投稿

2018の投稿を表示しています

【アート通信ー33:「ストックホルム市庁舎」】

イメージ
先日、テレビでノーベル賞受賞祝賀晩餐会の模様を見て、スウェーデンのストックホルム市庁舎を訪れた時の事を思い出しました。と言う事で、33回目のアート通信はここ、「ストックホルム市庁舎」からです。 ノーベル賞の授賞式は、コンサートホールで行われますが、受賞祝賀晩餐会はこちらストックホルム市庁舎のホールで開催されます。 市庁舎外観  ストックホルム市庁舎はスウェーデンの建築家、ラグナル・エストベリ(1866-1945)により1911年〜1923年に建設されました。駅から徒歩10分という立地です。塔を伴った姿は気高く、荘厳な雰囲気です。 市庁舎を中庭から見る 中庭から見た建物はこんな感じ。煉瓦の壁面に植物が這い、先ほどより生き生きとした感じです。 中庭より反対方向を見る 中庭の向こうに見える回廊をくぐると、いきなり大きく視界が開けます! 回廊を抜けたところにある広場 それがこちら! この景色で、ストックホルムがいくつもの島から成り立っている、という事に改めて気が付きます。この市庁舎が建つのも実は「クングスホルメン島」という島の上で、海に見えるこの水辺は「メーラン湖」です。 *ストックホルム市庁舎を建てる際、同じように運河に面して建つ、ヴェネツィアの「ドゥカーレ宮殿」を参考にしたと言われています。 「ブルーホール」 さて、ノーベル賞受賞祝賀晩餐会が開かれるのはこちらの「ブルーホール」です。 先ほどの中庭隣の建物の1階です。テレビで目にする映像より地味に感じませんか? そして想像していたより狭いスペースです。 ここにずら〜とテーブルを並べて白いクロスをかけて、花や燭台などであの華やかさを演出していくんですね。 ところでこのホール、どう見ても青ではありません。 実は、本当はここの天井は抜く予定でした。そしてまるで中庭のようなオープンなスペースにしたかったそうです。でも冬の寒さや雪などの条件を考えて諦め、その代わり壁などを青く塗り、屋外のような雰囲気にしようとしたそうです。この時点で「ブルーホール」と呼び始めました。しかし、赤いレンガの風合いがあまりにも美しく、光りとの相性も抜群だったので塗らずにそのままになったそうです。名前だけ残っちゃったんですね。 レンガには細か

【アート通信ー32「金沢21世紀美術舘」】

イメージ
32回目のアート通信は、2004年にオープンした金沢市の市立美術舘 「金沢21世紀美術舘」 です。 こちらの美術館は、特徴ある建物のデザイン、恒久展示作品のユニークさ、企画展のレベルの高さなどで金沢のみならず全国から注目を集めている美術館です。今回は、もし企画展の内容に興味がなくても楽しめる無料のお薦めポイントを中心にご案内していきます。 ポイント その1:建物のデザイン 建物は、フランスの「ルーブル美術館」(ランス)、ローザンヌ連邦工科大学ラーニングセンターなどを設計した事でも知られる SANAA(妹島和世+西沢立衛) によるものです。正面性はなく入口は4箇所。敷地に塀は設けず、公園に入るようにな感覚で足を踏み入れられるようにデザインされています。 SANAAは、この建物で第9回ヴェネチア建築ビエンナーレ展示部門金獅子賞を受賞しました。 歩道と敷地の間には段差も無い 建物は1階と地下のみで、空間を遮る事なくちょこんと置かれたように存在している  サークル状の壁面は全てガラスで、内側に展示室が設けられています。そしてガラス壁面と展示室の間は、入場料を払わなくても自由に出入り出来る無料の交流ゾーンになっています。(→ポイントその3:無料の交流ゾーン) 館内からも広々した敷地を望むことが出来る 特長その2: 屋外彫刻 敷地内には参加型の楽しい屋外彫刻が点在しています。 3原色で構成された渦巻き状の形に吸い込まれていくように人が入って行くこちらは、オラファー・エリアソン(1967ー)の「カラー・アクティヴィティ・ハウス」です。立つ位置により色の交じり合いが変化し、見慣れた景色が不思議空間へと一転していきます。  オラファー・エリアソンの「カラー・アクティヴィティ・ハウス」 一方、周りの景色の写り込みから地球の丸さまで感じられるこちらの作品は、建物の設計者でもあるSANAAによる「まる」です。表側を写真に収める人が多いですが、是非内部にも潜り込んでみて。また違う世界が展開していますよ! SANAAの「まる」 SANAAによる「まる」内部 そして私が好きなのはこちら。フロリアン・クラール(1968ー)による「クランクフェルト・ナンバー3」。全部で12個ある

