【アート通信ー43:カサ・バトリョ】
「カサ・バトリョ」正面 |
カサ=家、バトリョ=人の名前、なので「カサ・バトリョ」=「バトリョさんの家」という意味です。あの有名なアントニ・ガウディ氏(1852-1926)による建物で、旧市街の北側、グラシア通りにあります。
「カサ・バトリョ」の隣はジュセップ・プッチ氏による「カサ・アマトリェール」正面 |
ちなみに、カサ・バトリョの隣の建物はガウディと同じカタルーニャ地方出身のジュセップ・プッチ氏(1867-1957)による「カサ・アマトリェール」で、ガウディは「カサ・バトリョ」を手掛ける際、既に建っていたこの隣りの建物のデザインをかなり意識していたそうです。
波打つ曲線をもたせた「カサ・バトリョ」の正面 |
繊維業で成功したジョゼップ・バトリョ氏は1903年にグラシア通りの1877年に建設された建物を買い取り、翌年ガウディに自宅兼賃貸住宅として建て直すように依頼しました。
当初のバトリョさんの依頼は建て直しでしたが、最終的にガウディは建て直しはせず、手を加えて変化をもたらすようにしました。まず一番目立つ外壁正面に波打つ曲線をもたせ、陶器のかけらや割れガラスの破片にオリジナルの円形タイルを組み合わせて装飾しました。今で言うリノベーション住宅ですね。
当時、事業で成功した者は競ってこの通りに目立つ自邸を建てていたので、バトリョさんもコンテストで優勝したばかりのガウディに期待を込めて依頼したのでしょう。
「カサ・バトリョ」の屋根裏部屋を作るアーチ |
外壁だけでなく内部改装の他、最上階にカタルーニャの伝統的な邸宅に見られた屋根裏部屋を設け、屋根のデザインに変化ももたらしました。
屋根裏部屋で用いられているカテナリーアーチはガウディがよく使用した手法で、一本の鎖の両端を壁に留め、自然に垂らした形を逆さまにしたアーチの形でほっそりエレガントなラインも可能です。
建物内も波打つ曲線が美しく、ここに一貫して流れるテーマは「海」です。作り付けの家具にも様々な工夫がなされ、ドアノブなど細かなところまでデザインが行き渡っていますが、これらすべてガウディ1人でやるのは無理な話で、様々な分野の専門家が協力しています。例えば、彫刻家カルラス・マニ氏、リュレンス・マタマラ氏、鍛造と鋳造リュイス・バディア氏、建設業者ジュゼップ・バヨ・イ・フォン氏、陶芸家パウ・プジョル・イ・ビラ氏などです。
「カサ・バトリョ」内部・吹き抜け空間 |
建物の真ん中にあるガラス天井の吹き抜け空間からは豊かな採光が確保され、内部の部屋にも明かりが行き渡ります。ここでは機能面だけではなく、美しいブルーのタイルが上の方に行くに従って色が濃くなっていたり、窓の大きさも上に行く程小さくなるなど、目の錯覚を利用した工夫も施されています。
「カサ・バトリョ」の彫刻のような煙突など可愛らしい屋上も必見! |
「カサ・バトリョ」の裏側はまた少し違う雰囲気 |
初めて「カサ・バトリョ」が公開されたのはガウディ生誕150年にあたる2002年ですが、その後大規模な修復作業がなされ2019年に一般公開されました。
ところでバトリョの死後、この建物は別の人に買い取られました。それは誰でしょう?なんとあのチュッパチャップスの生みの親で、現オーナーです。
「カサ・バトリョ」を通りの向かいから見る
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スペインの建築を見ていると、‘モデルニスモ’ と言う言葉をよく聞くと思います。
19世紀末から20世期にかけて流行った様式としてアールヌーヴォーが有名ですが、類似した様式は地域により呼び名や方向性が若干異なります。同時代にここカタルーニャ地方で生まれたのが ‘モデルニスモ’ で、装飾・曲線が多く、カルターニャ地方伝統的な様式にイスラーム建築・ムデハル様式などがプラスされているのが特徴です。
20世期初頭、このグラシア通りを中心に都市開発されたこともあり、富裕層は競ってここに自邸を構えるようになりました。そのお陰で、この通りには19世紀末から20世期にかけて流行った様式の建物、モデルニスモ建築が軒を連ねています。
19世紀末から20世期にかけて流行った様式としてアールヌーヴォーが有名ですが、類似した様式は地域により呼び名や方向性が若干異なります。同時代にここカタルーニャ地方で生まれたのが ‘モデルニスモ’ で、装飾・曲線が多く、カルターニャ地方伝統的な様式にイスラーム建築・ムデハル様式などがプラスされているのが特徴です。
20世期初頭、このグラシア通りを中心に都市開発されたこともあり、富裕層は競ってここに自邸を構えるようになりました。そのお陰で、この通りには19世紀末から20世期にかけて流行った様式の建物、モデルニスモ建築が軒を連ねています。
「カサ・リュオ・モネラ」 |
カサ・バトリョの3軒隣りにはリュイス・ドメネク・イ・モンタネール氏(1850-1923)による「カサ・リュオ・モネラ」があります。モンタネールもカタルーニャ地方出身で、ガウディの先生でもあり、有名な「カルターニャ音楽堂」「サン・パウ病院」も彼によるものです。
「カサ・ミラ」 |
そしてこの通り沿いにはガウディによる「カサ・ミラ」(ベレ・ミラ夫妻の家)もあります。ペレ・ミラ氏は、完成したカサ・バトリョにすっかり見せられ、自邸を依頼しました。こちらも自宅部分以外は賃貸住居として設計されており、現在も公開されているところ以外は現役の賃貸住宅です。
カサ・バトリョ