【アート通信ー53:「和巧絶佳」パナソニック汐留美術館」】

 53回目のアート通信は、現在パナソニック汐留美術館で開催中の「和巧絶佳」展についてです。

和巧絶佳(わこうぜっか)は、日本の伝統文化「和」、手わざ「巧」、美しさ「絶佳」を組み合わせた造語

この工芸展の大きな特徴は、出品作家を1970年以降に生まれた若手に絞っているところです。1970年代以降で若手?伝統技術を習得をした上で自身の表現が出来るようになる年月を考えると、やはりこのぐらいの年月はかかるでしょう。

展覧会の感想を一言で言えば、 ‘若者、凄い!’ですでは、どんなところが凄いのかご案内していきましょう。

舘鼻則孝Camellia heel-les Shoes」(2018

美しいクリスタルを散りばめた靴。でもよく見るとヒールがありません。そう、ヒールレスシューズです。江戸時代のファッションリーダーとも言える花魁が履いていた高下駄を、現代に置き換え生み出したデザインだそう。

舘鼻氏は、伝統の形や技を現代のものに消化させるセンスがずば抜けている様に思います。そんなところがレディー・ガガの目に留まったのでしょうか。彼女の専属デザイナーにもなりました。


 深堀隆介「四つの桶」(2009)

金魚すくい?いえいえ、こちらは桶以外は全てアクリル絵具と透明樹脂で出来ています。金魚の表情もそれぞれ違い、まるで泳いでるかの様。深堀氏は人間が人工的に‘金魚’を作り上げた様に、自身がイメージした架空の魚を描いているのです。

池田晃将Neoplasia-engineering」(2016

ピラミッドの様な三角形に数字が浮かぶこちらの作品は、池田晃将氏の螺鈿を用いた作品です。螺鈿とは、漆塗りなどの上に貝殻で作られた模様は埋め込んでいく技法で、通常は花や鳥などがモチーフになります。しかし池田氏は、デジダル数字を貝殻から切り出し埋め込んでいく、という気の遠くなる様な作業を繰り返します。デジダル時代の氏にとって、花や鳥よりこの方が自然なのだそうです。

新里明士「光器」(2020

まさに光を宿している様な器です。こちらは素焼きした磁器に小さな穴を開け、透明の釉薬をかける蛍手(ほたるで)という技法を使用しています。通常より沢山の小さな穴を連ねて、点描の様に浮かび上がらせた模様は繊細で、まるでレースの様です。

山本茜 源氏物語シリーズ第四十帖「御法」(2013

幻想的なこちらの作品は、山本茜氏が開発した「截金ガラス」という技法を用いています。截金(きりかね)とは、金箔を用いて描く技法で、主に仏画などに使用されてきました。氏はこの截金(きりかね)に魅せられ、その美しさを半永久的に残す方法として、溶かしたガラスに封じ込める、という独自のスタイルを開発しました。それは、2次元が3次元になったばかりか、光の屈折も加わり不思議な世界を生み出しています。


以上5人の作家の作品をご案内しましたが、「和巧絶佳」への出品作家は全12名。他の作家、作品は是非会場で!9月22日(火)まで開催しています。


「パナソニック汐留美術館」脇の「旧新橋停車場跡

「パナソニック汐留美術館」は、その名の通りパナソニック(旧ナショナル)が運営しており、会社ビルの4階にあります。ちなみに地下1、2階はショールーム(コロナ 渦の折、現在は予約制)、1階はリノベーションミュージアム(入館無料)です。美術館の所蔵作品としては、ジョルジュ・ルオーの油彩や版画が有名で、企画展は生活・住居に関わるものが多いのが特徴です。

こちらのパナソニック汐留美術館を訪れたら、是非こちらもチェックしたい!美術館の隣、2003年に復元された鉄道発祥の地「旧新橋停車場跡」です。建物の中は鉄道歴史展示室になっていますよ!









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