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【アート通信ー69:「アートベース百島」】

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 69回目のアート通信は、広島県尾道市の「アートベース百島」からです。 柳幸典「ワンダリング・ミッキー」(1990) 「アートベース百島」は瀬戸内海の島、百島(ももしま)にあるアートギャラリーで、創作活動を通して島の創造的な再生を試みる場、として現代美術家、柳幸典氏 (1959-)がディレクターを務めています。廃校になった中学校舎を再活用して2012年にオープンしました。 百島までは尾道駅前港から船で25分〜45分 長閑な道を歩くこと10分 「アートベース百島」入り口 3階建の校舎の1 階には、柳幸典氏の代表作の1つ、「バンザイ・コーナー」や、原口典之氏  (1946-2020) の代表作「オイルプール・シリーズ」などの展示があります。 柳幸典「バンザイ・コーナー」(1991) 「バンザイ・コーナー」は、万歳をしているウルトラマン、ウルトラセブンの人形達と鏡によって日の丸を作り出している作品で、日本の全体主義、同調性をヒーローだったウルトラマン達に表現させる、というちょっと皮肉めいた作品です。 原口典之「オイルプール・シリーズ」(2021) 「オイルプール・シリーズ」は、 廃油を用いた水盤に周りの 景色が 写り込み、不思議空間を作り出している 作品で、天気や季節によっても変わるので、その一瞬一瞬が作品となります。 柳幸典「ユーラシア」(2001) 部分 2階は企画展示室で、3階には、柳氏の代表作である「ユーラシア」などの展示があります。こちらは、着色された砂で作られた国旗の中を蟻が移動し、国旗が微妙に崩れていく作品です。 国旗間も自由に行き来する小さな蟻によって世界が壊されていくようなユニークさや危うさが感じられ、柳氏の作品の中で私が一番好きな作品です。そしてコロナ禍で移動制限がかかっている現在は、また別の意味にも感じられます。 トイレもアート! アートトイレは使用可能 中学校の面影をそのまま残す外観 体育館には柳幸典氏の「ワンダリング・ミッキー」(1990)が展示してあるので、見逃さないように! カフェには、康夏奈 (1975-2020)「十一眼レフちんかかと予期せぬハプニング」(2012-2013) 展示作品数は14点程なので、1時間ちょっとあれば十分でしょう。 百島の古民家を改修したもう1つのアートスペース「Z1731-GOEMON HOUSE」 百島には、「

【アート通信ー68:「平山郁夫美術館」】

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 68回目のアート通信は、アート通信ー67で触れた生口島の「平山郁夫美術館」からです。 「平山郁夫美術館」の門 平山郁夫氏(1930-2009)はご存知の通り、戦後の日本を代表する日本画家ですね。私は、彼の作品に一貫して流れているのは〈祈りの心〉ではないかと思っています。 氏は15歳の時、学徒勤労動員先の広島で被爆し、その後遺症に苦しんでいました。その経験から、平和な世界を願い、仏教をテーマとした多くの作品を生み出しました。また、ヨーロッパ・中東訪問からは、東西の交易路であるシルクロードに注目し、それをモチーフにした連作を発表しました。シルクロードは仏教伝来の道でもありますね。 「仏教伝来」(1959)の原寸大陶版 氏の平和な世界を願う気持ちは、ユネスコ親善大使として世界の遺跡や文化財保護への尽力にも繋がっていきます。 また、東京芸術大学の教授、学長などを歴任し、後進の指導にも当たりました。 そんな偉大な美術家の幼少期の作品をも紹介しているのがこの美術館の特徴で、とても興味深いところです。実は、広島県・尾道市、生口島は平山氏の生まれ故郷なのです。 平山郁夫「なわとび」(1936) 例えば、こちらは氏が5歳の時の作品。‘ひら’と縄の音を書き加えているところは微笑ましいですが、縄が緩くたるみ、ゆったり動いている様子まで描ききれているところはさすがです!そしてカタカナで、‘ヒラヤマイクヲ’とサインも(!) 平山郁夫「やかん」(1941) こちらは、11歳の時の作品「やかん」。やかんだけ描いているのも渋いですし、このまま世に出せる程の出来栄えです。 幼年期の展示、より このように氏にはもともと絵心があった様ですが、それに磨きをかけたのは、お母様の教育方針でした。 息子は描く事が好きで上手、と知ると、彼女は絵日記帳を作り、長期休みには毎日遊びに行く前に必ず描く様に伝えます。彼女の「よし」が出ないと遊びにいけないので、いい加減には描けません。それが集中して描く習慣と、画力の基礎を作った、と氏は語っています。 幼年期の展示、より 館内の展示は、幼少期の作品だけではもちろんありません。仏教・シルクロードをテーマにした代表的作品の数々も展示されています。 展示室の様子 ハイビジョン室では、テーマ別に製作された分かりやすい作品解説が時間ごとに上映されているので、こちらもお忘れなく! 顔

