【アート通信ー46:日本庭園の様式】

46回目のアート通信は、日本庭園の様式についてです。

何気なく鑑賞している日本庭園は、実はいくつかの様式に分けられる事をご存知ですか?
例えば、庭園として何を表現しているか?で分けると、

「平等院庭園」 京都の桜フリー写真より

京都府「平等院庭園」のように、想像上の景色、極楽浄土を表現した浄土式庭園。こちらでは、池と阿弥陀堂がセットになっている事が多いのが特徴です。武士が台頭して治安が乱れ、荒廃した雰囲気が高まった平安時代から始まった様式です。

池の中に鶴島、亀島が見られる「西明寺」

また、同じ想像上の景色でも滋賀県西明寺」などに見られる、蓬莱(ほうらい)庭園というものもあります。ここでは不老不死の仙人が住む理想郷(蓬莱山)を表現しており、長寿の象徴、鶴・亀が登場してくるのが特徴です。


「水蓮寺成趣園」熊本国際観光コンベンション協会より

逆に実際の景色を再現した縮景(しゅっけい)式庭園という様式もあります。名称地、天橋立、松島、富士山などをモチーフとする事が多いのですが、熊本市「水前寺成趣(じょうじゅ)園」のように東海道五十三次の風景を模したものもあります。



次に、何を用いて表現しているか?で分けると、


「龍安寺」京都の桜フリー写真より

京都府「竜安寺」で有名な、石・砂のみで水をも表現した枯山水庭園があります。室町時代に始まり、禅寺に多く見受けられます。


東京都「小石川後楽園」

逆に水を用いて表現したのが池泉(ちせん)庭園です。池がメインで、元水戸徳川家の屋敷庭園「小石川後楽園」など、江戸時代の大名庭園はだいたいこのタイプです。更にこの池泉庭園に築山、枯山水などがプラスされると林泉庭園となります


一方、どのように鑑賞するか?という分け方もあります。
室内から鑑賞するのは鑑賞式庭園庭園を歩きながら鑑賞する回遊式庭園池に浮かべた船から鑑賞する周遊(しゅうゆう)式庭園、といった具合です。


もうお気付きのように、日本庭園では1つの様式にしか当てはまらない、という亊はありません。ほとんどの場合はミックス様式で、名称は「回遊式林泉庭園」の様になります


福井県「名勝養浩館庭園」

それでは回遊式林泉庭園」の例として、福井県福井市の「名勝 養浩館(ようこうかん)庭園」をご案内しましょう。こちらは回遊式であり、林泉庭園であると共に、鑑賞式庭園とも言え、更に当時(江戸時代)は周遊式庭園でもありました

ちなみに、名勝(めいしょう)というのは、日本における文化財の名前の1つで、国、もしくは地方公共団体から芸術上・観賞上価値が高いと認められた場所に指定されます。養浩館庭園は1982年に国の名勝に指定されました。また、こちらはアメリカの庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」の「日本庭園ランキング」で常に上位にランクインしている庭園でもあります。ちなみに不動の第1位が島根県「足立美術館」、第2位が京都府桂離宮」ですから、日本ではあまり知られていませんが「養浩館庭園」が海外でかなり高評価を得ている事が分かります。

「名勝 養浩館庭園」の詳しい内容につきましては、世界でも高評価!福井「養浩館庭園」は駅近の町穴場!をどうぞご覧ください。









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