【アート通信ー88:「深川江戸資料館」】

 88回目のアート通信は、東京都・江東区の「深川江戸資料館」からです。

「深川江戸資料館」入り口付近

こちらの資料館は1986年に開館しました。2021年から2022年までは改修工事で閉館していましたが、現在は再開館しています。最寄駅は清澄白河駅です。

7代目市川団十郎住居跡を示す地図

会場に入ると、まず、江戸時代、深川に居を構えた著名人の紹介があります。

あの「里総里見八犬伝」を書いた曲亭馬琴(滝沢馬琴)、勝海舟・吉田松陰・坂本龍馬らの師である佐久間象山、歌舞伎7代目市川団十郎、日本全国を測量した伊能忠敬、など、錚々たるメンバーがこの地に居を構えていました。

深川のどの辺りに住んでいたかを示す地図もあるので、この後、それらを回ってみるのも面白いのでは?

「卯の花月」歌川豊国 静嘉堂文庫所蔵

そして浮世絵もあり、当時の深川の様子が紹介されています。

例えば、こちらの歌川豊国(二代)「卯の花月では、長屋の軒先で魚屋が鰹を下ろし、住民達がお皿を持って集まって来る、という春の風物詩が描かれています。

この、生き生きした様子を立体的に体験できるのが地下の展示室です!

地下展示室の屋根部分

ここでは、展示室全体が一つの町の一区画として設定され、建物など全てが実物大で再現されています。照明と音響で、昼夜の演出までしているんですよ!

・・・江戸時代終わり(1840年頃)、隅田川沿岸の深川佐賀町、永代橋で江戸市内とつながる蔵の街、人々の暮らしは運河と共にありました・・・

船宿「升田屋」

「升田屋」は船宿で、船を所持し、船頭を雇って人や荷物を運んいました。

それぞれの家に想定があり、こちらの升田屋さんは、夫婦と12歳の女中1人、船頭2人で、結構繁盛している、という設定です。軒下に積まれた沢山の大きな荷物からそれがうかがえますね。

一立斎広重「東都名所永代橋全図」(国立図書館蔵)

この浮世絵からも、深川は永代橋で江戸市内と結ばれ、人々の暮らしは運河と共にあった、という事が分かります。

小さくて分かりにくいですが、橋の向こう側には蔵が並び、火の見櫓が建ち、沢山の船が人や物資を運んでいます。

火の見櫓がある船着場広場の様子

船着場広場には、蕎麦屋や天麩羅屋などの屋台が建ち並んでいます。船着場でお腹を空かせた働き手目当てだったのでしょうか。

当時の江戸は男単身世帯が多く、外でささっと食べられる外食が空前のブームでした。

安達吟光「大江戸芝居年中行事 風聞きゝ」(国立国会図書館所蔵)

火の見櫓側の蕎麦屋の屋台は、この浮世絵と比較しても、細部まで忠実に再現されていることが分かります。

表通り

肥料などを扱う店、八百屋、米屋などが軒を連ねる表通りも、日が暮れてきました。

八百屋「八百新」

店を初めて10年の「八百新」さんでは少し売れ残りがあるようです。明日は籠に野菜を入れて売り歩かなければいけないでしょうか。

長屋裏の共同スペース

おやおや、ゴミ溜めを覗き込んでいる人がいますね。

こちらは長屋裏の共同スペース。井戸、トイレ、ゴミ溜めなどがある、言わば住民のコミュニティースペースです。トイレの扉は防犯の為に上部は開いています。排泄物は汲み取って肥料として販売していました。
歌川広重「江戸名所道外尽 甘八 妻恋こみ坂の景」

トイレ事情は、この浮世絵にも描かれていますが、扉はあってないようなものですから、かなり臭かったでしょうね。

路地

建物は、釘から当時と同じ物を用意し、工法も忠実です。調度品も当時のもの、もしくは近い物を作るなどして近づけているので、江戸の町、深川佐賀町の世界にどっぷり入り込むことが出来ます。

米屋

そしてここの素晴らしいところは、眺めるだけでなく、店舗などに上がって奥の様子なども体感できるところ。写真も自由に撮れます!

現在「江戸東京博物館」が改修工事で閉館中なので、その代わりに訪れてみるのもお薦めです。

歌川広重「江戸名所 洲崎志保干狩」(江戸末期) 江東区深川図書館蔵)

ところで、こちらは潮干狩りの様子。当時から江戸ではアサリをよく取っていたそうで、今でも深川名物と言えば、アサリたっぷりの「深川めし」

「深川江戸資料館」前の通り

資料館を出ると、お豆腐屋さん、着物やさんなど、昔ながらの店もちらほら見かけますが、その中に、「深川めし」を出している食堂が何軒かあります。

深川釜匠さんの深川めし

当時もこんなにアサリたっぷりだったのでしょうか?

資料館を出た後は、江戸時代に思いを馳せながら深川名物「深川めし」味わってみるはいかがでしょう。








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