【アート通信ー100:「ヨックモックミュージアム」】

 100回目のアート通信は、東京・青山にある小さな美術館、ヨックモックミュージアムからです。

美術館外観

あの青い缶に入った葉巻のようにくるくる巻かれたクッキー、シガールをご存知でしょうか?ヨックモックミュージアムは、そのシガールを販売している株式会社ヨックモックホールディングスの会長、藤縄利康氏がコレクションしたピカソの陶芸作品を中心としたプライベート美術館です。2020年にオープンしました。

展示風景(地下1階)

フクロウを手にするピカソ

スペイン南部のマラガで生まれたパブロ・ピカソ(1881-1973) は、はじめ美術教師の父から絵画の指導を受けます。その後、独自の新しい絵画スタイルを次々に確立し有名になりましたが、晩年は陶芸にはまり、南仏ヴァロリスのマドゥーラ工房に籠り、まるで魔法使いの様にその手から様々な作品を生み出しました。

「牡牛を槍で突く闘牛士」(1953)

展示は地下1階から始まり、『闘牛』『鳩』『フクロウ』など、ピカソが好んだテーマごとに紹介されています。

一番初めのテーマは『闘牛』。スペイン人のピカソは、幼い頃から闘牛好きの父に連れられて闘牛場に通っていました。彼が9歳の時に初めて描いた油絵も、闘牛に登場するピカドール(闘牛が始まる前に、牛を怒らせる人)だったと言いますから、その闘牛好きは筋金入りですね!

「鳥型の水差し」(1953)

そしてテーマは『鳩』へと続きます。ピカソは鳩小屋を作って鳩を飼っていたほどの鳩好き。よく作品のモチーフにも使用しており、1949年制作の鳩の版画は同年のパリ平和会議のポスターに使用されたんですよ。

「四角い顔」(1956)

そしてテーマは『小さな生き物』『牧神』と続きます。解説ビデオの中に、「陶芸を作っているのではない、ピカソ作品を作っているのだ」という言葉が出てきますが、写真の皿一つとっても、自由に凸凹を付け、自在に描きたいものを描き出しているのが分かります。

「女性型の燭台」(1955)

2階では、ピカソの陶芸制作風景やマドゥーラ工房へのインタビューのビデオ上映があり、当時の様子を知る事が出来ます。また隣の展示室には、そのビデオに出てきた作品が展示されていますよ。

自由に写真を撮る事が出来るフォトスポット

フォトスポットもあり、この椅子に座って写真に収まることが出来ます!素敵な写真が撮れそう。


明るい光が差し込むミュージアムカフェ

そして鑑賞の後は、サンドイッチやスイーツが頂ける1階のミュージアムカフェに立ち寄るのはいかがでしょうか。

ショップで購入出来るシガール

カフェ隣接のミュージアムショップでは、1956年にヴァロリスで開催された陶器見本市の為にピカソがデザインしたポスターをモチーフにした、オリジナル缶入りシガールも購入出来ます。

カフェへの入り口

ヨックモックは、安易にショートニングやマーガリンを使わず、コスト高でも正しい材料のバターを使う事に拘るなど、きちんとしたお菓子作りを続けている貴重な会社です。そんな真面目な姿勢も窺える丁寧な展示でした。

ちなみにカフェは美術館を利用しなくても単独での利用も可能です。住宅街の中の静かな隠れ家的美術館、そしてカフェでどうぞ素敵な時間を過ごして下さいね。


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