【アート通信ー86:「佐渡国小木民族博物館」】

 86回目のアート通信は、新潟県佐渡市南部にある「佐渡国小木民族博物館」からです。

木造平屋の旧宿根木小学校

実はこの小さな博物館は、大正10年に開講した「旧宿根木小学校」の校舎をそのまま利用しています。その建物もとても魅力的で、建物を見るだけでもテンションが上がりますが、展示の仕方もユニークです。

博物館として開館したのは1972年で、国の重要文化財に指定されている漁業用具、船大工道具をはじめ、生活道具品など3万点余りの民俗史料が展示されています。

昔の生活道具
例えばこちら、ただの桶に見えますが、桶にも実は3種類あり、丸太をくり抜いたものが「刳り物」、薄い板を曲げて作ったものが「曲げ物」、数枚の板を組み合わせて作ったものが「結物」です。

所狭しと並べられている竹工芸!

佐渡島、特に小木地区は竹の名産地。良質の竹が取れることで知られており、竹工芸の種類も豊富!

昔の漁具や農具、桶や樽、縄文土器などの出土品は新しく建てられた新館に展示。

元体育館も展示室に!

一方、生活道具など、もっと生活に根ざしたものは旧校舎に展示されています。

オリジナルの展示台がユニークな元体育館

昔の生活道具が展示されている元体育館では、中に入って階段を上がったり歩き回ったり出来る木製の展示棚がとてもユニーク!まるでそこだけ骨董屋さんのようです。

一部の教室はそのままの状態で残されている

展示をせず、当時のままの状態で残されている教室もあります。木製の小さな机と椅子が可愛い!

各教室の札に展示の内容が記載

信仰・衣など、生活に根ざしたものはジャンル分けされ、教室ごとに展示されています。身近な分野なので、なんとなく懐かしさも感じます。


佐渡国小木民族博物館HPより

この博物館のもう一つの目玉は、1858年に宿根木で建造された千石船「光栄丸」が当時の設計図をもとに復元され、実物大で見られる事です。

実は、小木地区は18世紀頃より廻船業で栄えてきたところで、一時は“佐渡の富の1/3はここにある!”と言われた程。巨額の富を生む船は千石船、または北前船と呼ばれていました。

船内に入り内部も見学出来る!

ここではビデオでの解説もあり、千石船の成り立ちがよく分かります。また、船箪笥の展示もあり、佐渡小木は福井県の三国、山形県の酒田に並ぶ三大産地の一つだったそうです。

船用の扉はガラス張りで大きい!

船の大きさは、展示室の船用の扉と通常の扉の大きさの比較でお分かりいただけるでしょうか?


旧宿根木小学校の敷地風景

旧宿根木小学校の敷地内はまるで時が止まったかのような静かさです。

佐渡文化、小木区の文化が良く分かるので、有名な宿根木集落の見学だけでなくこちらへも立ち寄るのがお勧めです。

ところで、佐渡島は、2004年に島内の市町村が合併して佐渡市となったので、開館当時はまだ佐渡郡だったはず、博物館名称に付く“佐渡国”には、この土地の人の強い独立心を感じずにはいられません。


佐渡国小木民族博物館









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