【アート通信ー75:「東京都美術館」】

 75回目のアート通信は、東京・上野の「東京都美術館」からです

今回は展示内容ではなく、美術館そのものが持っている魅力をご案内します。

東京都美術館敷地入り口付近

東京都美術館は、日本初の公立美術館東京府美術館」として1926年に開館しました。その後、老朽化により1975年に前川國男(1905-1986の設計で現在の建物に建て直されました。

また、収蔵品の大部分は「東京都現代美術館」の開館(1995年)に伴い移管されたので、都美術館は収蔵品を持たず企画展や公募展に使用されています。


木々に埋もれるように建つ東京都美術館

都美術館は公園の中という立地の為、規制により建物の約60% は地下にあり(地下3階地上2階建て)、周りの環境に上手く溶け込んだ美術館となっています。


建畠覚造「さ傘( 天の点滴をこの盃に)」(1973)

展示室の入り口が地下にある為、すぐエレベーターで下に降りてしまう人が多いようですが、屋外には彫刻が10点展示されているのでじっくり鑑賞してみるのもいいのではないでしょうか。


「レストラン ミューズ」のカウンター席は1人でも利用しやすい

彫刻鑑賞の後は、1階の「カフェ アート」や2階の「レストラン ミューズ」で休憩が出来ます。特に2階の「レストラン ミューズ」はスペースも広く、公園の緑に囲まれてゆっくり過ごせるのでお薦めですよ!


朝倉文夫「佐藤慶太郎像」(1926

「カフェ・アート」の隣には「佐藤太郎記念 アートラウンジ」があり、他の美術館の資料などの情報収集にも便利です。

ところで、佐藤太郎氏(1868-1940)とはどんな人物なのでしょうか?北九州の石炭商で、いつでも美術に触れられる場が欲しい、となんと「東京府美術館」の建設資金の全額!100万円(現在の40億円相当)を寄付した方なんです。そんな彼に敬意を表してラウンジに佐藤氏の名前を冠しています。


入り口入ってすぐ、ミュージアムショップ前の天井

今度は展示室への入り口、地下1階から見ていきましょう。入り口を入り、上を見上げると、アーチ形のかまぼこ天井とペンダントライトに目が留まります。

これらは美術館設計者、前川氏拘りのデザインで、ペンダントライトは都美術館の為に作られたオリジナルデザイン照明です。かまぼこ天井は照明の光を優しくしていますね。


チケットカウンター側の階段

前川氏のデザインへの拘りは、他にも随所に見られます。例えば、チケットカウンター側の階段を上から見下ろすと三角形が見えます。このおむすび型は前川氏が好んだ形で、他にも館内の色々なところで見つけられるので、探してみるのも面白いですよ!



カラフルなスツール

公募棟 休憩スペース

随所で見かけるこちらのカラフルでリズムカルなスツールと椅子。こちらも前川氏によるデザインで、遊び心を感じます。


暗くなってからの東京都美術館の外観(部分)

そして是非見てもらいたいのが、暗くなる間際の建物外観。この時にしか見られない、なんとも幻想的な景色に会えます。一面ずつ違う壁の色がガラス越しにくっきり浮かび上がり、まるでカラー折り紙のコラージュを見ているかの様です。


同じ方向から見た昼間の東京都美術館の外観(部分)


注目ポイントは他にもまだ沢山あります。

都美術館では、日本の建築界を引っ張ってきた前川國男氏の価値ある建物をより知ってもらう為に、「建築ツアー」を開催しています。事前申込制で参加費は無料。興味のある方は参加してみてはいかがですか?

 HPより詳しい情報を入手出来ます。




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