【アート通ー107:「熊谷守一美術館」】

 107回目のアート通信は東京都豊島区の小さな美術館、豊島区立「熊谷守一美術館」からです。

豊島区立「熊谷守一美術館」外観・部分

熊谷守一氏 (1880-1977)は、東京美術学校(現在の東京藝術大学)で油絵を学び、明治・大正・昭和という3つの時代を生き抜いた画家です。

美術館は氏が自宅兼アトリエとして使用していた場所に、次女の榧 さん(1929-2022) が創立し、2007年に豊島区立の美術館となりました。

「アゲ羽蝶」1976年, 油彩・板(美術館パンフレットより)

守一氏は、東京美術学校で油絵を学んだ後しばらくは西洋風の絵も描いていましたが、晩年は、この様に輪郭がはっきりした、まるで版画のような〈モリカズ様式〉と呼ばれる独特のスタイルを確立しました。


「白猫」1959年, 油彩・板 ( 美術館パンフレットより)

展示室は撮影禁止なので、パンフレットからの作品紹介ですが、この猫の絵に見覚えがある方も多いのでは?版画にもなったとても人気の高い作品です。

1956年に脳卒中の発作を起こしてからは、氏は外出せず、飼っていた猫や自宅の庭の動植物を描く事が多くなりました。しかし、無欲に目の前のものを描いた作品は人々を惹きつけ、また不思議なことに明治生まれの人とは思えないモダンな印象も受けます。

そんな氏の魅力は、2018年に公開された、氏をモデルにした映画、『モリのいた場所』からも垣間見られますよ。

守一氏の肖像写真

美術館は1、2階が展示室で、3階は貸しギャラリー。階段には守一氏の写真などが展示され、美術館というより住居のような雰囲気です。

「カフェカヤ」の様子

受付傍の少し下がったところに、屋外を見渡せるミュージアムカフェ『カフェカヤ』があります。

榧 (かや)さん作のカップ

使われているカップは、やはりアーティストだった次女、熊谷榧さんによる力強く味わいのある作品。

また、人気の猫をモチーフにしたマスキングテープや一筆箋などのミュージアムグッズも置いてあります。

カフェだけの利用も可能。

「カフェカヤ」を外から見る

この辺りは、かつて池袋モンパルナスとも呼ばれ、多くのアーティストがアトリエを構えたり、文士が居を構えたりしていた場所。その名残を「熊谷守一美術館」と合わせて辿るのもお薦めです。

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