【アート通信ー59:フランス「パリ ラ デファンス」】
59回目のアート通信は、フランス・パリ近くの開発地区、「パリ ラ デファンス(Paris La Défense) 」からです。今回も自由に海外に行けない今だからこそ、海外のアート情報を御案内します。パリ、という文字が入っていますがここはパリ市外。
「グランダルシュ」より「デファンス地区」を眺める |
「デファンス地区」の開発は、職住近接を目的とし、1958年から始まりました。開発には反対意見もありましたが、現在は多くの企業がオフィスを構え、住宅も約15万戸、42,000人程の住民が生活しています。そして開発を始めてから60年以上経った今、古くなったビルの建て替えも進められています。
門のような形をした建物「グランダルシュ」(1989) |
「グランダルシュ(Grande Arche)」は、「デファンス地区」の象徴として建設されました。門の様に見えますが実は35階建てのオフィスビルです。パリのシャンゼリゼ通りには「カルーゼル凱旋門」「エトワール凱旋門」という2つの凱旋門が建っていますが、そしてその西方向延長線上に「グランダルシュ(Grande Arche)」は建っています。
ところで、「デファンス地区」のデファンス(Défense)には 〈守る〉、という意味があります。凱旋門が 〈攻めた〉 暁の勝利を讃える為に建てられたのに対し、その延長線上にグランダルシュが 〈守る〉 象徴として建てられたのには、大きな意味があると思います。また、それが「グランダルシュ」が「現代の凱旋門」とも言われる所以でしょう。フランス革命から200年の1989年に落成式が行われました。
高層ビルの中に広がる広場 |
その他の建物も、パリ市内では見かけない現代的なデザインのものばかり、まるで未来都市の様な雰囲気です。交通網は566ヘクタールの敷地の地下に張り巡らされ、地上には遊歩道や公園、アート作品が点在しています。点在と言っても、その規模がとても大きいのでもはや広場・街を構成するパーツとも言えるでしょう。
例えば、花壇の向こうに見える赤い彫刻は、アメリカの彫刻家、アレクサンダー・カルダー氏(1898-1976)の作品。建物と比較してもその大きさが分かります。
フランソワ・モルレ「La Défonce」(1990) |
また一瞬、事故か?と心配してしまうような、建物に鉄骨がめり込んでいるこちらの作品は、フランス人アーティスト、フランソワ・モルレ氏 (1926-2016)によるものです。作品名も印象的です。ここの地区名「ラ デファンス(la Défense) 」にかけて「La Défonce」。更にDéfoncer(突き破る)という単語とも掛け合わせています。この建物が文化に関わる公共の建物、というのも面白いところ。
ヤコブ・アガム「Fontaine monumentale」(1977) |
こちらはイスラエルの芸術家、ヤコブ・アガム氏(1928-)の水を使った作品です。カラフルな色に水が反射し、滝のようなダイナミックな水の流れも作品のうち。とてもスケールの大きな作品です。
パナヨティス・ヴァシラキス「Signaux, acier, lumière, peinture」(1991) |
パネルで遮られた感じの現代の凱旋門「グランダルシュ」の先はどうなっているのでしょう?
開発はまだまだ続いていました。ぱぁ〜と開けた視界の先には、真っ直ぐな道が遥か彼方まで延び、建設中の高層ビルが並びます。進化し続けているこの街には若者がよく似合いますね。
コンサートホールや映画館、ショッピングセンターなども充実しており、パリからは地下鉄で来られます。また、日曜日も営業している店が多いので、週末には家族連れやグループで賑わっています。