【アート通信ー110:「蔦屋重三郎」】
110回目のアート通信は、現在、東京国立博物館 平成館にて開催中の特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」からです。
*写真は全て内覧会にて許可を得て撮影しております。
平成館内の「蔦屋重三郎」展ポスター |
蔦屋重三郎(1750~1797)は、浮世絵師・喜多川歌麿や東洲斎写楽を見い出し、世に売り出した人です。彼は吉原生まれで吉原に熟知していたので、まずは吉原に関する出版に携わりました。当時ですから、出版は浮世絵とも大いに関係があり、結果として絵師を世に送り出す事に繋がったのです。
〈附章〉 展示風景 |
主催が東京国立博物館とNHKというだけあり、特に最後の 〈附章〉 では、現在放映中のNHK大河ドラマ「べらぼう」(主人公は蔦屋重三郎)のセットや、当時の様子を再現した町並みなどがあり、気分ははすっかり江戸時代!
また、ここでは浮世絵の作り方の説明が映像でなされているのも嬉しいところ。
「蔦屋重三郎」展 入り口風景 |
紅塵陌人 作 / 北尾重政 画『一目千本』(1774) 大阪大学附属図書館 忍頂寺文庫 蔵 |
こちらは蔦屋重三郎が初めて手がけた出版物、『一目千本』です。流行の生け花に遊女をなぞらえて紹介する遊女評判記です。生け花に例えて、より想像力を掻き立てようという思惑でしょうか。
*会期中ページ替えがあります。
北尾重政・勝川春章 画『青楼美人合姿鏡』(1776) 東京国立博物館 蔵 |
こちらは、山崎金兵衛と蔦屋重三郎の共同で出版された、人気絵師2名により美しく描かれた、なんと164名の遊女とその名前が記された『青楼美人合姿鏡』です。また、別ページには、その遊女たちが詠んだ句が載せられています。
私にはどの遊女も同じ顔に見えてしまうのですが、遊女の日常が垣間見られてとても美しいです。
*会期中ページ替えがあります。
喜多川歌麿 画『画本虫撰』下巻 (1788) 千葉市美術館 蔵 |
喜多川歌麿 筆『婦女人相十品ポッピンを吹く娘』(1792-1793) 東京国立博物館 蔵 |
東洲斎写楽 筆『成田屋三舛』(1794) 東京国立博物館 蔵 |
*こちらの展示は前期のみ
蔦屋重三郎が営んでいた「耕書堂」の再現 |
「耕書堂」内部 |
中にも入れます。手にとって観る事は出来ませんが、一枚一枚の絵としてではなく、本当に冊子として売られていたんだという事が実感として分かります。
江戸の町を表した映像がある展示風景 |
最後の 〈附章〉 は、自分が江戸時代にタイムスリップした気分を味わえる楽しい空間です!
隣の東京国立博物館 表慶館で開催中の「浮世絵現代」展へは、ここ「蔦屋重三郎」展のチケットで同日無料で入れます。時代が江戸時代から現代へと飛びますが、現在、浮世絵がどの様に継承されているのか知る事が出来るので、お時間がある方は立ち寄られると良いでしょう。