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7月, 2016の投稿を表示しています

【建築巡礼ー(番外編):バーゼルの街】

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今回の旅は建築を巡る旅でしたから沢山の建物を観ました。 初めて訪れたスイスの街バーゼルには、徒歩圏に有名建築家の作品がいっぱいあり、 特にここに事務所がある ヘルツォーク&ムーロン H&Mが手掛けた建物は多くありました。 展示場 Messe Basel New Hall, Herzog & de Meuron, 2013   信号扱所 Central Signal Box, H&M, 1999 Roche Building 1,H&M, 2015 また、こちらはバーゼル郊外になりますがミュンヘンシュタインMünchensteinにある シャラウガー美術館 Schaularger, H&M ,2003 も変わった建物でした。 その他、 マリオ・ボッタ Mario Bottaによるティンゲリー美術館 Museum Tinguelyなど、沢山の近代建築家の建物があり 建築好きには堪らない街だと思います。 ティンゲリー美術館 Museum Tinguely ,Mario Botta,1996 また、そういった近代建築家の作品とは対照的な、ロマネスク様式とゴシック様式が混在する大聖堂バーゼル・ミュンスターや、城壁、 旧市街の町並みもとても魅力的でした。       大聖堂 Basel Minster   バーゼルの旧市街 城壁 そんな中で私が妙に心惹かれたのはこの街の 壁絵 です。 以前、南仏のモンペリエを訪れた際、壁面一面がだまし絵になっているビルが沢山ありそれはそれで面白いと思いましたが、ここのは地味。 地味だけどとてもセンスが良く、 お国柄でしょうか 何より街に馴染んでいます。     お菓子屋さんの壁にビスケット、焼き立てで飛び出しちゃった? カフェの壁にアリ、よほど甘いお菓子を提供している様で・・・ ホテルの壁に魚・・・魚料理がお得意? ペイント屋さんかな? その他いろいろありました。 これだけ街に一杯あるという事はこの土地に壁絵の歴史があるのか、職人が多いのか、理由が気になります。 市庁舎の壁絵   16世紀に建てられた市庁舎にも当時描かれた Hans Bock によ

【建築巡礼ー10:シャトー・ラ・コストChâteau-La-Coste】

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シャトー・ラ・コスト Château-La-Coste 、アートと建築とワインが結びついた場所。 敷地内に入りブドウ畑を眺める 南仏エクス・アン・プロヴァンスの傍、ル・ピュイ=サント=レパラード Le Puy-Sainte-Réparadeにあり 75,000人が毎年訪れています。 ワイン畑や野菜畑を含む200haの広大な土地に、世界中から招かれた現代美術家の作品と建築家の作品が点在している、言わば野外美術館です 。 2011年より有料で公開されています。 Layrence Neufeldによる Donegal, 2013 ルイーズ・ブルジョワ Louise Bourgeois、リチャード・セラ Richard Serra、宮島達男などそうそうたるメンバーの作品を、 アップダウンのある豊かな自然の中で堪能出来ます。 ゆっくり歩いて2時間程で、 ガイドツアーもあります。 程よい疲れを感じたら、 敷地内のレストランで今見て来た畑のワインを頂き、美味しい食事と共に 空腹を満たせ ます。 正に至れり尽くせりです。 と同時に、単にワイン畑を見せる・試飲・販売という従来の方法にアートを加えプラス収入も得る、というビジネス的にも優れたシステムです(*^^*) この夏(2016年夏)から一部プール付きのヴィラがオープンして滞在も出来る様になりました。   その他、イレギュラーでコンサートが開かれたり、屋外で映画が上映されたりとイベントも盛りだくさんです。 コンサートも開かれる、フランク・ゲーリーによる Pavillon de Musique ,2008 * 音楽棟 Pavillon de Musique, 2008に 関しては 【建築巡礼-3:フランク・ゲーリーの建築】 でも触れています。    敷地内に入って、まず私たちを迎えてくれるのが アートセンターCentre d'art, 2011 です。 こちらは安藤忠雄によるもので、ミュージアムショップ兼インフォメーションセンター兼カフェ・レストランの役割を果たしています。 安藤忠雄による Centre d'art, 2011  、彫刻は杉本博司 Vの字の建物は Vigne(ブドウの木)の頭文字 V を象っています。

【建築巡礼ー9 : ル・トロネ修道院 abbaye du Thoronet】

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今回の旅では、新しい建物だけではなく、ロマネスク建築の プロヴァンス三姉妹* として有名なシトー会の ル・トロネ修道院 abbaye du Thoronet も訪れました。 * プロヴァンス三姉妹 ・・・同じプロヴァンスにあるマザン修道院を母として、ル・トロネ修道院を長女、セナンク修道院を次女、シルヴァカーヌ修道院を三女として呼ぶ俗称。 教会部分 ル・トロネ修道院 abbaye du Thoronetの建設は1160年に始まり、1230年まで続きました。 初めは20人の修道士が生活してましたが、15世紀頃より国の混乱もあり荒廃し始め、1660年には当時の修道院長が修復の必要性を訴えます。 それでも1791年には国に売却されてしまいます。 そして1840年にはフランスの歴史的建造物として認定され現在に至っています。 シトー会とは12世紀にブルゴーニュで創設された修道会で、厳しい戒律、質素な生活を信条として「祈り、働け」の標語の元、修道士達は人里離れた所で修行に励みます。 ここでは澄んだ空気と奇跡の様な静けさが辺り一帯を支配しており、 時代の生き証人の様にそこに佇むこの修道院の姿に圧倒され ました。 建物はシトー会の規則を忠実に守り石のみで作られ、装飾はほとんどなく、石の質感とそれが描くラインのみで表現されています。 傾斜地に建ている為、高さが違う回廊。石はきっちり組まれている 珍しい2階部分がある回廊 歴史にも大きく関わった時代の宗教施設の事を語るのは難しいです。 全く違う生活をする現代の私達ではなかなか想像が追いつきません。 とは言え、やはり非凡な方はきちんとそこからエッセンスを汲んでいかれます。 多くの建築家がこのシンプルで強いメッセージ性のある建物にインスパイヤーされてきました。 ル・コルビジェがここを見学した後、ラ・トゥーレットを建てたのは有名ですが、その他もフェルナンプイヨン Fernand Pouillon(1912-1986)、ジョン・ポーソン John Pawson(1949-)、ロベール・マレ=ステヴァンス Rober Mallet-Stevens(1886-1945)、そして安藤忠雄(1941 -)もこの建物から受けたメッセージをその後の仕事に繋げています。 上部に開いた、明り取

