投稿

5月, 2016の投稿を表示しています

【建築巡礼ー4:ロレックス・ラーニングセンター】

イメージ
*【建築巡礼ー4】からは建築家の名前ではなく、場所、もしくは建物の名前での括りとなります。 ロレックス・ラーニングセンター(Rolex Learning Centre) SANAA * の設計でローザンヌに2010年に建設されました。 * SANAA:妹島和世と西沢立衛による建築家ユニット スイス連邦工科大学ローザンヌ校の図書館などを備えた交流・学習センターです。 ロレックスとのパートナーシップや多額の寄付金から建設された為、ロレックスの名前が付いています。 スイス連邦工科大学ローザンヌ校の敷地図、ラーニングセンターは赤い部分 センターには図書館の他、多目的ホール、カフェ、レストランなどあり、学科ごとに散らばっている学生達が一カ所に集まり、研究したり交流したり出来るようになっています。 学生や研究者のみならず、地域の人々にも開放されているそうです。 橋のような建物をくぐり、 床下を通り エントランスに向かいます。 ラーニングセンターの見取り図。濃いグレーの円形の部分は中庭・光庭としてくり抜かれている こ のセンターの建物の特徴はなんと言っても全体が巨大なワンルーム(166.5m×121.5m)になっているという事です。 オープンスペースのカフェ 壁という仕切りはありませんが、 床にアップダウンをつけたり中庭や光庭として14カ所を くり抜き、 それぞれの スペースを作り出しています。 多目的ホールも床の傾斜でスペースを確保。仕切りは無い   床の勾配と中庭で区切られた空間 床が平らでなく、中庭・光庭のガラス壁がすべて曲線だからでしょうか、 建物全体の形は四角なのに、不思議と丸みのみを感じます。 地球儀の様(?)、なだらかなカーブを描く床 平坦であるはずの床に起伏をつけると性格の異なるスペースを設けられるだけではなく、ちょっと大げさですがそこは屋外の様です。 傾斜を登る時はトレッキングで、降りるときは散歩、また傾斜地に腰を下ろすと丘で寛いでいる感じです。 そして屋内にいてもまるで屋外にいる様な感覚を得られるのは、室内で作業する閉塞感を軽減させたり、出会いの機会を増やす役割も果たしているのかもしれません。 勾配のきついとこ

【建築巡礼ー3:フランク・ゲーリーの建築】

イメージ
フランク・ゲーリー (Frank Gehry 1929-)、 日本では去年[21_21DESIGN SIGHT] で個展が開催された際はずいぶん反響を呼んでいました( フランク・ゲーリー )。 今回の旅では彼が手掛けた建築を3つ観てきました。 ① ヴィトラデザイン美術館 Vitra Desaign Museum(1989) Vitra Campus(ドイツにある家具メーカーVitra社の自社施設)内にあり、ヨーロッパでは彼の初めての作品です。 公園にある遊具の様な可愛らしい建物 美術館入口 開催中のデザイナー「Alexander Girard」展の様子 内部は開口部の取り方が面白く、光も柔らかく入って来ます。 おもちゃの箱の中を散歩している様な発見と楽しさがありました。 ② 音楽棟 Pavillon de mudique(2008)   南仏にあるChateau-la-coste( ワインと建築とアートの融合を試みている場所)内にあります。 離れて見ると建物と言うより、 立体作品の様な印象を受けますが、近づくと丘の斜面に座って鑑賞も出来る、屋外劇場としての機能も持ち合わせている事に気が付きます。   中に入ると明るく開放的で開口部が大きい割に音響も良く、予想以上に落ち着きます。 中央部分が舞台として機能する ライブイベントの為に作られたそうです。 古代ローマの円形劇場の現代版というところでしょうか。    ③ ルイヴィトン財団美術館 Fondation Louis Vuitton(2014) パリ16区ブローニュの森の中にあります。 オーナー個人のコレクションを展示する為と、ギャラリースペース:エスパス ルイ・ヴィトン(Espace Louis Vuitton)では展開しきれなくなった企画展を開催する為に作られました。   とても訪れてみたかった建物です。 模型では飛行船の様な、空を飛んでいる様な軽いイメージで、実際はどうなのかと気になっていました。 思っていたより太いしっかりした構造部 テラスからは周囲の公園や遠くの街並みが見える テラス内部は温室の様でもあり ヨーロッパの旧市街にある様な細