【アート通信ー31:愛知県犬山市「野外民族博物館リトルワールド」】

イメージ
31回目のアート通信は、愛知県犬山市にある「野外民族博物館リトルワールド」のご案内です。1983年に開館し、ドイツ・フランス・イタリアをはじめ、アフリカ、インド、韓国、ぺルーなど23か国から保存すべき建物がこちらに移築・復元されています。 北海道「アイヌの家」 展示には屋内と屋外があります。屋内(本館)では、テーマ別資料の展示やビデオ上映などが行われ、屋外では、32の建物が8ゾーンに分かれて建てられています。室内では生活の様子が再現され、パネルなどの説明もあります。 例えば、トルコ・イスタンブールではオスマン帝国時代に建設された「イスラム学院」が復元されており、内部では授業の様子が再現されています。 「イスラム学院」 要所要所にこのようなパネルがある またゾーンごとにその地域の食べ物を提供するフードコートや、民族衣装を試着できるコーナーもあり、その土地の料理を食べて気持ちを盛り上げ、建物内で衣装を付けて写真を撮る、なんていう楽しいお遊びも出来ちゃいます。 アフリカコーナーにある民族衣装の解説館。このような衣装を試着できる! アフリカのフードコートでは、ワニやラクダ、ダチョウ肉などからスウィーツまで楽しめる アフリカコーナーではトイレもカラフルで楽しい! そう聞くとテーマパークのようですが、ちゃんと研究され管理されているれっきとした博物館、普段なかなか行けない地域の建物を見たり、中に入ったりと楽しみながら学べるのはうれしいですね! こちらは、現地の人が来日して仕上げた壁絵が楽しい南アフリカの「ンデベレ族の家」。 アフリカゾーンの「ンデベレ族の家」 カラフルですねぇ~。そしてこの大胆な幾何学模様はすべて定規などは使わずフリーハンドで描かれています。特徴ある色や模様は、 ‘ここに住んでいる!’ という民族の主張でもあるそうです。 「ンデベレ族の家」内部 この模様からキース・へリング(1958-1990)の作品を思い出しました。もしかしたら沢山いた彼のアフリカ系友人に、ンデベレ族の人もいたのかも?? 敷地内は徒歩でも移動可能ですが、123万㎡の広さがありますので、一日乗り放題の周遊バスを利用すると楽です。「アフリカ~」「インド~」などのアナウンス

【アート通信ー30:愛知県佐久島で「アートピクニック」】

イメージ
第30回目のアート通信は、自然とアートが融合する島として「アートピクニック」を推奨している愛知県西尾市の離島、 佐久島 のご案内です。 佐久島 佐久島は三河湾内に位置する1.81㎢の小さな島で、島全体が国定公園に含まれています。島へは西尾駅から出ているバスで港のある「さかな広場」まで移動し、そこで船に乗ります。乗船時間はたったの20分! この島では、高齢化と過疎の問題に対処する一つの方法として、2001年より「三河・佐久島アートプラン21」をスタートさせています。これは、自然や伝統とアートの出会いによって島の活性化を目指すもので、現在常設アートは島内22箇所。 「黒壁集落」 の道 島の西側には、建物を潮風から守るため為にコールタールで塗られた家々が立ち並び、島民やボランティアによって保存・維持されています。 島の西側から海を臨む そしてここを抜けると海岸が見えてきます。目に飛び込んでくるのは黒い建物、ポツンと佇んでいます。集落からはみ出してしまった家かと思いきや、違うんですね。 南川祐輝 氏の 「おひるねハウス」 には梯子を使って上る 南川祐輝氏の作品「おひるねハウス」です。個室のように区切られたスペースは全部で9つあり、梯子を使って自由に出入り出来ます。 内部より海を臨む 個室に入ると気持ちよく風が吹き抜け、空間のみならず景色も独り占め!おひりねハウスとはうまくネーミングしたものです。 中でゆったり寝られる こんな感じで自然を堪能しながら島を周り、アートを見つけ、中に入ったり登ったりと長閑な時間です。そして、島の北側にはこんな作品が! 森の中に現れる TAB の 「北のリボン」 TABによる「北のリボン」。森と海を繋ぐ位置に建つ滑り台のような作品で見晴台も兼ねています。 上まで登ると海が眼下飛び込んでくる 途中でおやつを食べたり、休憩しながら進んでいくと今度はこんな建物に出会いました。 よろずや 「つるや」 なんていうことない古い建物ですが、黄色にペイントされているのでそこだけぱっと目立ちます。ちょうどよい広さで、島のポケットパーク的な役割も果たしているようです。 ユニークと言えば、こちらのカフェがとてもユニー