【アート通信ー30:愛知県佐久島で「アートピクニック」】

第30回目のアート通信は、自然とアートが融合する島として「アートピクニック」を推奨している愛知県西尾市の離島、佐久島のご案内です。

佐久島

佐久島は三河湾内に位置する1.81㎢の小さな島で、島全体が国定公園に含まれています。島へは西尾駅から出ているバスで港のある「さかな広場」まで移動し、そこで船に乗ります。乗船時間はたったの20分!

この島では、高齢化と過疎の問題に対処する一つの方法として、2001年より「三河・佐久島アートプラン21」をスタートさせています。これは、自然や伝統とアートの出会いによって島の活性化を目指すもので、現在常設アートは島内22箇所。

「黒壁集落」の道

島の西側には、建物を潮風から守るため為にコールタールで塗られた家々が立ち並び、島民やボランティアによって保存・維持されています。

島の西側から海を臨む

そしてここを抜けると海岸が見えてきます。目に飛び込んでくるのは黒い建物、ポツンと佇んでいます。集落からはみ出してしまった家かと思いきや、違うんですね。

南川祐輝氏の「おひるねハウス」には梯子を使って上る

南川祐輝氏の作品「おひるねハウス」です。個室のように区切られたスペースは全部で9つあり、梯子を使って自由に出入り出来ます。

内部より海を臨む

個室に入ると気持ちよく風が吹き抜け、空間のみならず景色も独り占め!おひりねハウスとはうまくネーミングしたものです。

中でゆったり寝られる

こんな感じで自然を堪能しながら島を周り、アートを見つけ、中に入ったり登ったりと長閑な時間です。そして、島の北側にはこんな作品が!

森の中に現れるTAB「北のリボン」

TABによる「北のリボン」。森と海を繋ぐ位置に建つ滑り台のような作品で見晴台も兼ねています。

上まで登ると海が眼下飛び込んでくる

途中でおやつを食べたり、休憩しながら進んでいくと今度はこんな建物に出会いました。

よろずや「つるや」

なんていうことない古い建物ですが、黄色にペイントされているのでそこだけぱっと目立ちます。ちょうどよい広さで、島のポケットパーク的な役割も果たしているようです。

ユニークと言えば、こちらのカフェがとてもユニーク!

カフェ「もんぺまるけ」の庭

古民家を自力で改装したカフェ「もんぺまるけ」です。壁にはイラストレーターが絵を描き、メキシコのクッションやぬいぐるみなど、店内は手作りのもので溢れています。オーガニックにこだわったメニューはみな美味しく、楽しい癒しの空間です。

カフェ「もんぺまるけ」店内

店内ではアーティストの個展も随時開催されています。

信号もないのんびりした島で、夏なのに美しいビーチはほとんどプライベートビーチ状態。

島の西側「白浜」付近

「大浦海水浴場」そばの木村崇人氏による「カモメの駐車場」

と思ったらここにもアート作品がありました。木村崇人氏の「カモメの駐車場」です。風上に向かってお行儀よく並ぶ姿がかわいい。

印象に残った作品はまだまだありますが、全部紹介してしまうと訪れる楽しみが半減してしまうのでこのぐらいにしておきましょう。実際に廻ってみて思うのは、<こういう観光を兼ねた所では参加型のアートがいい>という事。そして、<絶景を余す所なく利用したアートは強い>という事です。

町おこしや観光にアートを利用する例は他でも見かけますが、上手くやらないと余分なものとして逆にお荷物になってしまう可能性もあり、そのバランスは難しいところです。そんな中、この島の強みは何と言っても半日もあれば徒歩で周りきれる島のサイズでしょう。そして朝、名古屋を出れば夕方には戻れる、というアクセスの良さ!

食堂「ゆきや」「大あさり丼」、間違えて「かつ丼」を注文してしまったかと思った(!)

島の魅力はもちろんアートだけではありません。美しい自然と海の幸に外れはなく、旅館に一泊すれば、美味しい物を存分に味わい、夕日も朝日も堪能できる事でしょう。

佐久島


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