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9月, 2016の投稿を表示しています

【アート通信-9:建物と現代美術の融合例】

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アンスティチュ・フランセ東京303号室 今回は、 建物と現代美術が見事に融合 した例として私も通学している神楽坂近くのフランス語の学校『 アンスティチュ・フランセ東京 (旧:東京日仏学院)』をご紹介いたします。 飯田橋と市ヶ谷の間、外堀通りから少し坂を 上がったところ、木々に囲まれた静かなアンスティチュ・フランセ東京の敷地 『アンスティチュ・フランセ東京』はフランス政府の公式機関で、朝から夜まで毎日開講の授業の他、フランスに関わる様々なイベントも開催しており、フランス文化を通して人と人の交流に寄与しています。 * イベントには通学生でなくても参加出来ます。 建築はル・コルビジェに師事し、近年その建物の保存で話題になった神奈川県立近代美術館など数々の名建築を建てたあの 坂倉準三 (1901-1969)によるものです。 そんな名建築にアートが施されたのは今から4年前の2012年の事です。 創立60周年の記念イベントでしたが、その時の事は今でも覚えています。 ある日学校行くと、学校全体がアートに乗っ取られていたのです! 303号室のRomain Erkiletlian<O.M.S.I.T.H> エアコンも配管もアートに呑み込まれている 303号室、Romain Erkiletlian<O.M.S.I.T.H> コックピットの様になった教室 皆、大騒ぎで隣の部屋、またその隣の部屋と次々に覗きに行きました。 105号室、Agathe de Baillliencourt<無題> 206号室、Pierre La Police<無題> 皆の反応は、 「これって一時的なものよね?」 「ずっとらしいよ~。いいじゃない、楽しくて!」 「え~落ち着かない・・・。」 と賛否両論でした。 当時の館長も 「教職員の間でも賛成ばかりではなかった、意義を受けたこともある。」 と言っています。 そして彼は 「‘議論をもたらす’それが大事な事だ。」とも言っています。 物議を醸しだすからこそおもしろい、色々な意見が出てくるから逆に分かり合える。 白い壁に自由に施された16人のフランス人アーティストの作品が、取り繕った人々の心を開き、感想や意見を言い合えるようにしたのなら、それはと

「リビングルーム / ミシェル・ブラジー」を観て

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銀座メゾンエルメスフォーラムで開催中の「Living roomⅡ/ Michel Blazy」が面白い! ミシェル・ブラジーはモナコ生まれのフランス人で、生きているものとアートをリンクさせ、生もの(殖えるもの・腐るもの・消えるもの・・・)のサイクルを独自の視点で表現するアーティストです。個人的には、2012年に Le Plateau(パリ)で彼の個展を観てからずっと気になっていました。 パリではもっと挑発的でしたがこちらはトウキョウ仕様?お行儀がいいです。 エルメスに合わせて視覚的に美しく整えて来たのでしょうか。 一つ一つの作品は観るだけでも楽しめますが、多くのメッセージが込められているのでまさにリビングルームとしてじっくり滞在するのがお勧めです。分からない事や疑問に思った事はスタッフの綺麗なお姉さんに質問すると親切に教えてくれますよ。 <かたつむりを放つ> 2009-2016 カタツムリの排出物で描かれた作品。 カタツムリが制作するのですから制作年月もかかる。 <かたつむりを放つ>2009-2016 の全体像   絵本の中に迷い込んだ様な不思議な世界 雨で濡れた壁を演出しているのはビニールの様だけど、ある自然素材。だから剥がれ落ちもする。(何の素材かは会場で確認してね^ ^) <珊瑚>2009 チョコレート・バニラクリーム・卵で出来た絵。ネズミがかじった跡もそのまま絵の一部になっている。   <オーレリーの靴>2016 いつも草を踏みつけているスニーカーが今度は草に食べられてしまう? <ハルオ>2016 ハルオさんのフェロモンが出る椅子。‘私はいい匂い’と思ったけど、スタッフのお姉さんは別の方がいいと言っていた…。(男性バージョンがもう一脚あります<フユヒコ>だったかな?女性バージョンの<アヤコ>もあります。)   日本では1999年の世田谷美術館・他「パサージュ:フランスの新しい美術」や、2011年の杜美術館「フレンチ・ウィンドウ」でも彼の作品が紹介されてきましたが、個展は今回が初めてだそうです。 銀座メゾンエルメス ~おまけ~ ご参考までに、以下は私が2012年にパリのLe Plateauで観たミッシェル・ブラジーの作品です。 