【建築巡礼ー8:Gare Belfort-Montbéliard TGV】

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旅にはつきものの空港や駅は、必ず使用する大事な所なので妙に印象に残ったり思い出の大事な1ページになったりします。 今回の旅ではあまり電車は使用しなかったのですが、気になる駅がありました。 フランスの フランシュ・コンテ地方 テリトワール・ド・ベルフォール県の Gare Belfort-Montbéliard ベルフォール‐モンベリアール駅 です。 入口からまっすぐ進んだところ 入口からまっすぐに広がる大きな空間と突き当り一面のガラス、そして大きなテーブルで飲み物を取りながらくつろぐ人達、その様子はまるでスキー場のレストハウスの様です。 それもそのはず、この地方は自然に恵まれた山岳地帯で冬はスキーも盛んです。 林業が盛んな地域らしく木材を多用しているこの建物に興味を持ち、帰国後少し調べてみました。   2011年の12月開業の新しい駅です。 *2012年には、フランスの70の駅でフランス国鉄が行ったアンケートで最もお客様を満足させる駅に選ばれています。 カフェスペースを別の角度から   天井も‘木’ ホームに向かうウッドデッキの様なスロープ 大きな孤を描いていくスロープはまるで空港の様でダイナミック 建物はフランス国鉄SNCFの子会社 AREP によるものです。 AREPは、駅などのたくさんの人が交差する場所を専門に手掛けている会社で、建築家の他エンジニア、デザイナーなど様々な専門家の集団です。 主要メンバーはジョン=マリー・デュティヨール Jean-Marie Duthilleul とエティエンヌ・トュリコウ Étienne Tricaud で、このプロジェクトにはFrançois Bonnefille、Fabienne Couvert、 Jean François Blasseel も参加していました。 *彼らは他に アヴィニョンTGV駅 (2001)、エクス・アン・プロヴァンスTGV駅(2001) など多数の駅、駅以外では北京のMusée de la capitale 首都博物館(2005)、ホーチミンのTour financière Bitexco ビテクスコ・フィナンシャルタワー(2010)などにも携わっています。 エスカレーターはさすがに‘木’というわけにはいか

【アート通信ー6: 「智美術館」】

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正式名称「菊池寛実記念 智美術館 (きくちかんじつきねん ともびじゅつかん) 」、 ホテルオークラの裏に 2003年に開館しました。 敷地への入り口付近 こちらは、実業家であるオーナーの陶芸コレクションを母体に、現代陶芸の紹介を目的に創られた個人美術館です。 規模は大きくありませんが敷地に一歩足を踏み入れた時からオーナーの造形への想いが感じられます。 美術館が入っている建物、入口付近 玄関に向かうアプローチは金属と石のコラボレーションで、鋳金作家:北村真一さんによるもので、 玄関の自動ドア両脇の造形も同氏によるものです。 お客様を迎えるオーナーの丁寧な気持ちが伺い知れます。 北村真一さんによる玄関アプローチ 北村真一さんによる自動ドア両脇の作品 そして玄関を入りまっすぐ進んだ廊下の先で、もう一度私たちを迎えてくれるのが篠田桃紅さんの書です。 篠田桃紅さんの作品「ある女主人の肖像」 タイトルの‘女主人’とはこちらのオーナーを意味しています。 ここで作品がオーナーに代わり、お客様を迎え入れます。 右手にはレストランがあり、見事な庭園を眺めながらゆっくりと食事を楽しむ事が出来ます。 (レストランのみの利用も可能です。) レストラン「ヴォワ・ラクテ」 レストラン「ヴォワ・ラクテ」より見える庭の景色 左手に進むと小さなミュージアムショップと受付があります。 そして展示室に向かう階段室でも 新たなもてなしがあります。 壁面は銀箔に篠田さんの作品がコラージュされており、宝石の様に美しい階段の手すりはガラス作家:横山尚人さんによるものです。 照明の光を受けて光り輝きながら観覧者を会場へと導きます。 智美術館パンフレットより 空間へのこだわりは展示空間へ入っても続きます。 全体のデザインはスミソニアン自然史博物館の空間構成も手掛けているリチャード・モリナロリさんによるもので、その美しいデザインに導かれ観覧者は迷うことなく作品に集中出来ます。 こちらの美術館のすばらしいところは、ビエンナーレを開催したり、専門家の話を聞くサロンを開いたりと、独自の方法で工芸界に新たな風を吹き込もうとしているところです。 隔年開催するビエンナーレは、作家の発掘という役割も果たして