【アート通信ー67:島ごと美術館!生口島」

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 瀬戸内海の小さな島、 広島県尾道市の「 生口島(いくちじま) 」に行ってきました。生口島は、 レモンの生産量日本一!の島です。また、 本島から四国まで6つの島々を 橋で 繋いでいく 「 しまなみ海道 」が通っている島でもあります。 眞板雅文「空へ」 実は生口島には、 1989年から開催されていた「 瀬戸田ビエンナーレ 」で設置されたアート が島のあちこちにあるんです。残念ながらビエンナーレは無くなってしまいましたが、その時の作品は「 島ごと美術館 」として残り、今では島とすっかり一体化しています。 生口島「島ごと美術館」のマップ 作品17点は海沿いに、そして一部は隣の「 高根島 」にあり、アップダウンの少ない小さい島なので レンタサイクル を利用すれば、1日で全て観て周る事が出来ますよ! 新宮晋「波の翼」 例えば島の西側の海沿いで出会える、 新宮晋 氏 (1937-) の作品 「 波の翼 」。海に浮かぶ様に設置され、 風によって微妙に動くのでまるで小さな船がどこかへ船出していくかのようです。 空気の流れを利用して動く氏の作品は、日本のみならず世界各国に設置されており、東京の意外なところでも出会えます。「 銀座エルメス 」。オープン時から建物外観に加えられている立体は、実は新宮氏の作品なんです。 新宮晋「宇宙に捧ぐ」2001  また、新宮氏の作品のすぐそばには 宮脇愛子 氏 (1929-2014) の 「 うつろひ 」 があります。 宮脇愛子「うつろひ」1993年 細いワイヤーのラインが景色に溶け込みすぎてちょっと見えにくいですが、夜間はライトアップされてもっとくっきりするようです。 宮脇 氏の 「うつろひ」 シリーズも彼女の代表的な作品なので、こちらも日本のみならず世界各国に設置。 群馬県立近代美術館と 宮脇 氏の 「うつろひ」 群馬県立近代美術館カフェ前の 宮脇 氏の 「うつろひ」 群馬県立近代美術館 では、彼女の夫である世界的建築家、 磯崎新氏 (1931-)の建物との相性も良く、カフェ前の水辺で優雅に揺れています。それに比べ生口島に設置された作品は、台の方が目立ちちょっと残念ですが、海沿いは風を強く受けるので頑丈にしたのでしょう。 また宮脇氏の作品の近くには、綺麗な夕日を堪能出来る サンセットビーチ があり、 山口牧生 氏 (1927-2001)、 植松奎二

