【アート通信ー33:「ストックホルム市庁舎」】

先日、テレビでノーベル賞受賞祝賀晩餐会の模様を見て、スウェーデンのストックホルム市庁舎を訪れた時の事を思い出しました。と言う事で、33回目のアート通信はここ、「ストックホルム市庁舎」からです。

ノーベル賞の授賞式は、コンサートホールで行われますが、受賞祝賀晩餐会はこちらストックホルム市庁舎のホールで開催されます。

市庁舎外観

 ストックホルム市庁舎はスウェーデンの建築家、ラグナル・エストベリ(1866-1945)により1911年〜1923年に建設されました。駅から徒歩10分という立地です。塔を伴った姿は気高く、荘厳な雰囲気です。


市庁舎を中庭から見る

中庭から見た建物はこんな感じ。煉瓦の壁面に植物が這い、先ほどより生き生きとした感じです。


中庭より反対方向を見る

中庭の向こうに見える回廊をくぐると、いきなり大きく視界が開けます!


回廊を抜けたところにある広場

それがこちら!
この景色で、ストックホルムがいくつもの島から成り立っている、という事に改めて気が付きます。この市庁舎が建つのも実は「クングスホルメン島」という島の上で、海に見えるこの水辺は「メーラン湖」です。

*ストックホルム市庁舎を建てる際、同じように運河に面して建つ、ヴェネツィアの「ドゥカーレ宮殿」を参考にしたと言われています。


「ブルーホール」


さて、ノーベル賞受賞祝賀晩餐会が開かれるのはこちらの「ブルーホール」です。
先ほどの中庭隣の建物の1階です。テレビで目にする映像より地味に感じませんか?
そして想像していたより狭いスペースです。
ここにずら〜とテーブルを並べて白いクロスをかけて、花や燭台などであの華やかさを演出していくんですね。

ところでこのホール、どう見ても青ではありません。
実は、本当はここの天井は抜く予定でした。そしてまるで中庭のようなオープンなスペースにしたかったそうです。でも冬の寒さや雪などの条件を考えて諦め、その代わり壁などを青く塗り、屋外のような雰囲気にしようとしたそうです。この時点で「ブルーホール」と呼び始めました。しかし、赤いレンガの風合いがあまりにも美しく、光りとの相性も抜群だったので塗らずにそのままになったそうです。名前だけ残っちゃったんですね。

レンガには細かな刻み模様もあり、音響をよくする為でもあったそうですが、近くで見るととても凝っている事が分かります。


「ゴールデンホール」

そして晩餐会の後、舞踏会が開かれるのはこちらの「ゴールデンホール」です。壁面は金箔で覆われたモザイク画です。そしてそのモザイクの数はなんと1800万枚!9世紀からこの建物が出来るまでのスウェーデンの歴史が描かれており、スウェーデンの芸術家エイナール・フォルセッツ(1892-1988)の作品です。


「議事堂」天井部分

ところで、こちらの市庁舎は現役の役所です。ですから当然仕事場や議事堂もあります。

議事堂は2階のこちら、大きな長方形の一間で、船をひっくり返したような形の天井が印象的です。こちらはバイキングの伝統的な住居「ロングハウス」をモデルにしているそうです。
議事堂の天井がこのデザインとは驚きですが、自分たちが築いてきた歴史に対する誇りと、民族への拘りを感じます。

議事堂には傍聴席もあり、すべての人に解放されています。


「王子のギャラリー」

その他も美しい箇所はたくさんあります。
例えばこちらは「王子のギャラリー」です。
窓枠に刻まれているのは北欧神話や古典神話の男女をモチーフにしたレリーフで、窓からは美しいメーラン湖の景色が見えます。


「王子のギャラリー」壁面絵画

そして窓の反対側の壁には、先程の景色を基にして絵が描かれており、窓側を向いても窓側を背にしても同じ景色を楽しめるようになっています。
「王子のギャラリー」という名前の由来は、王子がこの絵画を描いたから!


「市庁舎」回廊部分

市庁舎はガイドツアーでのみで見学が可能です。

「ブルーホール」や「ゴールデンホール」は、ノーベル賞祝賀行事時に限らずレンタルされ、利用されています。また市民はこの市庁舎で結婚式を挙げる事も出来、美しい建物を役所としてだけでなく、一般に解放し、活用しているのは素晴らしいですね!

お土産にぴったりのノーベル賞メダルチョコなどを販売しているショップやカフェもあるので覗いてみると面白いですよ。


ストックホルム市庁舎








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