌレと共に事務所を始めて間もなくの頃、38歳の時の作品でパリにあります。

ラ・ロッシュ邸

ジャンヌレ(コルビジェの従兄弟)の家とラ・ロッシュの家が長屋状態にくっついていますが、公開されているのはラ・ロッシュの家の方なのでラ・ロッシュ邸と言われる事が多い様です。

ラ・ロッシュ邸とジャンヌレ邸部分(右側:現在はコルビジェ財団本部)

ラ・ロッシュ邸玄関前のパティオ
 
ラ・ロッシュ邸の玄関

玄関を入って左、来客に対応する空間の2階への階段

玄関を入ると、入り口の小ささと玄関ホールの大きさのギャップに驚きます。そしてこの空間を境に、左側が来客に対応する空間、右側がプライベートな空間へと分かれています。

ギャラリースペース

ラ・ロッシュ氏は、銀行家であり、現代美術のコレクターでもありましたので、自宅設計の条件に、コレクションの展示スペースを設ける、がありました。

よって、この2階(現地での数え方では1階)のギャラリースペースは、とても大事なスペースです。中に入ると奥から折り返す様にスロープが3階(現地の数え方では2階)に伸びています。スロープの反対側の壁面は絵画の展示スペースです。

ギャラリースペース入り口からスロープに向かう(当時の写真)
 
スロープを降りながらギャラリースペースを見下ろす(当時の写真)
 
玄関上の渡り廊下から外方向を見る

スロープ上のガラス窓より外を見る
 
屋上にも緑が一杯

外部に向かってはガラス窓を多く用いており、そこから周囲の緑がよく見え、住宅が密集しているパリとは思えません。

初めてギャラリースペースのスロープを見た時、青山スパイラルギャラリーのスロープを思い出しました。考えてみればコルビジェが携わった国立西洋美術館にもスロープはありましたから、スロープを移動しながら美術を鑑賞する、というアイデアはこの頃からなのでしょうか。
(コルビジェは「歩いて建築を感じる」と言っています。確かにスロープを踏みしめながら歩くと、階段を上がって行くのとは違う感覚、「建築を体で感じる」感覚はあります。)

更に今回は、スロープは舞台演出の様にも感じました。スロープを下りながら訪問客を迎える主人の姿は、主人公が舞台奥の高いところから登場するハイライトシーンの様です。

来客を意識した空間へ向かう階段、プライベート空間とを繋ぐ

四角い開口部がホールに向かって開いています。反対側のプライベート空間も同じ廊下やホールに向かって四角い開口部がポンポンと開いており、開口部からひょこっと人が現れて喋ると、まるで芝居を観ている錯覚に落ち入り、そこはまるで舞台装置の様でした。

ここ、ラ・ロッシュ邸を訪れたら周辺の散策もお勧めです。近くにはコルビジェと同じ時代に活躍した建築家ロベール・マレ・ステヴァンス(1886-1945)の自宅がある、マレ・ステヴァンス通りなどがあります。

マレ・ステヴァンス通り
 
マレ・ステヴァンス自邸。現在は個人物件だが、年に2週間ほど見学できる時期がある
 

Maison La Roche
8-10 square du Docteur Blanche 75016
 




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