【アート通信ー87:「サムライのおしゃれ」展】
87回目のアート通信は、現在、静嘉堂@丸の内で開催中の「サムライのおしゃれー印籠・刀装具・風俗画ー」展からです。
侍とは、平安時代頃より生まれた武士集団で、鎌倉・室町・安土桃山時代を経て、支配層としての地位を確立していきます。そして戦が無くなった江戸時代には余裕も生まれ、自身の刀装・衣装に工夫を凝らすようになりました。
印籠の写真で飾られた第2章の入り口 |
今回の展覧会では、第2章で印籠、第3章で刀装や当時のファッションや文化について紹介しています。
特に276点にも及ぶ所蔵品から、40点を厳選し展示している印籠コーナーは圧巻です!名将軍・大名が好んだお気に入りの名工ごとに展示されており、その精巧な技術、美しさには誰もがため息が漏らす事でしょう。
*印籠とは、腰に下げてその中に常備薬を携行する小さな入れ物。それが江戸時代に大きく発展し、やがて本来の用途を離れ、男性のおしゃれ必需品になっていきます。
古満巨柳「龍虎蒔絵・堆朱鞘入印籠」(江戸時代18世紀) |
吉村寸斎「木目地馬蒔絵螺鈿印籠」(江戸時代19世紀) |
原羊遊斎「雪華蒔絵印籠」(江戸時代19世紀) |
こちらの印籠を遠目で見た時、ヴィトン柄 ?!と思ってしまいましたが、江戸時代とても人気のあった古河藩土井家お抱えの蒔絵師、原羊遊斎(はらようゆうさい)氏による雪の結晶模様の印籠で、藩主の贈答に用いられました。
実は、古河藩主・土井利位(1789−1848)は、なんと20年にわたり、顕微鏡を使い雪の結晶を観察し「雪華図鑑」を出版した人物で、それもあり、雪華模様は庶民の間でも大流行したそうです。
「四条河原遊学図屏風」(17世紀)主に左隻 |
この「四条河原遊学図屏風」の隣には、「江戸名所図屏風」(17~18世紀)も展示されているので、当時の東西の文化を比較してみるのも面白いですよ。
「サーベル形儀仗刀」後藤象二郎拝領(1868) |
最後になりましたが、実は、この展覧会にはサプライズがあります!
展覧会の準備中に偶然、世田谷の静嘉堂で長年行方不明になっていたお宝、ビクトリア女王から賜ったサーベルが発見され、今回の展覧会の第1章に展示されています。「サーベル形儀仗刀」刀身表面 銘部分 |
これに対し、英国ビクトリア女王は護衛に対する感謝のしるしとして、後藤・中江両氏にサーベルを送ったのでした。
中井氏に贈られたサーベルは、京都国立博物館に寄贈された事が分かっていますが、後藤氏に贈られたサーベルは現在まで所在不明でした。静嘉堂文庫の創設者である岩崎彌之助氏と後藤氏の長女早苗氏の結婚により、彌之助氏にサーベルが継承されたのでしょう。
このサーベルには、 “1868年の襲撃事件での奮戦を祈念し、後藤象二郎に送る”と記されています。立派な箱や英国とやりとりした手紙も一緒に展示されており、貴重なお宝です。
「サムライのおしゃれー印籠・刀装具・風俗画ー」展は、静嘉堂@丸の内にて、7月30日(日)まで開催中。
*写真は全て許可を得て撮影しています。