【アート通信ー88:「深川江戸資料館」】
88回目のアート通信は、東京都・江東区の「深川江戸資料館」からです。
「深川江戸資料館」入り口付近 |
7代目市川団十郎住居跡を示す地図 |
会場に入ると、まず、江戸時代、深川に居を構えた著名人の紹介があります。
あの「里総里見八犬伝」を書いた曲亭馬琴(滝沢馬琴)、勝海舟・吉田松陰・坂本龍馬らの師である佐久間象山、歌舞伎7代目市川団十郎、日本全国を測量した伊能忠敬、など、錚々たるメンバーがこの地に居を構えていました。
深川のどの辺りに住んでいたかを示す地図もあるので、この後、それらを回ってみるのも面白いのでは?
火の見櫓側の蕎麦屋の屋台は、この浮世絵と比較しても、細部まで忠実に再現されていることが分かります。
ところで、こちらは潮干狩りの様子。当時から江戸ではアサリをよく取っていたそうで、今でも深川名物と言えば、アサリたっぷりの「深川めし」!
例えば、こちらの歌川豊国(二代)「卯の花月」では、長屋の軒先で魚屋が鰹を下ろし、住民達がお皿を持って集まって来る、という春の風物詩が描かれています。
この、生き生きした様子を立体的に体験できるのが地下の展示室です!
ここでは、展示室全体が一つの町の一区画として設定され、建物など全てが実物大で再現されています。照明と音響で、昼夜の演出までしているんですよ!
・・・江戸時代終わり(1840年頃)、隅田川沿岸の深川佐賀町、永代橋で江戸市内とつながる蔵の街、人々の暮らしは運河と共にありました・・・
それぞれの家に想定があり、こちらの升田屋さんは、夫婦と12歳の女中1人、船頭2人で、結構繁盛している、という設定です。軒下に積まれた沢山の大きな荷物からそれがうかがえますね。
一立斎広重「東都名所永代橋全図」(国立図書館蔵) |
この浮世絵からも、深川は永代橋で江戸市内と結ばれ、人々の暮らしは運河と共にあった、という事が分かります。
小さくて分かりにくいですが、橋の向こう側には蔵が並び、火の見櫓が建ち、沢山の船が人や物資を運んでいます。
火の見櫓がある船着場広場の様子 |
船着場広場には、蕎麦屋や天麩羅屋などの屋台が建ち並んでいます。船着場でお腹を空かせた働き手目当てだったのでしょうか。
当時の江戸は男単身世帯が多く、外でささっと食べられる外食が空前のブームでした。
安達吟光「大江戸芝居年中行事 風聞きゝ」(国立国会図書館所蔵) |
肥料などを扱う店、八百屋、米屋などが軒を連ねる表通りも、日が暮れてきました。
おやおや、ゴミ溜めを覗き込んでいる人がいますね。
こちらは長屋裏の共同スペース。井戸、トイレ、ゴミ溜めなどがある、言わば住民のコミュニティースペースです。トイレの扉は防犯の為に上部は開いています。排泄物は汲み取って肥料として販売していました。
建物は、釘から当時と同じ物を用意し、工法も忠実です。調度品も当時のもの、もしくは近い物を作るなどして近づけているので、江戸の町、深川佐賀町の世界にどっぷり入り込むことが出来ます。
現在「江戸東京博物館」が改修工事で閉館中なので、その代わりに訪れてみるのもお薦めです。
歌川広重「江戸名所 洲崎志保干狩」(江戸末期) 江東区深川図書館蔵) |
「深川江戸資料館」前の通り |
資料館を出ると、お豆腐屋さん、着物やさんなど、昔ながらの店もちらほら見かけますが、その中に、「深川めし」を出している食堂が何軒かあります。
資料館を出た後は、江戸時代に思いを馳せながら深川名物「深川めし」味わってみるはいかがでしょう。