『ジュリア・マーガレット・キャメロン展』を観て

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中庭から入る三菱一号館美術館 行こう、と思いながら会期終了間近になってしまった三菱一号館美術館で開催されている『ジュリア・マーガレット・キャメロン展』。 写真の技術が確立して間もない1863年より撮影を始めた彼女の写真からは記録ではなく、 独特の世界を感じます。 実在の人物をモデルに 寓意的な主題や 歴史的人物を撮影し、その行為 は不自然で人為的だと同時代の人々に揶揄されました。 「修道士ロレンスとジュリエット」1865年  彼女は何をしたかったのでしょうか?何を求めていたのでしょうか? 考えなら鑑賞を進めました。 そして辿り着いた私の答えは 「彼女は絵を描きたかったのでは?」 です。 幼い頃より絵画に親しみ、教養もあった彼女が子育てを終えて手にした「カメラ」は、自分の頭の中に湧き上がってくる構図や世界を描き出すのに好都合な道具だったのでは? カメラがあればデッサンの修行をしなくても、協力してくれるモデルと共に自分の中に湧き上がる世界を描き出せる。 彼女にとって、カメラはまさに魔法の道具だったのではないでしょうか? 現代美術では写真を表現手段の1つとして使用しますが、あの時代、写真機というものが生まれて間もない頃にそれを実行に移したのはとても型破りな行動です。 女性独特の概念にとらわれない大胆さゆえ、とも言えるかもしれません。 とは言え、当時の写真撮影や現像はとても重労働だったので、彼女の並外れたバイタリティーがあったからこそなのは間違いありません。 人がやっていない突拍子もない程の事をやるといつの時代でも批判にさらされるのですね^^; 建物自体が門の様なブリックススクエアアネックス、美術館に通じる奥の中庭は憩いの場 三菱一号館美術館

現代美術を建築と共に押し上げた人:クトュリエ修道士

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『CASA BRUTUS №197』 表紙 『Casa』はいつも面白いですが、今回はこの号↑のこのページ!↓に 飛びつきました! 『CASA BRUTUS №197』 91ページより 以前 【コルビジェ巡礼―3:ラ・トゥーレット修道院】 でも触れましたクトュリエ修道士。 「決められた形ではなく、美しく新しいデザインの建物に祈り・修道生活を一致させたい。」 とル・コルビジェにラ・トゥーレットを依頼したクトュリエ Couturier 修道士の事がずっと気になっていました。 余り知られていませんが彼が居なったら 〔ロザリオ礼拝堂〕も〔ロンシャンの礼拝堂〕も〔ラ・トゥーレット修道院〕も今の姿では存在していなかったはずです。   Marie-Alain Couturier(1871-1954 ) フランス、ロワール地方生まれ。 もともと画家志望で、モーリス・ドニらが指導した〈アトリエ・アール・サクレ〉の第一期生。 聖職者となった後も「宗教芸術に同時代の芸術を取り入れるべきだ」と主張して多くの芸術家と交流。 〔プラトー・ダッシーの教会〕〔オーダンクール・サクレクール教会〕〔ロザリオ礼拝堂〕〔ロンシャンの礼拝堂〕〔ラ・トゥーレット修道院〕の創設の際アーティストへの発注依頼に尽力。   ウィキペディアなどでも情報は得る事が出来ますが、この号では貴重な写真などと共に10ページに渡り解説されていて生身の彼に触れられた気がしました。 特に床に置いた教会の図面を見つめる彼の姿は、より踏み込んだ祈りを求め苦悩する修道士の姿にも、建築家もしくは芸術家の姿にも見えて印象的でした。  『CASA BRUTUS №197』 94ページより  他のページも旬のアートがいい感じでかいつままれていてお奨めです。   *ご参考までに マチスの教会‘Chapelle du Rosaire(ロザリオ礼拝堂)’     【コルビジェ巡礼ー2: ロンシャン礼拝堂】 【コルビジェ巡礼ー3 : ラ・トゥーレット修道院】     