【アート通信ー66:「Les couleurs en jeu ル・パルクの色 遊びと企て」】

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現在、 銀座メゾン エルメス ル フォーラム で 「Les couleurs en jeu ル・パルクの色 遊びと企て」 が開催されています。この展覧会 はアルゼンチンに生まれ、フランスを拠点に活動している ジュリオ・ル・パルク (1928-)の 日本初の個展 です。 2フロアーを使った大きな空間での展示 展示されているのは、初期の作品からつい最近の作品まで。展示場所は ウィンドウディスプレイ、エレベーター内、建物外壁にまでに及びます。 会場に入ってまず驚くのは、光により微妙に変化する色彩の美しさ。そして新しさ。例えば、 仲間と結成した視覚芸術探求グループ「GRAV」による 初期作品『パリの街中での1日(1966)』は、今観ても興味深く、これが60年代に行われたパフォーマンスだという事に驚きます。 角度を変えて見るとまた面白い作品の数々 彼自身が選んだ14色の色彩、グラデーション、幾何学的なデザイン、同じ形の反復、組み合わせ、そしてその展開は無限大で、目の錯覚も手伝い、鑑賞者は導かれるように作品に惹きつけられ、取り込まれていきます。 見る方向やタイミングによってデザインが変わる作品『反射ブレード(1966−2005)』 92才になる現在も彼の創作意欲は旺盛。会場ではビデオやVRを使った新たな試みも紹介されており、こちらも見逃せません。 建物外壁の作品『ロング・ウォーク(1974-2021)』 エレベーター内にも代表作「ロング・ウォーク」が断片的に現れる! 今回は、コロナ禍という事もあり、店舗内のエレベーターではなく、店舗裏のエレベーターで9階まで上がり、そこから展示がスタートします。8階へは階段を使うので、普段は目にする機会のない、この建物の階段室も見られますよ。 11月30日(火)まで。無料。 *建物外壁の作品展示は10月半ばまで、ショーウィンドウ内の展示は11月2日まで。 銀座メゾン エルメス ル フォーラム

【アート通信ー65:横尾忠則】

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第65回のアート通信は、1960年代から第一線で活躍し続けている世界的芸術家、 横尾忠則氏 (1936-)についてです。 東京都現代美術館のレクチャーでの横尾氏 グラフィックデザイナーからスタートした横尾氏は、1980年にニューヨークで開催されたピカソ展を観て即座に画業に専念する決意をします。これは彼の『画家宣言』として知られていますが、幼い頃からずっと絵を描き続けている氏は言います。 「いつ画家になったのか分からないし、まだ画家になれてないのかもしれない。」そして、「もう今は絵を描くのが苦痛で・・・、でも嫌いや描く絵がどんなものか見てやろう、と思って描いている。」と。 正直な人だなぁ〜と思います。 そんな彼の事を知るには彼の作品を観るのが一番!日本には氏の作品が常設されている美術館がなんと3つあります。 ・ 「豊島横尾館」 香川県豊島 古い民家を改修して、建築家永山裕子氏と共に作りあげられた空間に、横尾氏の世界観が展開。 ・ 「横尾忠則現代美術館」 兵庫県神戸市 氏からの寄贈・寄託によるコレクション。作品だけでなく膨大な資料も保管。 ・ 「西脇市岡之山美術館」 兵庫県西脇市(氏の生まれ故郷) 氏の陶板壁画がある。現在は地域のアーティストの紹介が主。 「 横尾忠則現代美術館」のポスター そしてこの夏秋、東京では横尾展が3箇所で開催されています! ・ 「GENKYO横尾忠則  原郷から幻境へ、そして現況は?」 東京都現代美術館 にて 10月17日(日)まで。 「GENKYO横尾忠則  原郷から幻境へ、そして現況は?」ポスター 60年以上にわたる氏のキャリアの全てを観せる600点以上の作品による、いわば集大成とも言える展覧会。氏自らが監修。コロナ禍で制作された新作も30点以上あり、現在進行形の彼をも知る事が出来る。 新作の展示室に足を踏み入れた瞬間、失礼ながら私は思いました。 「あら、横尾さん、あなた画家になりましたよ!ええ、本物の画家になられました。」と。初展示の新作は特に必見です! ・ 「 横尾忠則:The Artists」 六 本木の21_21 DESIGN SIGHT GALLERY3 にて、 10月17日(日)まで。 「 横尾忠則:The Artists」ポスター 30年の間 パリの カルティエ現代美術財団 の展覧会に関わってきた著名人の肖像画シリーズ 。 財