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【アート通信ー84:「被膜虚実/めぐる呼吸」】

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84回目のアート通信は、現在東京都現代美術館で開催中の 「被膜虚実/めぐる呼吸」展からです。 *以下の写真は全て美術館の許可を得て撮影しています。 「被膜虚実/めぐる呼吸」のポスター この展覧会は、東京都現代美術館が所蔵している作品を年に3回、テーマに沿って紹介していくシリーズの1つです。 今回のテーマ「被膜虚実/めぐる呼吸」は、難しい言葉で分かりにくく感じられるかも知れませんが、要は距離感を含めた他者との関係性がテーマで、コロナ禍を経た今にぴったりの展覧会と言えるでしょう。 では、全72点の展示作品からこのテーマをより分かりやすく示している作品を選んでご紹介していきましょう。 名和晃平 『PixCell-Deer #17』(2009) まずは1階の名和晃平氏(1975-) のキラキラ輝く動物の作品。剥製を覆った透明の大小の球体は、〈被膜〉という言葉にとてもよくマッチしています。 名和晃平 『PixCell-Bambi #3」(2014) また、同じく名和氏によるアクリルボックスに閉じ込められた子鹿の剥製の作品は、角度によって見えなくなったり、触れる事が出来そうで触れる事が出来ない。そのもどかしさは、〈虚実〉という言葉にぴったりです。 サム・フランシス 『無題(SFP85-95)』(1985) アサヒビール株式会社所蔵 3階に上がった展示室で私達を迎えてくれるのは、サム・フランシス氏(1923-1994)の作品。その大きさは、展示室の規模と共に私達を緊張から解き放ってくれます。そして宙に舞ったであろう筆の軌跡を追いながら鮮やかな色彩と向かい合う時、私達はもう、楽に呼吸している事に気がつくでしょう。 モンティエン・ブンマー『呼吸の家』(1996-97) モンティエン・ブンマー氏(1953-2000)の『呼吸の家』は、タイトルそのまま、呼吸をする為の家です。彫刻作品のように見えるこの立体は、十個の家から成り、その一つ一つに一人ずつ立った状態で頭を入れて呼吸を楽しむ事が出来ます。 モンティエン・ブンマー『呼吸の家』(1996-97)内部 と言うのも、この一つ一つの家には異なる薬草が塗り込められ、独特の香りがするのです。コロナ禍で知らず知らず小さくなってしまった呼吸を、ここでは思いっきりしてみましょう。香と不思議な空間に癒され、別世界に連れて行かれた様な、異国を旅している様