【建築巡礼ー2:ザハ・ハディッドの建築】

イメージ
ザハ・ハディッド(Zaha Hadid 1950-2016)、 日本では彼女のデザインが新国立競技場で採用される、されないですっかり有名になってしまいました。 今回の旅では彼女がデザインして建てた建物を2つ観て来ました。 実際に観る事が出来て良かったと思いながら帰国して間もなく彼女の訃報が入りました。 とても残念です。 ①  消防署Vitra Fire Station(1990-1993)   スイス、フランスとの国境側、ドイツのヴァイル・アム・ライン( Weil am Rhein) という町にあります。 建設された建物としてのザハさんのデビュー作で、Vitra Campus*の中にあります。 構内消防署として作られましたが、現在はイベントスペースとなっています。 おもしろい建物です。 平行しているところがありません。 壁は斜めです。 屋根も斜めです 内部の部屋は遠近法を強調する様に奥に行くにしたがってサイズが小さくなっています 斜めです ガイドさんの話だと、消防士の感覚を鍛える為にいたる所が斜めにデザインされているそうで、シャワー室の壁も斜めです。 シャワー中も片足で立ってバランスを取るなど、どんな場所でも平衡感覚を鍛えられる様に敢えてこの様にしたそうです。 やさしさというのでしょうか・・・。 各部屋を見ているうちに私は目が回りそうになり、気持ち悪くなりましたが発想は面白いと思いました。 *Vitra Campus (1980-) :家具メーカVitra社の自社施設。将来有望と思われる建築家にそれぞれの施設を少しずつ依頼し、施設として使用。そして携わったすべての建築家が今や世界的建築家となっている。 ②  環境センターTrinational Environmental Center(1996-1999) こちらの建物もヴァイル・アム・ラインにあります。 中には入らず外からのみの見学でした。 1999年に開催されたガーデンショー『グリーン99』の為にデザインされ、その後「環境センター」として利用されています。 120mにも及ぶ長い建物で、この道から生えたような細い雨どいみたいなのも、建物の一部です。 右側のスロープを歩いて行くと2階を後ろから覗き見られ

【アート通信ー4:旧日向別邸ブルーノ・タウト「熱海の家」】

イメージ
熱海と言えば温泉。 美術好きの人なら、「MOA美術館」というところでしょうか。 そんな熱海に美術好きの人にもあまり知られていない穴場スポットがあります。 それがこちらー旧日向別邸ブルーノ・タウト「熱海の家」ーです。  「旧日向邸」フライヤーより ブルーノ・タウト(Bruno Taut 1880-1938)は、20世紀初期のドイツを代表する建築家です。 1933年にナチスが台頭するドイツを離れ来日しました。 そして、来日中に出会った[桂離宮]や[伊勢神宮]などの美しさに感銘を受け、本も書いています。(『ニッポン』『日本の美再発見』など) そんな彼が在日中(1933-1936)手掛け、今も現存する建物は 唯一ここだけ です。 2006年には重要文化財に指定されています。 その作品(内装設計)はこちらの何の変哲もない日本家屋の地下にあります。 正確にはコンクリート基盤の庭の下にあります。 この庭はコンクリート基盤の上に作られている。 何の変哲もないと言いましたが、この家はアジア貿易で活躍した日向利兵衛が1933年に別邸として建てた家で、設計は渡辺仁([東京国立博物館][銀座和光]なども設計しています)によるものです。 地下へは玄関を入って左にあるこの隠し扉から降りられます。 (現在は閉鎖しており、別の位置から降ります。) 階段を降りると それぞれテーマを持った 3つの空間に分かれており、 かなり細部までこだわったデザインです。 残念ながら内部は撮影禁止でしたので写真でのご紹介は出来ません。 下記サイトの写真を参考にして下さい。 尚、見学は土日のみで予約が必要です。 重要文化財ブルーノ・タウト「熱海の家」 こちらのお隣には隈研吾さん設計の 海峯桜 というホテルがあります。  隈さんは現地視察にいらした際、偶然「旧日向邸」を知り、その海との関係性に感動して海峯桜設計のヒントを得たそうです^^。 *お時間があればNHKドラマ『花子とアン』の撮影にも使われた 起雲閣 にも足を延ばされたらいかがでしょうか。 見事なステンドグラスやタイルなどに出会えますよ。 「起雲閣」玉姫の間、サンルーム 「起雲閣」玉姫の間、サンルーム