【アート通信-8:表参道のリュクスなアート空間】

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前回は 銀座のリュクスなアート空間 として、企業が文化支援として運営しているアートスポットをご案内しました。 その時、同じコンセプトの表参道の「エスパス ルイ・ヴィトン東京 」をご案内出来なかったのがとても心残りだったので、こちらをご案内いたします。 もちろんこちらも無料です^^。 エスパス ルイ・ヴィトン東京 ファッションブランド ルイ・ヴィトン による運営で2011年に誕生しました。 ルイ・ヴィトン表参道ビルの7階にあります。  青木淳による建物は、ルイ・ヴィトンのトレードマークとも言える旅行用トランクを積み上げた様なデザイン(竣工:2002年) 7階へは1階入り口を入って右側にあるエレベーターで上がります。エレベーターホールもヴィトン柄 現在はピエール・ユング Pierre Huyghe による「 THE HOST AND THE CLOUD 」が開催中です(2017年1月9日まで)。 こちらの写真作品の他、奥の扉から入るとビデオ作品が2点上映されている 不在の主体の心を巡る旅を追想する作品で、ちょっと難解ですが7階からの眺望を楽しむ為や、ちょっと時間が空いた時の気分転換に訪れてはいかがでしょうか。 *今回の会場構成はビデオ作品用なので眺望は一箇所に限られます。 通常は展示と共に7階からの眺望を3方向に楽しめます。  現在の展示では入口近くのスペースからのみ眺望が楽しめる これまで「エスパス ルイ・ヴィトン東京」では新進作家や世界で活躍中の注目すべき作家の紹介をして来ました。 そして毎回製作されるハードカバーのカタログは以前も触れましたが( エスパス ルイ・ヴィトン )、称賛に値するものでした。 パリに ルイヴィトン財団美術館 Fondation Louis Vuitton (2014)が出来た事で一定の役割は終えたとの判断なのでしょう、今後はルイヴィトン財団美術館の所蔵作品を紹介していく方針だそうです(ルイヴィトン財団美術館については 【建築巡礼-3:フランク・ゲーリーの建築】 で触れています)。 ヴィトンの前へ前へと進んできた姿勢がちょっと後ろ向きになったようで残念ですが、財団の所蔵作品をパリに赴かなくてもただで見せてもらえると思えば良いでしょうか。 そうそう、

エスパス ルイ・ヴィトン

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‘いつか途切れるんだろうなぁ〜’と思いながら続いている[エスパス ルイ・ヴィトン]通い。 毎回頂けるカタログの冊数もかなりになりました。 内容充実のハードカバーのカタログにはかなりお金もかかっていると思われる・・・ 最近は‘ヴィトンでも予算不足なのかしら?’ と思える合同企画なども増えましたが、やはり今回も行ってみて良かったです。 無理かと思いながら最終日に滑り込み、「le fil rouge」を拝見しました。 日にちがたった今でも思い出して、しみじみ"良かった…"と噛み締めています。 特に感動したのは、Tatiana Trouvéの《250 Points Towards Infinity /2009》です。 垂れているはずの測鉛線が何かの力で斜めに引っ張られている不思議、それは人と人の引き寄せ合いである様で、すれ違いである様で、神秘的です。 Tatiana Trouvéの《250 Points Towards Infinity /2009》 種明かしをしてしまえば、引く力は磁石なのですが、メイキング映像ではそれが緻密な計算に基づく作業である事が分かります。 次回の展示も期待しています。   エスパス ルイ・ヴィトン: http://espacelouisvuittontokyo.com/ja/