【アート通信ー105: まるで宝探し!「須田悦弘」展】

105回目のアート通信は、現在、東京都渋谷区立松濤美術館で開催中の「須田悦弘」展からです。

美術館入り口「須田悦弘」展 看板

 展示風景


この写真を見て、作品はどこ?皆は何をしているの?と思いませんか?


『雑草』(1995, 2024)


作品はここ!


須田悦弘(よしひろ)氏は、草花や雑草を現物大で、あたかもそこにあるかのように表現する作家です。そして何より驚くのが、これが木で出来ているという事!


『木蓮』(2024)


草花や雑草の現物大ですから、見つけ出すのが大変でまさに宝探し状態!その分、見つけた時は嬉しいですし、これが木で・・・と、またまじまじ眺めてしまいます。


また、木彫作品だけでなく、氏が初期に行った東京・銀座の駐車場でのゲリラ的な展示の記録にも注目です。


この楽しさを邪魔したく無いので、ここでは敢えて展示紹介はしません。作品は思わぬ所に潜んでいます。展示マップを参考に見つけて下さいね。



須田悦弘氏について


須田悦弘氏(1969-)が、このような作品を作るようになったのは、当時注目を集めていた木彫彫刻家、舟越桂氏(1951-2024)の存在が大きいようです。


舟越桂『ピアノがきこえる』(1984) 名古屋市美術館蔵
「現代彫刻の歩みⅢー1970年代以降の表現ー物質と空間の変容」神奈川県立県民ホール (1990) カタログより

舟越氏の作品は、従来の木彫のスタイルにとらわれず、目には大理石を入れ、あたかも生きているかのようなリアルでちょっと不思議な雰囲気が漂う人物彫刻を作る作家として知られています。


そんな舟越氏の作品に出会い、須田氏は多摩美術大学時代、グラフィックデザイン科に所属しているにも関わらず木彫に興味を持ち、なんと独学で木彫の技術を磨きました。


アサヒビール「ニッカ弘前 生シードル」原画

展示会場では、本来の専門であり、現在もアルバイトで受けているパッケージデザインの原画も展示されています。こちらも素晴らしいです。このデッサン力、観察眼を持って生まれた木彫作品の数々なのかも知れません。


松濤美術館について


松濤美術館は白井晟一氏(1905-1983)設計で、1981年に開館しました。


松濤美術館入り口付近


美術館の吹き抜け空間

住宅街での建設なので地上2階、地下2階。外壁の窓は最小限に留め中央の吹き抜けから採光しています。

美術館の美しい階段室

美術館のエレベーターホール

魅力は美術館と言うより美術愛好家の邸宅のようなつくり、構成にあると言えるでしょう。広々とした展示室やエレベーターホールにはソファーや鏡が置かれ、サロンの様にゆったり寛げます。


美術館ロビー

美術館ロビーのこの楕円の窓の外側にも、美術館屋外のショーケースにも、須田氏の作品が展示されています。忘れずに見つけて下さいね!

「須田悦弘」展は2025年2月2日まで開催。


松濤美術館では学芸員によるギャラリートークや館内建築ツアーも開催しているので、詳しくは美術館ホームページでご確認下さい。


松濤美術館

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