【アート通信ー52:世田谷美術館「作品のない展示室」】

第52回目のアート通信は、世田谷美術館にて開催中の「作品のない展示室」のご案内です。

「作品のない展示室」入り口付近
 
この企画展は、コロナ禍により海外からの作品の借用が難しくなった今、展示室そのものを観てもらおうというもので、無料です。展示室だけ観てもつまらない、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、逆に滅多にない体験が出来ますよ!

床のデザイン

何度も訪れている人でも、天井はこういう形だったんだ、床にこんな模様があったんだ、と普段は気に止めなかったデザインの細部に目が向き、新しい発見があります。


絵のような窓からの景色

窓からの景色はまるで絵のよう!公園の中の美術館だからこそ味わえる景色です。座ってじっくり鑑賞するも良し、自分を絵の中に納めてみるも良し。


展示室


作品が無いと意外ですが、展示室は狭く感じます。今まで展示マジックにかかっていたんですね。


最後の部屋では過去に美術館で行われたパフォーマンスの記録映像が上映されています。無料なのでちょっと得した気分!2020年8月27日までの開催。





レストランに続く回廊


世田谷美術館は、38万㎡の広さを誇る都立公園、砧公園内に位置し、内井昭蔵氏(1933- 2002)の設計で1986 年にオープンしました。彼は美術館を設計するにあたり、〈生活空間としての美術館〉〈オープンシステムとしての美術館〉〈公園美術館としての美術館〉をコンセプトに、2階建の低層設計で、展示室に多くの窓を設けました。


教会内部のような廊下

入口の棟、企画展示室の棟、レストランの棟が回廊で繋がっています。内井昭蔵氏の祖父はロシア正教の司祭で、ニコライ堂などの聖堂建設に尽力した人です。教会で育った彼の建物デザインには、その影響かと思える箇所が、回廊以外にも何箇所かあります。そういったところを見つけて歩くのも楽しいですよ。


美しいカフェのテラス席


レストランやカフェへは、公園からも直接入る事も出来ます。展示鑑賞と関係なく利用出来る設計で、レストランはイベントや結婚披露宴に使われたり、広いオープンエアもあるカフェは子供連れでも気楽に利用出来るなど、世田谷美術館が日常生活の中で人々に親しまれるのにもひと役買っています。

世田谷美術館


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