【アート通信ー39:クリスチャン・ボルタンスキー】
39回目のアート通信は、現在六本木の「国立新美術館」で大回顧展が開催されているフランスの現代美術家クリスチャン・ボルタンスキー氏(1944-)のご紹介です。彼は映像やオブジェ、そして近年は光、音、匂いといった五感に訴える作品を制作しており、現代、世界で最も重要な現代美術家の1人と言えるでしょう。
彼の作品テーマは、〈生と死〉 〈存在と不在〉 〈記憶〉といったものがほとんどで、そこには常に 〈死〉 のイメージが付きまといます。ボルタンスキーが生まれた時、一家が住んでいたパリはナチスの占領下にありました。父親は改宗ユダヤ人だったので、密告・摘発を恐れ、離婚後に家を出たかのように偽装し1年半も床下に隠れていたそうです。彼は、「その経験と、終戦後に聞いた迫害・虐殺の話が自身に大きな影響を与えた。」と言っています。そして「家族から離れる不安感から初めて1人で外出したのは18歳の時だった。」と言うのですからその影響の大きさは計り知れません。
現在日本で彼の作品を常設で観られるのは以下の3箇所です。
新潟県十日町市に存在する「最後の教室」(2006- *ジャン・カルマンと共同制作)は、廃校となった校舎(旧東小学校)を丸ごと使ったインスタレーション作品で、様々な方法で〈人の不在〉を表現しています。
*不定期開館。2019年8月にツアーでの開館あり。詳しくはHPで確認を。
また、香川県の豊島には世界中から集めた心臓音を聞ける小さな美術館「心臓音のアーカイブ」(2010-)があり、自身の心臓音を録音する事も出来ます。
同じく香川県豊島の静かな森には「アニミタス(ささやきの森)」(2016-)があります。はためく透明の短冊には訪れた人が記載した大切な人の名前が、風鈴の音色と共にはためいており、そこはまるで永遠の時を刻む聖地のようです。
「心臓音のアーカイブ」「アニミタス(ささやきの森)」は共に、新たに心臓音や風鈴がが加わっていく更新中のプログラムですが、どの作品も今そこに居ない誰かを意識しており、彼はその気配を伝えようと様々な方法を駆使し表現しています。それは忘れられるという事への抵抗にも感じ取れます。
「国立新美術館」で開催中の大回顧展「クリスチャン・ボルタンスキー -Lifetime-」では彼の一番最初の作品(これが衝撃的!)から2019年の最新作までを万遍なく観る事が出来るばかりか、彼自身が展示会場をコーディネートしているので、全体を一つの作品として楽しむことも出来ます。
また、渋谷・表参道の「ルイ・ヴィトン」7階にあるギャラリー「エスパス ルイ・ヴィトン」では、「アニミタス(ささやきの森)」とイスラエルの死海のほとりに設置された「アニミタス(死せる母たち)」(2017)の映像作品を観賞出来ます。日の出から日没までをワンカットで連続撮影されているので、訪れるタイミングにより見える景色が違うのもポイントです。
理屈を頭に入れて分かった気になるより、作品の中に入り体感するのが一番いいと思うので、この機会に是非会場に足を運んでみたらいかがでしょうか。ボルタンスキーも、「作品を見るのではなく、作品の中にひたってほしい。全てを理解する必要はない。何かが起きているということを感じて欲しい。」と言っています。
国立新美術館「クリスチャン・ボルダンスキー-Lifetime」2019年6月12日〜9月2日
エスパス ルイ・ヴィトン「ANIMITASⅡ」2019年6月13日〜11月17日
現在「国立新美術館」にて出品中の「スピリット」(2013) |
彼の作品テーマは、〈生と死〉 〈存在と不在〉 〈記憶〉といったものがほとんどで、そこには常に 〈死〉 のイメージが付きまといます。ボルタンスキーが生まれた時、一家が住んでいたパリはナチスの占領下にありました。父親は改宗ユダヤ人だったので、密告・摘発を恐れ、離婚後に家を出たかのように偽装し1年半も床下に隠れていたそうです。彼は、「その経験と、終戦後に聞いた迫害・虐殺の話が自身に大きな影響を与えた。」と言っています。そして「家族から離れる不安感から初めて1人で外出したのは18歳の時だった。」と言うのですからその影響の大きさは計り知れません。
現在「国立新美術館」にて出品中の「発言する」(2005)
人型のオブジェは死後の世界への番人で、傍を通ると「(死ぬ時)怖かった?」など、問いかけてくる
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現在日本で彼の作品を常設で観られるのは以下の3箇所です。
新潟県十日町市に存在する「最後の教室」(2006- *ジャン・カルマンと共同制作)は、廃校となった校舎(旧東小学校)を丸ごと使ったインスタレーション作品で、様々な方法で〈人の不在〉を表現しています。
*不定期開館。2019年8月にツアーでの開館あり。詳しくはHPで確認を。
また、香川県の豊島には世界中から集めた心臓音を聞ける小さな美術館「心臓音のアーカイブ」(2010-)があり、自身の心臓音を録音する事も出来ます。
島の外れの浜辺に建つ小さな建物で展開されている |
浜辺はこの世ではないかのような静かさと美しさ。この景色までを作品と捉えて良いのでは? |
同じく香川県豊島の静かな森には「アニミタス(ささやきの森)」(2016-)があります。はためく透明の短冊には訪れた人が記載した大切な人の名前が、風鈴の音色と共にはためいており、そこはまるで永遠の時を刻む聖地のようです。
「アニミタス(囁きの森)」(2016-)映像作品より |
「心臓音のアーカイブ」「アニミタス(ささやきの森)」は共に、新たに心臓音や風鈴がが加わっていく更新中のプログラムですが、どの作品も今そこに居ない誰かを意識しており、彼はその気配を伝えようと様々な方法を駆使し表現しています。それは忘れられるという事への抵抗にも感じ取れます。
「国立新美術館」で開催中の大回顧展「クリスチャン・ボルタンスキー -Lifetime-」では彼の一番最初の作品(これが衝撃的!)から2019年の最新作までを万遍なく観る事が出来るばかりか、彼自身が展示会場をコーディネートしているので、全体を一つの作品として楽しむことも出来ます。
また、渋谷・表参道の「ルイ・ヴィトン」7階にあるギャラリー「エスパス ルイ・ヴィトン」では、「アニミタス(ささやきの森)」とイスラエルの死海のほとりに設置された「アニミタス(死せる母たち)」(2017)の映像作品を観賞出来ます。日の出から日没までをワンカットで連続撮影されているので、訪れるタイミングにより見える景色が違うのもポイントです。
理屈を頭に入れて分かった気になるより、作品の中に入り体感するのが一番いいと思うので、この機会に是非会場に足を運んでみたらいかがでしょうか。ボルタンスキーも、「作品を見るのではなく、作品の中にひたってほしい。全てを理解する必要はない。何かが起きているということを感じて欲しい。」と言っています。
国立新美術館「クリスチャン・ボルダンスキー-Lifetime」2019年6月12日〜9月2日
エスパス ルイ・ヴィトン「ANIMITASⅡ」2019年6月13日〜11月17日