【アート通信ー102:梵寿綱「マインド和亜」】
102回目のアート通信は、東京都杉並区にある集合住宅「マインド和亜」からです。
壁面は白蓋文章氏による木材造形 |
「マインド和亜」は、梵寿綱(ぼん じゅこう 1934- )氏の設計による、一部分譲の賃貸住宅ですが、ご覧のように一般の賃貸住宅とは大いに趣が異なります。それは建物自体が、アーティスト、職人、建築家によるアート作品だからです。
オーナーの石井氏は大手ゼネコンに勤めていましたが、没個性の建物を建て続ける事に疑問を感じ、最後は長く愛され残る建物を建てようと決心し、それが叶いそうな建築家である梵氏に依頼したそうです。
まず入り口から違います!まるで貴族の邸宅の様なエントランス空間。美しい鉄の扉は鍛金作家の倉田光太郎氏によるもの。
エントランス上部 |
エントランスの上部空間には下ノ本正史氏によるステンドグラスの光が満ちており、自然光により変化し続ける幻想的な空間は本当に美しく、いくら見ていても飽きません。
中庭を見下ろす |
中庭はアーティスト達が競って埋め尽くすかの様な迫力です。
壁面のコンクリート彫刻は久保田啓祐氏、ステンドグラスは矢島哲郎氏、美しい塗り壁は久住章氏、そして床の見事な大理石モザイクは上哲男氏によるもの。
コンビニのメインカラーのオレンジとマッチしている装飾 |
「マインド和亜」は1992年に竣工しました。地下1階、地上5階建です。地下にはスタジオ、1階にはカフェ、コンビニなどの店舗などが入り、2階から上が住居です。
装飾は地下への階段、非常階段のガラス戸、軒下の細部などにも施され、各住居までの非日常感がたまりません!
でも、素敵だけど住んでいる人は装飾が多すぎて落ち着かないのでは?と思う方はご心配なく、アーティスト、職人との共同作業は共用部分のみ。それぞれの住居スペースは至って普通の作りです。ちなみに家賃は意外にも相場(!)
「マインド和亜」中庭 |
そして、この素敵な中庭では毎月コンサートなどが開かれ、その際は近隣の方々にも解放されるとか。毎月何らかのイベントを堪能出来る住民が羨ましいです。
オーナーの石井さんに案内してもらいながら気づいたのは、ここにはオーナーの人柄も反映されていると言う事。建てて終わりではなく、住民や近隣の人の状況や交流にも気遣いながら運営していくという人ありきの姿勢。それは血が通い呼吸しているかのような、この建物そのものでもあるように思いました。
1階のカフェ「MISSPONNE」やコンビニ「ディリーヤマザキ」の利用は誰でも出来ますが、共用部は一般住居なのでイベント以外では立ち入り出来ません。
共用部を見たい方は、カフェ「MISSPONNE」のホームページでイベントをチェックするか、東京建築アクセスポイントなどで開催される見学会をチェックしてみて下さい。