【アート通信ー120:「久保田一竹美術館」】

 120回目のアート通信は、山梨県の河口湖近くにある「久保田一竹美術館」からです。

インドの古城に使われていた扉を使用した正門

「久保田一竹美術館」は、染色家・久保田一竹(くぼた いっちく 1917-2003) 氏 の作品が常設展示されている美術館で、1994年に開館しました。

自然と一体となった庭園を通りながら建物に向かいます。訪れた時はオフシーズンなので少し寂しかったですが、春は新緑、秋は紅葉で相当美しい事でしょう。

久保田一竹氏の作品、パンフレットより

『辻が花』とは、絞り染めをした後に絵を描き足したり、箔を施したり、さらに刺繍を加えたりする手の込んだ技法で、室町時代に流行りました。しかし、江戸時代になると簡単に染められる『友禅染め』に取って代わられ、衰退し、消滅した技法です。

その幻の技法を、復活させようと試みた人達がいます。その中の一人、久保田一竹氏は、古来の手法から『一竹辻が花』と呼ばれる独自の世界を生み出し、世界的に有名になりました。

〈新館〉の外観

〈新館〉は全て琉球石灰石で出来ており、ガウディの建築を彷彿させます。

ここにはミュージアムショップや、カフェが入っており、カフェでは、天気が良ければ氏も愛した富士山が望めます。

〈本館〉

作品が展示してある〈本館〉は、〈新館〉とは全く違うデザイン。一千年を超すヒバの木を16本使い、日本古来の建て方と西洋のログハウスの建て方を融合させています。

本館の屋根部分、パンフレットより

年に数回展示替えがあります。

館内は残念ながら撮影禁止。素晴らしい作品の数々をここでリアルにご紹介出来ないのは残念で、パンフレットの写真を載せます。

久保田一竹氏の作品、パンフレットより

久保田一竹氏は、『友禅染め』をしていた20歳の時、『辻が花染め』に出会いました。それはほんの小裂でしたが、その美しさに心を奪われた氏は、敗戦とシベリア抑留を経験した後、急死に一生を得たと、その後の人生を『辻が花』の研究に捧げます。

重厚で力強い作品の世界観は壮大で、シベリア抑留の経験をも彷彿させます。そしてそれは、着物の域を超え、四季折々の自然から果ては宇宙へまでと広がっています。

茶房「一竹庵」より庭を眺める

展示室の奥には茶房「一竹庵」があります。ここでは庭を眺めながら休憩が出来るだけでなく、氏が好んだ独特の空間に浸れます。

茶房「一竹庵」の一角

〈新館〉〈本館〉〈庭〉、その全ては氏によるデザイン。専門家と共に作り上げてきました。

ここは言わば、氏の想い、理想、そしてそれら全てが込められていると言って良いでしょう。

亡き母を偲んで作られた洞窟

また、本館の奥に続く自然の地形を活かした庭には、インドの仏師に彫ってもらった普賢菩薩像と女人像が洞窟内に安置されています。

富士山を望む河口湖

「久保田一竹美術館」は河口湖畔から徒歩5分。途中、紅葉街道などもあり、名物のほうとうを味わったり、富士山の絶景を満喫しながら美術館に向かえます!

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