【アート通信ー29:オーストリアの芸術家・フンデルトヴァッサー】

29回目のアート通信は、オーストリアの芸術家フンデルトヴァッサー(1928-2000)の建築のご案内です。彼は建築家ではありませんが面白い建物を残しています。

以前は木材家具ト―ネットの工房だった建物に手を加えた「クンストハウス」外観。

子供の落書きのように自由でリズミカルな外観です!

「クンストハウス」入口付近
こちらはフンデルトヴァッサー作品を展示する美術館「クンストハウス(アートの家)」です。1991年に建てられました。ウィーンにあります。1階にはビストロとカフェが入っており、2・3階に絵画、版画、タペストリーといった彼の作品と建築の資料の展示。そして4階は企画展用で、写真関係の企画展スペースとなっています。

彼がこれほどカラフルで自由なラインを好むようになったのは、ユダヤ系である事に関係しているようです。第2次世界対戦中の閉ざされた生活とその後のアフリカ旅行の経験が、赤・青・黄・緑といった原色の多用に繋がり、更により強く自然に惹かれるようになったと言われています。

「フンデルトヴァッサーハウス」外観

そしてこちらは、クンストハウスの近くに建つウィーン市の市営住宅「フンデルトヴァッサーハウス」です。街に息吹を求めた当時のウィーン市長レオポルト・グラッツが彼に要請し、ジョセフ・クロニナやペーター・ペリカンといった建築家が協力して1986年に建てられました。彼の建築デビュー作です。市営住宅には見えませんね!

「フンデルトヴァッサーハウス」外観部分

都会でも自然と共生できる建物を目指して、屋根やベランダに植物が植えられています。また自然界に直線は存在しない、という概念から外観だけではなく内部の廊下や壁までがうねっています!

ラインや開口部が不規則だったり、思いをそのまま形にしたようなデザインは、彼が建築家ではないからこそ生まれたとも言えるでしょう。

写真は3月の雨の日でしたので、緑に覆われている部分が少なく若干暗い印象ですが、良い季節の写真ですと明るく生き生きしています。美しい建物か?と言われると若干疑問ですが、人々を惹きつける魅力ある建物である事は間違いありません。それは今も入居希望者が絶えない、という人気からも明らかです。

「21世紀カウントダウン時計」

また、自然を愛し環境問題にも積極的に関わっていたフンデルトヴァッサーは、ウィーンのごみ焼却場「シュピッテラウ焼却場」「ブルマウ温泉村」などもデザインしました。

ごみ焼却場と言えば、大阪のごみ焼却場「舞洲工場」も彼の作品で見学も出来ます。また東京の赤坂TBS放送センター裏の広場に設置されているのモニュメント「21世紀カウントダウン時計」も彼の作品です。興味のある方は訪れてみたらいかがでしょう。

クンストハウスウィーン
ブルマウ温泉村
舞洲工場



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