【アート通信ー85:「マティス展」】

 85回目のアート通信は、現在、東京都美術館で開催中の「マティス展」からです。

日本初公開の『豪奢、静寂、逸楽』(1904) オルセー美術館寄託 を用いたポスター

マティス、アンリ・マティス(1869-1954) は日本でも人気のある画家ですが、彼の名を冠した回顧展は、2004年に国立西洋美術館で開催されたの「マティス展」より、なんと約20年ぶりです!

『自画像』 (1900)  ポンピドゥー・センター蔵

会場ではまず、彼の自画像が私たちを迎えてくれます。マティスの写真を目にする事はありますが、自画像は珍しいのではないでしょうか?

『読書する女性』(1895)   カトー=カンブレジ・マティス美術館寄託

その後は、1章: フォーヴィスムに向かって1895-1909から始まり、ほぼ時代ごと8章に分けて作品紹介されていきます。これによりマティスという芸術家をトータルに理解出来る絶好の機会となり、今まで各自が待っていた彼のイメージが変わるかもしれませんよ!

『白とバラ色の頭部』(1914)   ポンピドゥー・センター蔵

2章: ラディカルな探求 1914-1918では、作家がさまざまな方法で新たな展開を模索をしていた事がよく分かります。

「ジャネットⅣ」(1911) ポンピドゥー・センター蔵 と展示風景

続く3章: 並行する探求ー彫刻と絵画 1913-1930。マティスが彫刻に取り組んだ事はあまり知られていませんが、それもそのはず、彫刻について彼は「自分の考えを整理するために取り組んでいる」と言っており、彫刻制作を通して、出くわした壁を乗り越えていったようです。

『赤の大きな室内』(1948)  ポンピドゥー・センター蔵


『黄色と青の室内』(1946)  ポンピドゥー・センター蔵

その後の、4章: 人物画と室内画 1918-19295章: 広がりと実験 1930-1937を経て、6章:ニースからヴァンスへ 1938-1948では、赤、オレンジ、黄色、ブルーといった鮮やかな色合いを用いた、お馴染みの作風へと転換しています。

文芸誌の装丁の展示風景

またこちらでは、彼が手がけた文芸誌の装丁の紹介も。実はこの頃、彼は病気療養が長引いてほとんどの時間をベットの上過ごす事になり、そんな時に出会ったのが装丁でも用いられている〈切り紙絵〉なのです。

切り紙絵と最晩年の作品 1930-1954 での展示風景

7章: 切り紙絵と最晩年の作品 1930-1954では、ハサミで切ったというより、まさにハサミで描いた作品が紹介されています。

こうして観てくると、彼の人生において、彫刻切り紙絵、が彼の作品に大きな影響を及ばしたように感じます。

ロザリオ礼拝堂の上映風景(上映時間約5分)

そしていよいよ最終章、8章: ヴァンス・ロザリオ礼拝堂 1948-1951では、資料紹介の他、5メートルの巨大スクリーンに4Kの高画質で撮影されたロザリオ教会とその内部の様子、光の移り変わりも丁寧に映し出されていて圧巻です!

ロザリオ礼拝堂は通常内部撮影禁止ですし、現地まで赴くのはなかなか大変なので、彼の作品の集大成と言われている教会をここでこうして鑑賞出来るのはありがたい事です。


展覧会で実際に作品に触れて楽しんでいただく為にざっとご紹介しましたが、展示されている作品は155点!展示スペースも広いのでゆったり鑑賞出来ると思います。

*写真撮影は全て許可を得ています。


私が以前ロザリオ教会を訪問した際の紹介は以下より、


「マティス展」は2003年8月20日(日)まで開催。わずかな当日券以外は全て事前予約制。詳細は以下よりご確認下さい。

#マティス展 #東京都美術館


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