【アート通信ー58:壁絵「騙し絵」】
COVID-19が世界中で蔓延し終息がみえず、国境の壁が高くなりました。以前は行きたければ行き、見たければ見に行っていた場所にも自由に行けないので、以前見てきたものを振り返り整理しています。
58回目のアート通信のは壁絵、特に「騙し絵」の紹介です。
フランス・リヨンの騙し絵「La Fresque des Lyonnais」(1994-1995) |
「La Fresque des Lyonnais」の別面 |
「La Fresque des Lyonnais」の1階部分 |
1階の入り口付近では、名シェフのポール・ボキューズ(1926-2018)が客を待っています。2階には映画を発明したリュミエール兄弟(1862-1954/1864-1948)の姿も見えます。手前のラフな服装の男性はリヨン出身のサッカー選手、ベリナール・ラコンブ氏(1952ー)ですが、それを見て指差している人と目が合っていますね。もはや、どちらが現実なのか!
リヨンにはこういった壁画が数多く存在し、全て「シテ・ドゥ・ラ・クレアシオン」と言う世界的アーティスト集団によるものです。行政を挙げて取り組んだという事もあり、どこも大変な観光名所となっています。
こちらはフランス南部に位置する地中海沿岸の都市、モンペリエの騙し絵です。ぱっと見分からないのですが、時空間が少し違うような気がしてよく見ると気が付きます。MAD'ARTというアーティスト集団が手掛けました。モンペリエ大学で学んだと言われる医師で占星術師のノストラダムス(1503-1566)や、モンペリエ出身の画家フレデリック・バジール(1841-1870)が描かれていますよ。
こちらも同じモンペリエですが、新市街地のちょっと近代的な建物で試みられた、同じMAD'ARTによる作品。奥行きのある建物のようですが、1つの建物なんですね。
騙し絵はアートなのか、という議論もあるかも知れませんが、それは実際に見た人に判断してもらいたいです。
何にしても、こういった大規模の騙し絵はその前に広いスペースがないと鑑賞出来ません。広場などが多いヨーロッパだからこそ有効と言えるでしょう。
湊茉莉「うつろい、たゆたひといとなみ」(2019)より |
東京でも騙し絵ではありませんが、期間限定で現代アートの大規模な壁絵が出現したことがあります。2019年に銀座エルメス フォーラムで開催された企画展、湊茉莉氏(1981-)による「うつろい、たゆたひといとなみ」の作品です。エルメスビルの外壁に描かれました。
ちょうど隣のソニービルが建て替えで取り壊された時だったので、手前に大きな空中スペースが生まれ実現しました。
こちらは銀座の銀座通り沿い、4丁目交差点近くのワシントンビルに描かれた藤田修一氏による作品です。このような、ちょっとした空間を利用した小規模な騙し絵はとても日本らしいと思います。
引いてみるとこんな感じ、違和感なく街に溶け込んでいます。ウィンドウを覗いている少女がとても愛らしい!